「ROAD TO JAPAN」を合言葉に。ミャンマー代表が「ワーチャレ」に見出す未来への希望
8月下旬に開催された『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』。2年連続でこの大会に出場したミャンマー代表。予選ではJクラブやバーモントカップ優勝チームがいるグループに入りましたが2勝1分けで予選をトップ通過。
ラウンド32で敗れるものの、最終戦では勝利を挙げるなど好成績で大会を終えました。
今回、チームをこの大会に繋ぐお手伝いをしている一般社団法人グローバルブリッジプラスの松下裕二さんに、ミャンマーのサッカー事情とこの大会が彼らにとってどんな意味を持つのか伺いました。
(記事:サカイク編集部、写真提供:松下裕二さん)
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<<ワーチャレ記事:FCバルセロナと対戦したFC BASARA HYOGOが感じた、世界レベルの状況判断力
■ほとんどの子はストリートでサッカーをしている
――ミャンマーではサッカーは人気スポーツなのですか?
すごく人気です。国内で1番人気といっても過言ではないと思います。
――子どもたちはどこでサッカーをしているのですか?
クラブチームに入っている子もいますが、ほとんどはストリートです。クラブチーム自体日本と比べると非常に少ないですし、ミャンマーの公立の学校は国語、算数、理科、社会などの教科書の教育だけで、また地方では学校がまだまだ足りず午前午後の2部制で運営していたりするので、体育や音楽、図工など運動や芸術系の科目がなく、学校部活やスポ少も当然ありません。サッカースクールなどもないので、ストリートでサッカーをしています。
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■ストリートの少年たちに声をかけて国内で6回のセレクション
――この大会にはどういった経緯で出場されたのですか?(※海外チームは地域予選なしの招待)
あるときJリーグ国際部の関係者とアジア展開を話す機会があり、そのからこの大会の存在を教えてもらいました。その方も含め、もともと、大会主催のAmazing Sports Lab Japan の代表である浜田(満)さんも同級生(75年会メンバー)なんです。そういったご縁もあって、ミャンマー代表チームの派遣を提案させてもらったという経緯です。
――チームの選手はどのように選んだのですか? どこかのクラブチームを1チーム選出したのですか?
先ほどもお伝えしたように、ほとんどの子はストリートでしている子です。アカデミーの子たちもいましたが、多くはSNS等クチコミで声をかけたりして、ミャンマー国内で6回セレクションを行いました。
■最近また内戦がひどく、サッカーしてる場合じゃ...... それでもワーチャレに出場した理由
――来日に関して何かハードルはありましたか? 日本の環境はいかがですか?
ミャンマーといえば長く続くクーデター下で、国内の状況は不安定です。特に地方では最近また内戦がひどくなり、代表チームの身近な方にも、自宅にいると危険だからと都市部の友人宅に身を寄せている方もいます。
そんな中でサッカーなんてしてていいのか、という声もあるかとは思います。ですが、子どもたちには大好きなサッカーを諦めてほしくないんです。そして、この子どもたちの日本でのチャレンジを通じて、ミャンマーにいる親族、地域コミュニティのひとたちが少しでも子どもたちや未来に希望が持てるような、そんな機会になってくれたらと願っています。
おかげさまで「ミャンマーサッカー協会のサポートや、企業のスポンサードもあって日本に来ることができました。本当にありがたいです。
小さな頃から不安定で命の危険が間近にある環境で生きてきた子どもたちにとって、日本は経験したことがない「平和で安全な先進国」です。今選手たちはワーチャレに臨みながら「安心で安全な日本」を目いっぱい堪能して平和の大切さも感じていることと思います。
■今では「ROAD TO JAPAN」が合言葉、日本へ行くことが「憧れ」
――このワールドチャレンジはミャンマー代表にとってどんな存在ですか?
昨年初めてこの大会に出て、バルセロナと対戦出来たんです。ミャンマーの子どもたちにとってもバルサは憧れのクラブですから、「代表になって日本に行けば、バルサと対戦できるかも!」と思ってもらえたようで、子どもたちが本気で出場を目指す大会になりました。
それに、彼らの未来を変える「希望」でもあります。
彼らが社会に出る将来、国内がどうなっているかわかりませんが、彼ら自身が社会を明るく安全で生きやすい国にするために行動するとき、その理想というか、指標になると思うんです。「平和で安全」がどんなものかを知ることは、自分たちの生きる社会を変える希望になると思います。
以前はプロ選手も近隣のタイリーグなどに行くことが多かったのですが、ミャンマーの選手にとって日本は憧れの国であり、こういった機会を通じて日本を目指す選手ももっと増えてきてほしいと思います。
「ROAD TO JAPAN」が、ミャンマーの子どもたちの合言葉です。子どもたちに夢を見せるためにも、来年も参加できるようにミャンマーと日本の橋渡しを続けていこうと思います。
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