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門司港レトロがグランドオープンから30年。まちづくりの歩みと未来

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グランドオープンから30年を迎える門司港レトロ。その歩みを振り返る

門司港駅

門司港レトロは、1995年のグランドオープンから2025年で30周年を迎えた。港町の歴史を活かしながら進められてきたまちづくりは、公共整備と民間活動が交差し、多くの来訪者を惹きつけてきた。今では年間200万人を超える観光客が訪れる、北九州市屈指の観光地として親しまれている。

まちづくりの出発点となったのは、1988(昭和63)年に、北九州市の「門司港レトロめぐり・海峡めぐり推進事業(以降、「門司港レトロ事業」という)が国の「ふるさとづくり特別対策事業」の一次指定を受けたことだった。それまでの門司港は、関門鉄道、国道トンネル、関門橋等の開通により、港湾都市としての機能がなくなったことで、陸海の交通の要衝としての立地のメリットが失われ、経済の発展から取り残されていた。しかし、その中にこそ歴史的価値の高い建物が多く残されていたことが、レトロ事業の可能性につながった。

行政の視点から見る① 門司港レトロ事業の背景と目的

旧大阪商船ビル

当時の北九州市長・末吉興一氏は、地域の歴史的資産の価値に着目し、「門司港の再生はレトロ」という開発理念のもと、強力なリーダーシップを発揮してこの構想を推進した。末吉氏は国との交渉を積極的に行い、ふるさとづくり特別対策事業への一次指定を実現するなど、事業基盤を築いた。

当初、港の一部埋め立て案も検討されたが、市民や有識者の声、そして関門海峡という立地特性を活かす観点から、「既存の町並みと水辺を活かす」方向へと転換された。これにより、歴史的建造物の保存や移築が国の支援によって実現し、数百億円規模の事業費が投じられ、老朽化した建物がまちの資産として蘇る契機となった。末吉氏は、保存だけでなく多様な利活用を積極的に推進し、民間の創意工夫を引き出すことで、官民一体となったまちづくりの機運を高めた。

行政の視点から見る② 景観・インフラ整備の取り組み

門司港レトロ地区の案内板

第1期整備(1990年代)では、旧大阪商船、旧門司三井倶楽部、旧門司税関など歴史的建造物の保存活用や、西海岸地区再開発事業が行われた。

近年では、QRコードを用いた観光案内板の多言語化など、来訪者目線でのアップデートも進められている。

門司港ミューラルアートプロジェクト

2024年から開始された「門司港ミューラルアートプロジェクト」では、門司港の新浜倉庫群の壁面を活用し、地元アーティストと市民が協働して大型の壁画を制作。地域に根差したアート活動として注目されている。

民間の視点から見る―移住者の関わりと、地域に広がる連携の輪―

三宜楼

門司港レトロでは、地域団体や民間事業者が中心となり、イベントや文化活動が展開されてきた。かつて高級料亭として利用されていた「三宜楼」も、市民による保存活動を経て、現在は関門ふぐ料理を楽しめる飲食店が入居しているほか、地元住民の交流の場として機能している。

近年では、門司港の町並みに惹かれてUターンや移住をし、飲食店や宿泊施設、ギャラリーを開く若い世代も増えている。たとえば、元旅館をリノベーションした複合施設「門司港ゲストハウスPORTO」は、地域住民と来訪者が交わる拠点となっている。

門司港に2019年に移住し、現在カフェ「四稀」を営む岩本成矢さんは「門司港の魅力は、豊かな海と山の自然景観、歴史を感じさせる門司港レトロエリア、そして温かみのある商店街が一体となった独特の空間にあります」と語る。

こうした移住者の活動が地域との自然な関係性を築き、行政とも柔軟に連携する雰囲気を育てつつある。行政が「支援者」ではなく「協働者」として関わることで、官民連携のハードルも下がり、柔軟な連携体制が築かれている。こうした関係性は、市民主体のまちづくりを支える重要な文化となりつつある。

門司港への移住者が経営するカフェ「四稀」

「30周年という節目を機に、行政と地域住民が連携を深めることで門司港レトロ地区全体の活性化につながるでしょう。より多くの人が訪れ、住み、働きたくなるような魅力的な地域になっていくことを期待しています」と岩本さんは将来への思いを述べる。

こうした若い世代の移住者が地域に根ざし、自身の事業を通じて関係性を育てていることは、門司港レトロの持続性を支える新たな潮流となっている。

観光と暮らしが共存する門司港レトロのこれから

観光と生活が調和する門司港レトロ地区

こうした行政と民間の相互作用によって30年間発展してきた門司港レトロだが、次の段階に向けた課題と可能性も見えてきている。

門司港レトロの本質は「観光と暮らしの交差点」だ。観光地の活気と日常の静けさが共存する珍しい町である。課題は平日・夜間の観光客の滞在時間延長で、飲食店営業時間やイベント頻度の調整が必要だ。

今後はデジタルガイド導入、ナイトタイムエコノミー推進、多言語対応など観光ニーズの多様化に対応していくことが必要だと考えられる。他の観光地との差別化には、関門海峡を生かした下関市との連携や、門司港独自の文化体験が重要となる。

30周年を迎えた2025年、北九州市は「NEWレトロ!30thアニバーサリー事業」を展開。関門海峡の景観を活かしたイベントや新観光スポット創出を計画している。また「めぐる!門司港レトロ浪漫創造事業」で下関市と連携し、回遊性と滞在時間向上を目指す。観光と生活が調和する門司港レトロの新たな歴史が、いま始まろうとしている。

この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。

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