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お寺の入り口に立つ「仁王」って何者?3000組以上を見てきた専門家に基礎と魅力を聞く!

さんたつ

仁王専門家取材

テーマパークの入り口には入場ゲート、神社の入り口には鳥居など、あらゆる施設の入り口には境界を示したり象徴となったりするものがあります。では、お寺の入り口にはなにがあるでしょう?そこには山門があり、中には「仁王(におう)像」が立っていますね(もちろん例外もたくさんありますが)! 多くの人が目にするであろう仁王像ですが、一体どんな存在なのか知っていますか? 今回は、仁王像を溺愛する仁王写真家の渡仁(とにん)さんに、仁王像の基礎知識や魅力、そしておすすめ仁王像を紹介いただきます!

仁王マニアを虜にした仁王の魅力とは?

仁王写真家の渡仁(とにん)さん。

かねてからお寺巡りが好きだった渡仁さんが、仁王を好きになったのは2010年頃。一体、仁王像の何が渡仁さんを引きつけたのでしょうか。

「以前は、『どれも同じでしょ』と思っていました。それが、宮城県の仁王さんを巡る機会があった時に、『こんなにバリエーション豊富なんだ!』って感動したんですよ。地方っぽい素朴な仁王さんもいれば、笑っている仁王さんもいたんです」

本尊になるような如来や菩薩であれば「儀軌(ぎき)」という経典に造形の基本ルールが記されていますが、仁王像についてはディテールは明記されていません。

「だからこそ、手がけた仏師の個性が出やすいから、いろいろな姿が見られるんですよね。それに、ご本尊のようにお堂の奥に安置されているわけではないので、パブリックアート的な側面があるのも魅力です」

筆者ツバキングも仁王が大好き! 長野県「照光寺」にて。

そんな魅力にほだされ、渡仁さんの仁王歴はすでに15年を数えるまでになりました。これまでに出会ったのは、3000組以上もの仁王像。数多くの仁王像を巡っているうちに、新たな魅力にも気づいたといいます。

「数多く見ていると、パッと見ただけで作られた時代や場所がわかってくるようになるんですよ。先日、富山で仁王さんを見た時も『あれ? こないだ愛知で見た仁王さんに似てるな』とか。国規模で神経衰弱をやっているような楽しさもあります(笑)」

そもそも仁王ってどんな存在?

「東大寺」(奈良県)の仁王像(撮影=Mr.tsubaking)。

私たちも、大きなお寺などに出かけると仁王を目にすることもあります。入り口に立っているため、なんとなく「お寺を守っているのかなぁ」くらいの想像はできますが、仏教の中ではどんな存在なのでしょう。

「もともとは、お釈迦様を警護していたSPのような存在ですね。仏教の『執金剛神』という神様が、地上に降りてくるときに阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)の2人に分かれたとされています。それがいつしか、お寺全体を守る立ち位置になったんです」

この話を聞くと、人気漫画『ドラゴンボール』の、ピッコロ大魔王と神様はもともと1人で、善と悪に分かれたという設定を想起させます。しかし、仁王の場合は1体ずつに別の特性があるわけではないようです。

「阿形は『あ』で物事の始まりを、吽形は『ん』で物事の終わりを表すといわれていて、1対ですべての最初から最後までを守るという表現のようですね」

仏教で守護神といえば、四天王を思い浮かべます。四天王は実はそれぞれに、数十万の兵隊を率いた大将にあたりますが……。

「実は、四天王の上官に当たるんですよ。仏教の世界観の中に、忉利天(とうりてん)という仏国土があるんですが、仁王さんはそこのトップです」

仁王を前にしたらここを見よ!

