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【能登から伝えたいこと】仮設工房から始まる輪島塗の新たな未来~『輪島キリモト』より~

さんたつ

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2024年元日の北陸地方を突如襲った能登半島地震。特に能登半島ではその被害が大きく、住宅の傾斜、液状化など、町もそこにある暮らしも、以前と同じではなくなった。同年9月21日、今度は観測史上最大の豪雨が襲った。能登にはもちろん、いまもそこに住む人たちがいる。能登を少しずつ動かし続ける人たちがいる。彼らのメッセージを受け取って、能登のいまを知ってほしい。『輪島キリモト』の桐本泰一さん、順子さん夫妻にお話をうかがった、『旅の手帖』2024年12月号からお送りします。

能登のいまを伝える人:桐本泰一、桐本順子

桐本泰一
石川県輪島市出身。約200年の歴史がある輪島塗製造販売の『輪島キリモト』の7代目。

桐本順子
大阪府堺市出身。日本人にとって大切な工芸や食のことを伝えていく伝道師として活動。

『輪島キリモト』
http://kirimoto.net/

 

仮設工房から始まる輪島塗の新たな未来

木と漆の創作工房『輪島キリモト』の代表・桐本泰一さんは、大学で工業デザインを学び、企業でオフィスデザインをしてきた。その経験から、輪島塗という伝統工芸に新たな息吹を吹き込むことを、ずっと考えている。

輪島塗の技法の基本は、木地に布を着せ、珪藻土(けいそうど)の地粉(じごな)を下地に塗ること。頑丈で長持ちして、修理にも対応できる。これを応用し、中塗りや上塗りにも地粉を使う技法を開発、漆器なのに金属のカトラリーを使えるようにした。

下地以外に地粉を使うものは輪島塗とは呼ばないが、紛れもなく輪島の伝統をまとった、進化バージョンといえる。

副代表を務める奥様の順子さんは、輪島にやってくる国内外の人に、暮らしを豊かにしてくれる漆器の魅力を伝えることに注力している。

「自宅の茶室を整えて、念願だった漆器を味わってもらえる“小さな日本”を作ったんです。でも、お披露目した4日後に地震で潰れてしまいました……」と残念がる。

『輪島キリモト』の漆器。輪島塗の伝統的な本堅地(ほんかたじ)で作られたものも多い。

自宅兼工房で作業をしている職人が多い輪島塗。地震で家も作業場も失ってしまった人は多く、仮設工房の建築も進み、『輪島キリモト』の隣に30棟が完成している。

「仮設工房によって漆器を作り続けたいと思う人たちが集まるので、これからの輪島塗をどうしていくか、そんな話し合いもしやすくなります。議論が深まることで輪島は魅力的な産地になっていくと思います。そうすればここで漆器作りをやりたいという人も増えるのではないでしょうか」(泰一さん)

「絶対に再生していきますので、いまの状況を見ていただき、観光の視点などから再生の道を一緒に考えてくださる、そうやって輪島を応援しに来ていただけたらいいなと思っています」(順子さん)

職人たちを受け入れる仮設工房。

この話をうかがったのは、2024年9月20日。その翌日に豪雨が襲い、桐本さんの工房も浸水被害を受けた。だが、桐本さんたちの前を向く気持ちは変わらない。

文・写真=若井 憲

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