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漬梅×しょうゆ×鶏肉 釜石産食材で新商品誕生 未利用資源活用へ4社がタッグ

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 釜石市の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)の梅酒製造で出る「漬梅(つけうめ)」を活用した新商品が誕生した。漬梅ペーストとしょうゆで味付けした鶏肉の冷凍加工品で、その名も「むね肉の漬梅焼き」。同市で操業する食品加工の麻生三陸釜石工場(本社・神奈川県平塚市)、鶏肉生産加工販売のオヤマ(本社・一関市)、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造(釜石市)が協力して開発した。生産者と事業者の連携、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みで、地域農畜産業の活性化、地元食材の発信につなげていく。

 「梅の日」の6日、同市大町の市民ホールTETTOで新商品の発表会が開かれ、市内飲食店、宿泊業者を含む関係者約50人が出席した。商品開発に関わった4社の代表と梅生産者がこれまでの経緯を説明。解凍して加熱した商品が振る舞われた。試食した人たちからは、肉のやわらかさに感激する声が。鼻から抜ける梅のさわやかな香りも好評だった。

新商品開発について話すプロジェクトメンバーら


新商品「むね肉の漬梅焼き」を試食する発表会の出席者ら


 平治旅館(中妻町)の平松正浩代表(65)は「むね肉のパサつき感がなく食べやすい。梅の香りもあり、しょうゆとの風味のバランスもいい」と話し、「焼き鳥みたいに串に刺したり、提供の仕方も工夫すれば(旅館の食事にも)使えそう。客に『これが食べたい』と思わせるようなストーリー的アピールがあればなお良い」と発信力に期待した。

 原材料には、オヤマが釜石市の養鶏農場などで生産するブランド鶏「奥州いわいどり」が使われる。漬梅の種を取りペースト状にしたのは、数年前から研究を重ね、加工技術を確立してきた麻生。味付けには漬梅ペーストとともに、釜石市民なじみの味、藤勇のかけしょうゆが使われた。オヤマ独自の技術で“しっとりやわらか”な口当たりを実現。一口サイズの適度な薄さのカットで、火が通りやすく家庭でも消費しやすいよう配慮した。

写真左:浜千鳥が販売する梅酒 同中:(上から)梅酒製造に使う地元産青梅、製造後の漬梅、麻生が加工した「漬梅ペースト」 同右:藤勇醸造の「かけしょうゆ」


解凍後、加熱した「むね肉の漬梅焼き」


 商品化に向け一番の課題だったのは梅のえぐみの解消。オヤマの開発チームが試行錯誤の末、ベストな味バランスにたどり着いた。同社の小山達也常務取締役は「鶏のイノシン酸、しょうゆのグルタミン酸、梅のクエン酸と3つの掛け合わせが、うまみの相乗効果を生み、まさに『最高傑作』ができた」と太鼓判。クエン酸には疲労回復、抗酸化作用による美肌効果があるとされ、高タンパク、低脂質の鶏むね肉とともに健康食材としてもアピール。「自由にアレンジしてもらい、飲食店や子ども食堂、学校給食など幅広く活用してもらえれば」と望んだ。

新商品を熱くPRするオヤマの小山達也常務取締役(左)


 浜千鳥は地元産青梅を使った梅酒製造のため、2010年に生産者からの一括集荷を開始。当初は1トン程度の集荷で、梅酒販売も夏限定だったが、14年に生産者らによる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)を立ち上げたことで栽培技術が向上。年に約2~3トン集まるようになり、通年販売も可能となった。生産拡大に伴い、会では梅酒製造後に廃棄されていた漬梅の活用策も模索してきた。これまでに県外業者への販売、地元ジェラート店での活用、ジャムやサイダーの商品化が実現しているが、継続的な廃棄量ゼロには至っていなかった。

釜石地方梅栽培研究会の青梅集荷会=昨年6月、栗林町


 会の事務局を務める浜千鳥の奥村康太郎醸造部長は、「なかなか利活用が進まなかった」漬梅の新商品開発について、「オヤマさんの技術の結集で、すごくおいしい商品に仕上がった。梅の香りが後からフワッとくる」と絶賛。オヤマの養鶏農場は栗林町にあり、同町には梅生産者も多いことから、「業種の違うものが同じ地区でコラボできたのは喜ばしい。釜石の農畜産物の新たな連携の形として、今後にも期待したい」と話した。

 釜石市は地形的に広い農地の確保が難しく、耕地面積は市の総面積の1.7%。23年産の農業産出額は1億5千万円で、県内最下位となっている。畜産業を含む課題解決に乗り出す市は、収益性の高い農畜産物の生産、地産地消の推進を掲げ、他産地との差別化、市内での購入機会増、事業者による利活用促進を図る。今回の新商品開発もそうした取り組みの一環。市の声掛けにオヤマなどが賛同し、昨年12月にプロジェクトが発足。約半年という短期間で商品販売にこぎ着けた。

新商品の試食に先立ち、釜石市の農畜産業の現状と課題解決への取り組みが説明された


 「むね肉の漬梅焼き」は内容量300グラムで、希望小売価格600円。店頭販売は道の駅釜石仙人峠、かまいし特産店(シープラザ釜石内)で実施。通信販売はオヤマのネットショップ「奥州いわいネット」で購入可能。今後、同市のふるさと納税の返礼品としても活用される予定。

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