「法隆寺」(奈良県)の仁王像(撮影=Mr.tsubaking)。

そんなトップの守護神に相応しい、恐ろしささえ覚えるほどの表情などは、仁王の見どころといえるでしょう。仁王の拝観にあたっては、鑑賞のベストポジションがあるのだと渡仁さん。

「一度、にらまれてほしいですね。多くの場合、門の中央を通る際に阿吽の両者と目があうポイントがあると思います。そこから見上げていただくと、仁王さんの力強さを感じていただけると思います」

筆者の経験では、山門に入る数メートル手前に、そのベストポジションがあるように感じます。さらに、思わず見落としそうなポイントについても、渡仁さんは次のように教えてくれました。

胸の下に現れる“仁王筋”(山梨県「大善寺」、撮影=Mr.tsubaking)。

「仁王像って、古くはギリシャ神話に登場するヘラクレスという怪力の神様にも通じているとされています。だから、やはり筋肉表現はよく見てほしいですね。中でも、胸の下の肋骨あたりにブドウのようにボツボツした筋肉があります。僕はこれを“仁王筋”って呼んでいます。デフォルメに感じるかもしれませんが、ボディービルダーの方もよく見ると、ちゃんとこの筋肉があるんですよね」

強さの表現のために誇張する部分と、リアリティを追求する部分のバランス。この点は、筆者からもおすすめしたいポイントです。

明日行きたい! おすすめ仁王【正統派編】

「圓融寺」(目黒区)の仁王像(撮影=渡仁)。

これほど仁王を愛し、仁王を見続けてきた渡仁さんに、東京都内でおすすめの仁王像を教えてもらいました。

ひとつめは「圓融寺(えんゆうじ)」(目黒区)の仁王像。

「圓融寺は『碑文谷黒仁王尊』として、江戸時代には目黒不動尊(『瀧泉寺』)と人気を二分するほどの信仰がありました。黒い身体をした仁王さんは素晴らしいですが、ライトアップされているんですが。ガラス張りになっていて昼間は反射で少し見えにくいです。ただ、夕暮れ時から夜にかけてはライトで浮かび上がってきれいですよ」

「妙法寺」(杉並区)の仁王像(撮影=渡仁)。

もうひとつが「妙法寺」(杉並区)の仁王像。

「あまり知られていませんが、江戸時代に活躍した京都の有名な仏師が作った仁王像です。日光東照宮表門の仁王像を彫った康音という仏師の猶子である康知が手がけました。運慶・快慶などが名を連ねる慶派の流れを組む仏師の作品です」

渡仁さんによれば、こちらの2カ所はいわば「正統派」の仁王像。今まで仁王をあまり意識してこなかった方、ぜひ出かけてみてください!

明日行きたい!おすすめ仁王【変わり種編】

「池上本門寺」の仁王像(撮影=渡仁)。

正統派があるなら、個性派も教えてもらいたい! ということで、「変わり種仁王像」についてもおすすめを聞いてみました。

ひとつめは「池上本門寺」(大田区)の仁王像。

「山門にも仁王さんがいるんですが、おすすめしたいのは本殿という建物の中に祀られる仁王像です。そのモデルがアントニオ猪木さんなんですよ。私は『アント仁王』って呼んでいます。ボディの感じなどは、現役バリバリの猪木さんの雰囲気です」

「東覚寺」(北区)の仁王像(撮影=渡仁)。

もうひとつが「東覚寺」(北区)の仁王像。

「自分の治したい部分に、赤い紙を貼るとよくなると言われているので、お正月明けくらいに行くと、仁王さんが見えないくらいになっています。『Super Kids Zone ポンキッキーズ』の『ムック』みたいな状態ですね(笑)」

他で見られない個性、実物を拝観したくなりますね! お寺の入り口に立つ「仁王」。お寺の前を歩くだけでもその姿を見ることができる、「最も気軽に会える仏像」と言ってもいいかもしれません。

これからは、仁王を見かけたら足を止めて、じっくりと拝観してみてください。あなたも、仁王の世界にハマるかもしれませんよ!

取材・文=Mr.tsubaking 写真=渡仁、Mr.tsubaking

Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。

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