レシピなしでもおいしいカレーが作れる! 著書70冊超の“カレーの人”水野仁輔さん考案「システムカレー学」その2
おいしいカレーを作るために最も重要なことは、何でしょうか?
『スパイスマジックでつくるカレーの法則』『水野仁輔 カレーの教科書』(NHK出版)をはじめ、カレーに関する著書が70冊を超える“カレーの人”水野仁輔さんは、「できあがりのゴールイメージをできるだけ具体的に持つこと」と断言します。
水野さんは、「なぜおいしくなったのか」「何をしたらどうなるのか」「そのためには何をすればいいのか」を問い続け、『水野仁輔 カレーの教科書』刊行から10年を経たいま、ついにレシピに頼らず思い通りのカレーを作るためのメソッド「システムカレー学」を確立しました。
今回は、水野さんの著書『水野仁輔 システムカレー学』から、ゴールデンルールから展開したアレンジレシピを紹介します。
※本記事は、デジタルマガジン用に編集しています。
◎基本のチキンカレーからの展開レシピ
第2章では、全く同じ材料と分量で、切り方や加熱の方法を変えるだけで7種類のカレーを作る方法をご紹介しています。そのなかから、いちばん「あっさり」なカレーのレシピをお見せします。
あっさりチキンカレー
【目指すゴール】
最もあっさり、素材の形を残した明るいカレー
材料(4人分)
植物油……大さじ1(12g)
ホールスパイス (クミンシード……小さじ1強(2g)
コリアンダーシード……小さじ2強(4g)
レッドチリ……3本(2g))
玉ねぎ(くし形切り)……1個(250g)
にんにく(潰す)……1片(10g)
しょうが(潰す)……1片(12g)
トマト(八つ割り)……大1個(250g)
パウダースパイス (ターメリック……小さじ1(2g)
コリアンダー……小さじ1(2g))
塩……小さじ1強(7g)
水……100㎖
鶏もも肉(ひと口大に切る)……400g
香菜(ザク切り)……1株(20g)
作り方
1 鍋に油を中火で熱し、ホールスパイスを加えてチリがほんのり色づくまで1分ほど炒める。
2 玉ねぎとにんにく、しょうがを加えて中火で4分ほど炒める。
3 トマトを加えて弱火で3分ほど炒める。
4 火を止めてパウダースパイスと塩を加え、混ぜ合わせる。[507g]
5 水を注いで強火で煮立てる。
6 鶏肉を加えて強火で煮立て、ふたをして中火で5分ほど煮る。
7 火を止めて香菜を加え、混ぜ合わせる。[769g]
※[ ]内は、鍋を除いた材料の重さ。仕上がりの目安に記している。
「あっさりチキンカレー」の作り方のデザイン
【作り方のデザイン】
まず全体的なイメージとして、具としての素材がゴロゴロし、ソースはソースというよりもスープに近い状態でシャバシャバしたカレーに仕上げる。
そのために加熱によって鍋に投入した素材が潰れて(崩れて)いくのはできるだけ避けたい。短時間で溶け始める可能性が最も高いのはトマトだ。
玉ねぎは適度に脱水してとろりとした形状になっても、溶けてソースの濃度を強めるまでにはそれなりの加熱が必要となる。加えた水にわずかに溶け出した素材の一部が控えめに風味ととろみをつけることをイメージしながら加熱を進めていく。
GR1 でホールスパイスを炒めるときは、レッドチリの色変化で油の温度を確認するといい。真黒くなる前に次へ。
GR2 では玉ねぎの状態をチェック。色づける必要はなく、しんなりとすればOK。
GR3 のトマトが大事なポイント。加熱しすぎると、とろみに変わってしまう。
GR4 のパウダースパイスは量も少ないので混ぜる程度。
GR5 の水が肝心。煮立った時点でどの程度の風味やとろみになるかは見た目で判断。
GR6 で加える鶏肉は、大きめに切ってあるため、中心まで火を通すには少し時間がかかる。この煮るプロセスで他の素材が潰れないように気をつけたい。鍋中をかき混ぜすぎないように注意。
GR7 の香菜は火を止めてから加え混ぜる程度でもよい。
完成したカレーは、スープカレーのような見た目になっている。塩加減が決まっていれば味が薄いことはなく、素材の味わいを楽しめるはずだ。
水野仁輔(みずの・じんすけ)
カレーの人。AIRSPICE 代表取締役。1974年、静岡県生まれ。5歳の時に地元・静岡県浜松市にあったインドカレー専門店『ボンベイ』の味に出会う。以来、高校卒業まで通いつめた。大学進学で上京してカレー魂に火が付き、インド料理店で経験を積む。基本的なテクニックを習得して以降は、独学でカレーを研究し続ける。http://www.airspice.jp/
◆『水野仁輔 システムカレー学』
◆文 水野仁輔
◆写真 安彦幸枝
◆スタイリング 曲田有子