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釜石出身 中川大介さん 自然再生、父・故淳さんの思い…自著で伝える 古里で出版記念トーク

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 釜石市平田出身で北海道函館市在住のライター中川大介さん(61)が14日、古里釜石でトークイベントを行った。中川さんの父淳さんは、たたら製鉄研究、東日本大震災後の復興プロジェクトや桜植樹など多彩な活動で地域に貢献した方で、昨年10月に函館市で逝去(享年90)。中川さんは「父が愛した桜の季節に地元で…」と13日、淳さんのお別れ会を釜石市民ホールTETTOで開いた。トークイベントは大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)が同会に合わせて企画した。

 中川さんは記者として30年勤務した北海道新聞社を2年前に退職。自身が取材活動で関わった河川環境の再生、父淳さんが震災後、地元紙の復興釜石新聞に寄せたコラム「足音」を基に、人間は自然とどう向き合うべきかを記した著書「水辺の小さな自然再生」(一般社団法人農山漁村文化協会刊)を昨年12月に出版した。

河川環境再生の取材や父淳さん(右下写真)が寄稿したコラムを基に執筆した本を紹介する中川大介さん。「環の中に生きる」は自費出版


 記者時代、農漁業や環境保全などの取材を数多く手がけた中川さんは、現場で目にした3面をコンクリートで固められた川(水路)に疑問を感じた。後に北海道東部の3河川で、魚が遡上できる「魚道」作りを取材。流域の住民が自ら立ち上がり、自己調達できる資金規模、多様な主体の参画・協働で取り組む再生活動に感銘を受けた。中でも驚いたのは河川コンサルタントが提唱した「壊れながら機能する魚道」という概念。補修を繰り返すことが住民の継続的な関心へとつながっていくという。

 「技術の進歩は人間が自然に関わる機会を減らし、地域の絆の希薄化、自然を見る目を失うことにもなった」と中川さん。自然災害が多発する昨今。「人間の力には限界がある。自然に逆らわない、自然のしくみに折り合うような技術を考えていかねばならない時代にきている。そのヒントが小さな自然再生の中にあるのでは」と話す。

北海道の河川での魚道作りは映像を見せながら説明した


 中川さんの父淳さんは元中学校技術科教員。「鉄のまち釜石」の教育の一環で、伝統的な「たたら製鉄」の技法を実践。艦砲射撃体験記録の掘り起しや平和運動にも取り組んだ。2011年の震災津波で平田の自宅は全壊。苦難を経験しながら平田地区復興プロジェクト委員長、釜石に桜を植える会会長として古里再生に力を尽くした。17年に病のため、長男大介さんが暮らす函館に転居。闘病中だった昨年10月、急逝した。

 中川さんは「父が生きてきた足跡は自分にとっても大きなもの。人と技術、人と自然などを考える上でも重要なヒント」と話す。この日は、震災から1年後に淳さんが新聞に寄稿した桜のコラムを紹介。これを機に桜を植える会が立ち上がり、市内に1000本以上の桜が植えられたことなどを伝えた。「古里の風景をつくる上で、その土地に住む者が関わっていくことはとても大事。風景とはそこに立つ人間が五感で感じるもの。人が重ねてきた記憶がその空間の中に蓄積されている」とも。自身の原風景である平田の山の景色を思い浮かべ、人と自然のつながりの深さを示した。

復興釜石新聞連載「足音」から抜粋した中川淳さんのコラム集。13日のお別れ会で配られた


 前日の淳さんのお別れ会には生前、関わりのあった市民や教え子ら約90人が出席。淳さんの功績を示す新聞記事や写真、出演番組などを見ながら思い出を語り合ったという。

 トークイベントに足を運んだ同市の佐々木久美子さん(61)は「震災の津波で何もかも失ってしまった感があったが、それだけではなく再生への新たな芽も生まれていたことに改めて気づかされた。中川先生(淳さん)の桜を再生させようという取り組みもその一つ」と復興のシンボルにもなった活動に感謝を込めた。

約1時間のトークの後はサイン会も行われた


自著を手に笑顔を見せる中川さん。書店の桑畑眞一社長(左)、出版元・農文協の篠田将汰さん(右)と

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