“少年”と“おっさん”をシンクロさせる演技。心から敬うキャストたちとの収録秘話とは──TVアニメ『SANDA』三田一重役・村瀬 歩さん×サンタクロース役・東地宏樹さん インタビュー
『BEASTARS』の板垣巴留先生による異色のサンタクロース・ヒーローアクション『SANDA』がTVアニメ化! 2025年10月3日よりMBS・TBS・BSTBS“アニメイズム”枠ほかにて放送中です。
物語の舞台は、超少子化時代を迎え、子どもが過剰に保護された近未来の日本。“秘められた呪い”が放たれ、サンタクロースの力に覚醒した三田一重は、その力を使って子供たちのために立ち上がります。
今回、三田一重役の村瀬 歩さん、サンタクロース役の東地宏樹さんにインタビュー! 作品についてはもちろん、先日放送されたエピソードの感想などお話しいただきました。
【写真】アニメ『SANDA』三田一重役・村瀬 歩×サンタクロース役・東地宏樹 インタビュー
少年とおっさんをシンクロさせる演技
──原作や作品をご覧になった感想をお聞かせください。
三田一重役・村瀬 歩さん(以下、村瀬):最初は「『BEASTARS』の板垣巴留先生が描かれている人気作品」という印象でした。それからテープオーディションの際にオーディション原稿を読ませていただいたのですが、印象に残るセリフばかりで驚いたことを覚えています。
オーディションに受かってから改めて原作を読んだのですが、絵のパワーはもちろんストーリーラインにおいても、対照的に描かれているふたつの要素が良いバランスで落とし込まれているなと。全体的にパンチがあって、スゴい作品だなと感じました。
サンタクロース役・東地宏樹さん(以下、東地):物語の導入からスゴいですよね。いきなり三田が刺されたり変身したり……とにかく情報量が多くて驚きました。子どものはずの三田がサンタクロースになって子どもを助けるという設定自体が面白いです。
また、作画も印象に深く残っています。僕はティム・バートン(映画監督)が好きなのですが、この作品の絵を見て同じ血が通っているような気がしました。
──ご自身のキャラクターの印象や魅力をお聞かせください。
村瀬:三田は普通の14歳でしたがサンタクロースに覚醒したことで、どんどん自分自身がわからなくなってしまいます。でも戦っている時や夢中になっている時の衝動性がとても輝いているんですよね。
素直で正義感がありながら少年らしさもたくさん持ち合わせていて、変に大人びていないところが魅力的だなと思いました。
東地:サンタクロースは“子供を助けたい”という想いを受け継いできた人物です。毎話ごとに気付きがある面白いキャラクターなので、視聴者のみなさんにも楽しんでいただけるのではないかと思います。
個人的にですが、最初はサンタクロースのサイズ感がよくわかりませんでした。ほかのキャラクターと比べてみて、2m50cmくらいあるのかなと思ったり。そんな屈強なおっさんが老眼だったりして、また面白いですよね(笑)。
──お互いのキャラクターについてはいかがでしょうか?
東地:三田は第1話からズレていました。あんな状況で「俺に気があるのか?」と思うのはおかしいですよ(笑)。でも三田はお調子者で友達から人気で、素直で明るく、とても良い子だと思います。
村瀬:序盤は三田が喋り始めてからサンタクロースに変身することが多いのですが、完成した映像を見たら「もし僕が東地さんの声帯を持っていたら、こんな感じなんだろうな」と思えたんです。東地さんが演じるサンタクロースは、屈強な見た目だけど三田のハートを持ったままで1人の人物として描かれたキャラクターになっていたのかなと思います。
実は収録前は、変身後の成長加減がアニメでどのように描かれるのか、ピンときていなかったんですよね。お調子者なところは変わらないけれど、子供を守る意思など、それぞれ別人っぽさもありますし……。そんな中で、東地さんの演技を聞いて「これだ!」と思いました。
──演じるにあたってスタッフから受け取ったオーダーなどについて教えてください。
村瀬:音響監督(三好慶一郎)さんとオーディションでお話しをした時に「少年らしさを大事にしてほしい」とオーダーをいただきました。それであれば僕の思った通り素直にやってみようと。
東地:この作品、実はサンタクロース役が中々決まらなかったらしいんですよ。そこからオーディションのお話をいただいて、音響監督からは「三田とシンクロすることや子供っぽさはあまり意識せず、中間の感覚で演じてください」と言われました。
──サンタクロースは見た目はおじさん、中身は中学生というキャラクターですが、若々しさはそこまで意識せずに?
東地:そうですね。でもシーンによっては「ここのシーンは三田寄りで」というオーダーが結構ありました。その際は「村瀬が演じる三田だったらこうするだろう」とイメージしています。
村瀬:後半では、一緒に喋りながら変身するシーンがありましたよね。
東地:結構な長台詞だったよね。村瀬が録ったセリフを僕がヘッドホンで聴きながらシンクロさせたこともありました。
──村瀬さんは東地さんの演技に合わせることはありましたか?
村瀬:基本的に変身した後は戦闘シーンなので、僕から合わせることはあまりなかったです。だけど三田が喧嘩するシーンなどはサンタクロースの戦い方を意識していたりします。心の隅にサンタクロースを置いておくような感覚ですね。
「本当に特別な現場でした」
──幅広い年代のキャストが集まっていますが、収録はみなさんご一緒に行われたのですか?
