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初めてテレビに出た頃住んでいた新高円寺で、“この7年間”の答えを見つける【アンゴラ東京めぐり】

さんたつ

にゃんこスターのアンゴラ村長が書きまくっているこの「アンゴラ東京めぐり」も、今回で12回を迎えました。なんと丸1年も書かせていただいたんですね。最初は「全4回の連載で」という話だったはずが炊飯器のコードに負けず劣らずの延長で12回。そうなんです。炊飯器の電源コードって引っ張ってみると意外に伸びるんです。コードが伸びるといえば掃除機が浮かびますが、炊飯器も意外にいけるので試してみてください。ああ、今、貴重な第12回というダンスフロアに無駄な文字たちを踊らせてしまいました。12回。なんか区切りも良いですし今回こそ本当に最後かもしれません。炊飯器のコードで言うと「もう引っ張れません」の赤い印が見えてるくらいかもしれません。ヤーー!!! 炊飯器!!! もう帰ってくれ!!!

「ここからスターになろう!」とにゃんこスターと名付けました

タクシー代を渡したので、炊飯器は帰ったと思います。

落ち着いたダンスフロアを眺めながら、今回はどんなテーマで書こうか考えます。こうして1年連載してみて思うのは、書くという目的を持つと文脈を持って街を散歩できるということです。そう思ったときホワッと浮かんできたのは、丸ノ内線の新高円寺駅です。ここは私がキングオブコントで決勝に行った2017年に住んでいた街です。

それはそれはもう今から7年も前のことになります。え、ヤバいですね。つい私はこういうとき義務教育に当てはめて「小1だった子が中1になれる期間じゃん! 私って仕事において、足し算から始まって反比例が理解できるほどのレベルまで上がったのか?」と考えてしまいます。それとこれでは話が違うと分かってはいるのですが。

私は大学3年生の頃から芸人をやっていました。2017年は、大学を卒業し、新入社員として会社でも働き始め、二足のわらじ本格始動の年でした。その頃は、働かないとお金はいただけないし、でもネタを作らないと舞台に立てないし、だから会社から帰ってきてはネタを考えて、時間がなくて、まじ毎日眠かったです。

コンビを結成したのもこの頃です。名前は何にしよう?と考えたときに、近所に暮らす野良猫たちの毎日を必死に生きる姿が自分と重なり「ここからスターになろう!」とにゃんこスターと名付けました。

それにしても、久しぶりに新高円寺駅に着地しました。「着地」と書いてみると、ジャンプで来たみたいで良いですね。その強い膝があるとするならば……と、膝にグッと力を入れピョーンと大きく飛び上がってみます。空まで飛び上がって新高円寺駅の周辺をぐるりと見渡します。

やー、とても良いです。駅前にはドトール、マクドナルド、そしてジョナサンといういつ行ってもナイスなご飯屋さんがあります。100均、本屋さん、薬局にクイーンズ伊勢丹というちょっと良いスーパーまであって、やはりここは最高に住みやすい街です。別に、空からの俯瞰でなくても分かったことでは?と思った方もいるかと思いますが、ぜひその意見には「確かに」と言わせてください。

新高円寺駅には「高円寺ルック商店街」という通りがあります。そこには高円寺の代名詞ともいえる古着屋が軒を連ねていて、あとはカフェもあって、雑貨屋など色んなお店もあって、13分くらい楽しみながら歩いているだけで気付けば高円寺駅に到着できてしまうのです。今日はその大ハッピーロードを歩きたいと思います。

メモリアルフード、待っていた未来

もう、少し歩いただけで懐かしいです。この商店街はなんか長いことやってそうなお肉屋さんや布団屋さんなど、温かみのあるお店も多いです。でもおしゃれなカフェも増えていて、本当、今一番ちょうど良いバランスです。

今回はせっかくなので、あの頃食べていたメモリアルフードが食べたいです。ハッと思い出したのは「ラーメン万福」です。このお店は当時、商店街の通りに「牛乳ラーメン」と看板を出していて、店の戦略通りまんまと気になって行ったことがあったのです。「飲み物」と「麺類」の意外な組み合わせって目を引きますよね。例えばですが「ジンジャーエールそば」の看板があったら入りませんか? 私はそこまでいっていたら入りません。

