世界のトレンドを知るカメラマン・マツモトカズオが選ぶ、イベント別ベストチョッパー5台
チョッパーのことを掘り下げていくと必然的にアメリカのカスタムシーンを避けては通れない。そんなアメリカの「いま」をふたつのSHOWからPick!!
カメラマン/マツモトカズオさん|福岡在住のジャーナリスト。アメリカのカスタムシーンを多数取材し日本のメディアに伝えている一方、海外誌に日本のシーンを伝えることも生業としている。現在、アメリカ横断取材中!
いまだに熱い支持を集める定番のオールドスクール
アメリカのカスタムショーに足を運んで思うことは、やはりオールドスクールチョッパーは常に安定して人気があるということに尽きる。当時物のチョッパー(=サバイバー)の圧倒的な人気は落ち着いてきた感があるが、それでも70年代を筆頭とした往年のチョッパースタイルはいまだ多くのファンから支持を得ている。
それでも「ショー」という場所はやっぱり特別で、非凡なセンスをもったビルダーたちが持ち込んだマシンに度肝を抜かれることがまだまだある。ときどき「いや、それは乗れないだろう」とツッコんでしまうような飛び道具的クレイジーなマシンが飛び出すことも多々あるが、まだ目にしたことがない発想からなる造形、アイデアあふれる独自の技術、ペイントや装飾の類稀なセンスなど、純粋に驚かされることも少なくない。そんなとき〝本国〟たるアメリカのデカさを実感する。
また、ショーにやって来る来場者たちのマシンもまた興味深い。近年はスポーツスターのチョッパーが多く、旧車やビッグツインが高騰する中、安価なスポーツがベースに多く選ばれているようだ。
ぜひ実際に足を運び、本場のシーンをその目で体感してほしい!
Born-Free Motorcycle Show
初夏のカリフォルニアで催される、今年で16回目を数えた屋外型カスタムショー。20~30組の招待ビルダーのほか、広大な会場に並ぶマシンすべてにアワード受賞のチャンスがある。会場内はライブ、そしてギブアウェイ(ヴィンテージバイクが当たる大抽選会)で終始盛り上がるほか、「FXR」やバガーのショーも催されるなど、2日間カスタムに酔いしれる至極の時間が流れている。
【1位】RICH P MIFLIN|1969 Shovel “ICEE HOT”
見た目はシンプルなオールドスクールチョッパーながら、フレームのモールディングや外装のメタルワークなど細部の遊び心ある作り込みにセンスを感じさせる。ペイントも絶妙で、「アイシー・ホット」というマシンネームを体現するような氷を思わせるアイスブルーをベースに赤のフレイムスというコントラストが実に痛快。タンク上部にはセクシーなピンナップガールが描かれるなど、B級感がたまらない一台。
【2位】CHRIS GRAVES|1966 SHOVEL
スタンダードなチョッパーに見えて実は高い技術が満載な一台。ハンドメイドのステンレスフレーム、前後ともフロントシリンダーを用い、デロルトを2連装したモーター、各部の秀逸なリンケージなど枚挙にいとまがない秀作。
【3位】MICHAEL McELWEE|1948 Panhead “Bad Luxury”
17歳のマイケルは夜な夜な父親らと作業を続け、美しいパンCHOPPERを作り上げた。タンクやフェンダー、オイルタンクなど外装類のクリエイティブな造形、車体全体のバランスも申し分ない。将来期待のルーキーが爆誕。
【4位】Ryan Grossman|1946 Knucklehead “Two Timer”
山火事で燃えた友人のナックルを再生させた、奇跡のような物語をもつ一台で招待ビルダー1位を獲得し横浜行きを決めたライアンの新作。ヴィンテージに造詣の深い彼らしいパーツチョイスや各部の秀逸なメタルワークに注目。
【5位】SLIM CRANFORD|1970 “The Quarter Horse”
極細ロングフォーク、ストレッチされたフレームに載ったKモデル×アイアンというフランケンモーター、そしてファットなタイヤ……。強烈な個性で魅せるクレイジーなトライクチョッパー。鬼才・スリム氏の次作も楽しみ!
Mama Tried Show
BORN FREEとは対極に、真冬の米中西部での開催。招待されるカスタムマシンは100台近くを数え、歴史的建造物でもある美しい会場にバイクが整然と並ぶ光景は圧巻。バイクのジャンルもハーレーのみならず、欧州車や国産車、ヴィンテージから現行車、レーサーまで幅広くラインアップ。ハーレー生誕の地・ミルウォーキーで開催なので、訪れた際にはH-Dミュージアムにもぜひ立ち寄ってほしい。
【1位】Joe Marshall Customs|1956 Panhead “Goldie”
まさにショーカスタム!という目が覚めるようなロングフォークチョッパー。ビルダーのジョーがハンドメイドで手がけた美しいフレームワーク、ガーダーのロングフォーク、個性的な軌道のエキゾースト、エンジンやプライマリーまわりのエングレービング、タンクに描かれたストーリー性の高いグラフィックなど、見どころ満載の一台。会場でも注目の的だった。ほかのショーにも参戦し、アワードを獲得している。
【2位】RICK DOZER|1937 Flathead
ストリームラインで魅せる、秀逸なメタルワークで造られた外装類、流麗なデザインのフレームワーク。アート作品のような一台はケンタッキーのリックの新作。見事H-Dデザインチームのアワードを受賞!
【3位】BRANDY DOZER|1946 WL
愛妻ブランディのため、リックが製作したフラットヘッド。美しいペイントワークに加え、タンク上面には本物のリボンでレースを編み、テールランプもリボン型に造るなど、ガーリーな雰囲気満載。妻への愛があふれる一台!
【4位】KEVIN TEACH BAAS|1942 UL “Teacher’s Pet”
ミネソタの工業高校でカスタムバイクビルドのクラスをもつティーチ。今回のマシンもラギッドで無骨なメタルワークを得意とする彼らしい、ヤレ感のあるカスタム。80年代ドニー・スミスのガーダーフォークが存在感を放つ。
【5位】Brock Bridges|1977 Shovel “Sling Shot”
シングルダウンチューブが印象的な、フロントからリアまでクレイジーな造形のフレームに注目。しかもシート下にはターボを仕込むというエクストリームな一台。端正なチョッパーもいいが、ショーにはこんな異端児も不可欠。