村瀬:ほとんど一緒に録りました。
東地:このあと、野沢雅子さんが鉄留十予役でご出演されますが、野沢さんが先に録られていたくらいでしょうか。
野沢さんは録り終わった後に僕らの収録が終わるのを待って、わざわざ挨拶に来てくださったんです。あのときはビックリしましたね。
村瀬:震えましたね……! 僕はお会いするのが初めてだったのですが、スタッフの紹介でご挨拶することができました。ただそのあと、野沢さんが収録を見学していくことになったんですよね。緊張とは違うのですが、やっぱりドキドキしました(笑)。
──若手キャストも出演していますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
東地:“村瀬力”が発揮されていました。村瀬は人の中に入っていく能力が高いんですよね。先輩の懐に入るのも上手い。
村瀬:いやいや(笑)。
東地:若手に対しても「ずっと気になっていたんです」とか言っちゃうんですよ。そこは座長として全体をまとめ上げていく能力の高さを感じましたね。もちろん僕も村瀬に取り込まれたひとりです(笑)。
村瀬:(笑)。僕は本当に興味のある人にしか「気になっていた」とは言わないので、そういう意味では、この現場はそれだけ興味のある人ばかりだったということですね。
個人的に、永瀬アンナちゃん(小野一会役)は別作品でご一緒した時からスゴいなと思っていて。その時、彼女はヒール役で、高笑いをしたりどんどん気がおかしくなっていったりなど、難しい演技が求められていたのですが、やはり持っているものがすごかった。「その要望は難しいんじゃないか……?」というディレクションも上手にこなしていて、これはモンスターが来たなと思いました。
そんな彼女と、今回の『SANDA』でも共演できたのもめちゃめちゃ嬉しかったです。もうファンですね(笑)。
あと、松岡美里ちゃん(風尾二胡役)もはじめましてだったのですが、掛け合いでは彼女の演技に引っ張られました。二胡はシーンをかき回すキャラクターなのですが、あの歳であんなに喋れてお芝居ができて、イニシアティブを握れるなんて天才です。さすが、日曜日の朝の主役だなって(笑)。
──(笑)
村瀬:世間が見つけるべくして見つけた後輩たちと一緒にお芝居ができたのは嬉しかったですね。先輩も東地さんをはじめとした錚々たる方々が揃っていて、なんて楽しい現場なんだと思っていました。毎週が楽しみでしたし、録り終わったときに『SANDA』ロスになったくらいです。本当に特別な現場でした。
東地:新祐樹(甘矢一詩役)も、安定感があって素晴らしかった。
村瀬:序盤の掴みどころのない妖しさがよかったですね。どんなキャラクターなのかわかった後もきちんと甘矢になっていて、彼もすごく上手でした。
東地:庄司宇芽香ちゃん(冬村四織役)も、冬村という難しいキャラクターを高い集中力で演じていて、リハーサル段階から見せつけられました。
村瀬:彼女以外ありえないと感じさせる鬼気迫ったお芝居でしたよね。
第1話 庄司さんの鬼気迫る演技に納得
──サンタクロースにちなんで、お二人のクリスマスの思い出話をお聞かせください。
東地:小学2年生くらいですかね、朝起きたらプレゼントが置いてあったんです。当時は「ミクロマン」のロードステーション基地をサンタにお願いしていたので、ワクワクしながら箱を開けたら「ロボットマン」が入っていて。
村瀬:(笑)
東地:親父が間違えたんですよね。そのときはもう薄々勘づいてはいましたが、サンタはいないんだなって気付きました(笑)。
村瀬:うちは妹のほうが成長が早くて「サンタって本当にいるの?」って親に言っていたんです。そうしたらその年のクリスマスに、なんとサンタさんから手紙が届いていたんですよ。しかも全文英語でめっちゃ達筆。
──本格的ですね。
村瀬:だけど「D」の書き方がなんか特徴的で、父親の書き方と同じだと気付いてしまって……。父は否定しましたが、その時に村瀬家のサンタは偽造だったことが判明してしまいました(笑)。
──(笑)。最後に、先日放送された第1話をご覧になった感想をお聞かせください。
村瀬:最終話収録のタイミングで、みんなで見たんですよね。
東地:そうそう、収録前にね。
村瀬:我々はスゴいものに関わっている、と強く実感しました。そのおかげで最終話に向けた気持ちが高まった思い出があります。
東地:加えて、繊細な作りになっているなと思いました。少年が突然、なぜかサンタクロースになるなど物語に関しては風変わりではありますが、それ自体がキャッチーに感じられて、本当に先が気になるスタートを切ったのではないかなと思います。
──先ほど、お二人もおっしゃっていましたが、第1話では冬村の迫力が強く印象に残っていて。
村瀬:普段の庄司ちゃんは、冬村と違っておしとやかなんですよ。だけど冬村の一言目は、冬村自身が追い詰められているような雰囲気がガチっとハマっていて、隣で「怖っ」と思いました(笑)。三田を刺すところなんて、酸欠になるくらいのエネルギーと勢いで。三田としては意味がわからない状況でしたが、演出目線ではスゴい役者さんだなと感じました。
東地:熱愛とも言える小野への感情が込み上げていました。僕としては「勝てるのか?」「やられちゃうんじゃないか?」と思わされるくらいで……。
見ている側としては、冬村はなぜこんなことをしたのかと思いつつも、どこか納得してしまうだろうなと。ただ、第1話のAパートが終わった後の庄司ちゃんは放心状態でしたね(笑)。
この作品の現場は一人ひとりを心から敬えました。絵も音楽も素晴らしく、穴がない作品に仕上がっています。その分、収録時間はかかりましたが、それも無理がないと思えるほど。完成した第1話を見た時は圧巻でした。
──本日はありがとうございました!
【取材・撮影 MoA】