しかし、ここが記憶に残っていた理由はそれだけではないのです。このお店は天井から箱型のテレビが下がっていて、当時ここで『行列のできる相談所』を何気なく見ていたのです。そんな番組に、気付けば数カ月後自分が出ることになっていました。あんなにハッキリと人生が別のレールに乗る瞬間を感じることはそうない経験です。あの店には、まだレールが分岐する前の自分がいるような気がします。ぜひあの店へ行って、ほうれん草が醤油やみりんに浸ってお浸しになるように、私も懐かしさのお浸しになりたいです。

確かこのあたりに「牛乳ラーメン」の看板が、え、ありません。え? 見ると、なんと「ラーメン万福」は閉店していました……。そして、別のお店が入っていました……。

そうですよね。もう7年も来ていなかったので考えられる話です。しかし新しく入ったお店も『中華屋 櫂ちゃん』とあり、まあ、ジャンルは同じなのでそれっぽい気分は味わえるかもしれません。新しい出合いに飛び込んでみます。

「しゃっませー」

お店に入ると、超イケイケな店員さんが中華を作っていました。店内はラッパーがリリックをかましまくった曲が流れていて、私レベルでは「ラララ」しか聞き取れません。老夫婦が営んでいた中華屋の面影は遠くへ吹き飛ばされました。

いや、こんな未来が待っていたとは。

あまりに雰囲気の変わった店に謎の高揚を感じながら、半チャーハン+ラーメンのセットを頼みます。でも、一番印象的だったテレビは健在でした。あの頃のようにぼんやりと眺めながら待ちノスタルジーに傾いた私を、壁に貼られた「オリシャンはじめました」や「ドンペリ 50000円」の文字が引き戻します。

そうこうしているうちに料理がやってきました。

ここのラーメン……めちゃくちゃおいしかったです。雰囲気がイカついむちゃくちゃうまい店でした。こういう醤油ラーメンが食べたかったんだよ!の味でした。なんと言いますか遊園地や昔のサービスエリアで食べた醤油ラーメンあるじゃないですか。あれって「ぬるい」とか「味が薄い」みたいなちょっと足りないそのチープさも含めて良さなんですけど、ついにあれを材料からめちゃくちゃこだわっておいしく再構築しました!みたいな王道を極めたおいしさでした。

チャーハンもすごくおいしくて、もう口に運ぼうと持っていく動作で揺れた空気が当たっただけでごま油と胡椒の香りが襲ってきて、もう食べる前においしいことが分かりました。食べて「知ってた」と思ったのは初めてかもしれません。

しかし、和やかな雰囲気です。

お客さんは昼からラーメンと餃子でビールを嗜(たしな)み、店主とワイワイ話し、中華で飲める至高のバーみたいになっていました。懐かしむことよりも「変わること」について教えられたようでした。店が変わっても雰囲気が変わっても「味」や「接客」という大切な根本は変わっていなくて「過去を振り返るな!大事なものを抱えながら進め!」と、まるで今の私に次のステップを示してくれたようなお店でした。

「ストロベリーパイって、存在とか名前とか全てがかわいいじゃないですか」

「万福」はありませんでしたが、満腹にはなったので古着屋さんを見てみます。上手いこと言えました。いえいえ。そんなに褒めなくても。ちょっと褒めすぎです。皆さん落ち着いてください。早く行きましょう。

ひとえに古着屋さんと言ってもお店によって系統があり、よく見ると全く違う顔をしています。私が高円寺に行ったら必ずのぞくのが『KIKI』とその系列店『KIKI2』です。ここはめちゃくちゃかわいい洋服たちが集合しています。ストロベリーパイって、存在とか名前とか全てがかわいいじゃないですか。あれと同じかわいさが『KIKI』にもあります。

私もそんなに古着手慣れではないんですが、それでも例えば、大胆に大量に服が置かれたお店はやっぱり安いのでシンプルにお財布に優しいのと、時間がある日は自分の心にザクリと刺さる掘り出し物を探してみるのも楽しいです。

そういえば、欅坂46の「避雷針」という曲で「古着が好きなのは知らない誰かになって本当の自分隠して演じてみたいだけ」という歌詞が出てきます。初めて聞いたときは「古着にそんな観点があったとは!」と驚きましたが、今はなんだか分かる気がします。

私も最近うだつの上がらない朝があり、そうだ!と思い立ち黄色い伊達メガネをかけて出掛けました。すると、その日は自分が「黄色のメガネの人」になれた気がするんです。みなさんも人間関係で日々色んな自分を演じることを求められると思いますが、洋服ひとつで自分と距離を持つことができたら素敵なことかもしれないですよね。おー! なんか良いこと言えたかもです!

