京都で開催、ルネサンスからの600年を旅するようにたどる展覧会『どこ見る?どう見る?西洋絵画!』構成と見どころを紹介
6月25日(水)~10月13日(月・祝)の期間、京都市京セラ美術館 本館北回廊1Fにて、全てが日本初公開の『どこ見る?どう見る?西洋絵画!ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 feat.国立西洋美術館』が開催される。
カリフォルニア州のサンディエゴ美術館が所蔵する美術作品を中心に、ルネサンスから19世紀印象派まで、約60点の作品で600年を旅するようにたどりながら、ひとりひとりの「どこみる」を探せる展覧会となる。同展の展示構成を紹介する。
Chapter 1|ルネサンス
西洋近代美術の礎は、14~16世紀にかけてイタリアとネーデルラント(現在のベルギー、オランダ)で起こった革新運動によって築かれ、ヨーロッパ各地へ伝播した。ジョットからボス(工房)まで、両地域のルネサンス絵画の展開を探る。
ここで注目するのは、ヴェネツィアにおける盛期ルネサンス絵画の創始者とされる画家・ジョルジョーネ。緻密なディテールの描写と柔らかな陰影表現を組み合わせることで、人物の風貌の特徴のみならず実在感までを表現することに成功した「男性の肖像」は、ルネサンス肖像画の傑作の1点に数えられる。33歳で早逝したジョルジョーネの現存作は30点ほどと極めて少ないため、日本国内で展示されることは大変稀だという。同展では、16世紀後半のヴェネツィア絵画を代表するティントレットの肖像画とともに展示、同地における肖像画制作の展開を検証する。
Chapter 2|バロック
サンディエゴ美術館の充実したバロック絵画コレクションを基に国立西洋美術館所蔵の優品を組み合わせながら、17世紀美術の展開をスペイン、イタリア及びフランス、フランドル及びオランダと、地域別に展示する。17世紀初頭、スペインではボデゴンと呼ばれる独自の静物画のジャンルが花開いた。その始祖とされる画家サンチェス・コターンは早くして僧籍に入ったため、静物画は6点しか現存しない。その中でも最も高く評価される「マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物」の展示は、同展のハイライトを成す。
今回は、コターンの次の世代を代表する静物画家バン・デル・アメン、そして同世紀スペイン絵画を代表する画家の一人であるスルバランの作品を並べて展示する。事物の荘厳な本質に迫るかのようなサンチェス・コターンと、より華やかな装飾性と豪華さを強調したバン・デル・アメン、さらにはスルバランによる「神聖なるボデゴン」とも称される「神の仔羊」の3作品により、スペイン静物画の真髄を紹介する。
Chapter 3|18 世紀
この時代の美術をリードしたイタリア絵画とフランス絵画の展開に焦点を当て、両館のコレクションから風景画、肖像画、風俗画それぞれのジャンルにおける地域ごとの特徴を見ていく。18世紀ヨーロッパでは、グランド・ツアーと呼ばれるイタリア旅行が流行。それに合わせてヴェドゥータと呼ばれる都市景観画が各地でもてはやされていた。イタリア人画家ベロットは水の都ヴェネツィアの名所を明るい陽光のもと迫真的に描き出した。
また18世紀末から19世紀初頭にかけて、フランスでは数多くの女性芸術家が活躍した。カペとブノワもそうした二人で、女性が初めて出品を認められた1791年の官展に出品している。カペの自画像では、ボリュームを強調した巻き髪や淡いブルーのリボンとドレスがロココの雅なファッションを伝えるのに対し、ブノワの女性像は、ギリシャ彫刻を思わせる薄手の白いシュミーズドレスの上にショールをまとい、より簡潔な新古典主義の時代の到来を伝えている。
Chapter 4|19 世紀
同章では、19世紀における人物表現に着目。新しい時代に求められる近代性と古典的な絵画伝統のはざまで葛藤した画家たちの多様なあり方を探る。革命期から第二帝政期にかけてフランスで活動したオノレ・ドーミエは、パリの都市生活を鋭い観察眼で捉えた油彩画を制作した。時を同じくして、ドミニク・アングルなどアカデミー派の画家たちは伝統に根ざした理想的な人物像を確立していた。少し時代が下るブーグローはアカデミーの規範に従った様式で描きながらも農村の少女など純真で無垢なモデルを甘く感傷的に描いた。
スペイン人画家ソローリャは、生前にアメリカで極めて高い人気を誇った。ベラスケスやゴヤなどスペインの写実絵画の伝統を受け継ぎながら、子どもたちや自身の娘など身近なモデルの何気ない仕草や表情を捉えた作品に本領を発揮。画業の後半では、戸外制作を重視した。スペイン各地の風俗や庶民の姿を描いた彼の円熟期の作品には、スペインの明るい太陽の光が素早い筆致で描かれている。19世紀絵画の多彩な魅力を紹介する。
チケットはイープラスにて販売中。