【「2024年しずおか連詩の会」参加詩人から③ 野村喜和夫さん編「しずおか連詩 言葉の収穫祭」】 生活空間に現出した途方もない一本道
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。「2024年しずおか連詩の会」(11月3日に発表会)の参加詩人の作品を紹介する不定期連載第3回。今回は、2009年から「しずおか連詩の会」のさばき手(まとめ役)を務める詩人野村喜和夫さんが編集した「しずおか連詩 言葉の収穫祭」(左右社)から。
1999年に三島市出身の大岡信さん(1931~2017年)が音頭を取って始まり、毎秋の開催が定着している「しずおか連詩の会」は、静岡県が世界に誇る文芸である。
詩人5人が静岡に集い、毎年40編(2016年のみ32編)を3日間で作る。本書は、2005年から2023年までの「しずおか連詩の会」で完成した全ての連詩を、野村さんの解説と共に届ける。1999年の第1回から2003年の第5回までを収めた大岡信さん編「連詩 闇にひそむ光」(2004年、岩波書店)の続編的な位置づけと言える。
顔ぶれが変わっても、連詩のルールは変わらない。5人でリレーする。5行詩、3行詩を交互に作り、全40編。コロナ禍に見舞われた時期は例外的にリモート参加もあったが、基本的には時間と空間を共有しながら創作することも重要だ。
約20年分の連詩の集積は、生活空間に突如現出した途方もない一本道を思わせる。同じ空間を共有した詩人による一つ一つの「詩のリレー」とは別に、毎年の「連詩」それ自体がつながっているように感じられる。
本書の冒頭を飾る「泡雪の富士」(2005年)に参加した井上輝夫さん、岡井隆さん、大岡信さんはすでにこの世にない。先達の足跡を背後に眺めながらその先へ、先へと道を作っていったのが「しずおか連詩の会」の姿ではないか。本書はそれをはっきりと示す。(は)
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■2024年しずおか連詩の会
会場: グランシップ 11階会議ホール・風
住所:静岡市駿河区東静岡2-3-1
入場料:一般1500円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生)、未就学児入場不可
日時:11月3日(日・祝)午後2時開演
問い合わせ:054-289-9000(グランシップチケットセンター)