新高円寺の街から飛び乗ったこのレール

それっぽいことを言っておきながら、結局その日は古着を一着も買わず、休憩がてら懐かしのお店『Light side cafe』にやってきました。

牛乳ラーメンの件があったので「もう、結構変わってないと驚けないよ」というスタンスで行きましたが、ここは当時のままでした。大きな窓がすごく開放的で、そこを覗けばこの商店街を統治した人みたいな高い俯瞰視点で街を眺めることができます。

春を体に取り入れようと「苺のタルトと苺のレアチーズ」を頼みます。ここはタルトをハーフ&ハーフで頼むことができます。なので私のようなできるだけ多くの味を知りたいけど胃のキャパに自信のない人間に理解あるお店です。

窓から商店街を眺めていると、その景色が7年前とあまりに変わっておらず、なんだかタイムスリップした気分になってきます。今も昔も、ネタを書きにカフェにやってきて、疲れたらケーキを食べたり窓の外を見て息抜きします。商店街を行く人のせかせかとした足取りや、できるだけ雲のない空を見るのが好きです。自分のやりたいことや素敵だと思うことは変わっていません。

それでいいのか!

急に大きい声を出してすみません。文字だと分からないかもですが、結構なデシベルでした。だって今回はこの街に「にゃんこスターとして世に出る前後を過ごした」という文脈を持ってきたのです。なので、この7年で本当に何が変わったのか考えてみたいです。結構ちゃんと考えました。一回この文章から離れて、ちょっとケーキ食べて、味の違いを楽しんだり、2つ同時に食べたら何か起こるかなとかそんなのもやってみたり、いや、もちろんずっとうっすら考えながらです。それで思ったのは「目標がハッキリした7年だった」という答えが出ました。

初めてテレビに出た頃、ここに住んでいた頃……。

当時は何も分からず、とにかく動いて、ぶつかって、むっちゃ大変だったけど、そうして自分の形を知った気がします。そしてなんとなく分かってきて、少しばかり経験も備わって、そしたら次はその中から自分がやりがいを感じた仕事を思い出して……そしてついに、今度はさっき発掘したやりがいのある仕事をマグレでなく自分の力で掴めるように努力するのです。

私はそのノリで「文字書くの好きかも!」と気付き、週1でnoteを更新して「あたし文章いけますよ!」と世間にアピールして、こうして今「さんたつ」で連載し夢を叶えることができました。そんな7年でした。意外とちゃんとやってきたのかもしれません。今の私、反比例も解けるかもしれません。

なんだか、街のことを書くつもりが今回は自分のことを多く書いてしまいました。第12回……。今回で終わるのか……。続くのか……。

それは分かりませんが、1年間私の文章を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。「紹介してた街に行きました!」なんて報告してくださる方もいて……私は本当大真面目に、誰かの楽しいに関われたらそんな素敵な人生はないじゃないかと思うのです。なので、皆さんの「楽しい」の仲間にしてもらえていたら、それはかなりありがとうございます。散歩の楽しさや、街の魅力など、少しでも届くものがあったらまじむっちゃハッピーです。

私自身も、この新高円寺の街から飛び乗ったこのレールをどんどん素敵な方向に延ばしていけるよう頑張りますので、どうぞ今後ともアンゴラ村長をご贔屓(ひいき)によろしくお願いします。普通に新ネタもめっちゃ作っているからライブとか見に来てください! では。また文字を書いてご飯を食べれるよう頑張りますので、またどこかで……あ、ご飯と書いたらお腹が空いてきました……。炊飯器、帰さなきゃ良かったです……!

文=アンゴラ村長(にゃんこスター)

アンゴラ村長
お笑い芸人
1994年生まれ、埼玉県本庄市出身。お笑いコンビ「にゃんこスター」のボケ担当。キングオブコント2017準優勝。特技はリズムなわとびで、「30秒間でペアで交互になわとびを跳んだ回数」のギネス記録を2020年10月に取得した。

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