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沢田聖子のセルフカバーベスト「石の上にも45年」人生酸いも甘いも経験したアナタにお薦め

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2024年05月22日 沢田聖子のアルバム「Anniversary Best Self-Cover Album ~石の上にも45年~」発売日

沢田聖子、約35年ぶりとなるヒット!


2024年6月3日付けのオリコン週間アルバムランキングで、沢田聖子のセルフカバーアルバム『Anniversary Best Self-Cover Album〜石の上にも45年〜』が週間47位にランクインした。この週間アルバムTOP50入りというのは、彼女にとって1989年5月のアルバム『SOUVENIR』以来、約35年ぶりとなるヒットとなった。

ヒットの要因としては、デビューから45年間の代表曲全16曲を収録していることや、1985年の映像ソフト『Potential』を初DVD化したことなどもあるだろう。しかし、それ以上に、彼女がこの45年間、幾度かの所属事務所やレコード会社の移籍を経てもなお、精力的に活動し続けているということを実感して購入したファンが多いのではないだろうか。今回のために新録音された8曲を含め、この10年間に発表された全16曲を聴いていると、時の変化を感じつつも、それを自然に受け入れている様子が伝わってきて、こちらも自然に穏やかな気分になってくる。

とはいえ、アルバムはLP時代にオリコンでトップ10入りした作品が4作あるにもかかわらず、大きなシングルヒットがなかったことや、テレビよりもライブやラジオを優先して活動していたことから、彼女の楽曲に触れる機会がなかった人もいることだろう。そこで今回は本作の中から何曲か選んで、彼女の魅力を紐解いてみたい。

長年歌ってきたからこその説得力あるパフォーマンス、沢田聖子の注目すべき6曲


1曲目:「シオン」作詩作曲:イルカ(オリジナル1979年)
シンガーソングライターであるイルカの妹分としてデビューした沢田が、イルカから提供された、ささやかな花のような女性を歌ったバラード。45年経過した新録音版では、可憐な部分を残しつつも、45年という月日から穏やかさも加わって、沢田が淋しげな主人公(=かつての沢田自身)を見守っているような温かな映像が思い浮かぶ。

3曲目:「卒業」作詩:三浦徳子 / 作曲:加藤和彦(オリジナル1982年)
シングル「雨の日のサンシャイン」と並び、現時点では週間シングルの自己最高50位をマークし、累計売上も自己最高の約5万枚を記録(なお、同名のアルバムの方は、最高9位で初のトップ10入りを果たしている)。卒業をテーマにしたヨーロッパ風 歌謡曲テイストの楽曲だが、当時10代だった主人公の心の叫びが、今はライブ会場の皆で楽しく歌えるような雰囲気に変わった。これぞ名曲ゆえの安定感だろう。もしも、斉藤由貴や菊池桃子、尾崎豊、倉沢淳美など同名異曲の「卒業」が同時期に上位入りした1985年に発売されていたならば、もっと注目されていたに違いない。

6曲目:「あなたからF.O.(フェイドアウト)」作詩作曲:沢田聖子(オリジナル1984年)
アルバム『INGENUE(アンジェーヌ)』からのリカットゆえに、シングルではトップ100入りしていないものの、ラジオでは人気だった印象の楽曲。インパクトのあるタイトルから始まるサビ頭の構成で、今後、昭和ポップスの再評価でさらに盛り上がるのではと期待したくなるほどヒット曲としての華がある。2014年録音版の本作では、穏やかなボサノバ調のリズムに激しいギターソロが重なる緩急のあるアレンジで、歌唱はその分を差し引いたのかニュートラルに。原曲で身勝手な恋人を恨んでいた主人公の女性も、“長く生きてりゃ、まぁ、こんなこともあるよね” と寛大になったようにも聞こえる。

11曲目:「親愛なる人へ」作詩作曲:沢田聖子(オリジナル2001年)
1999年に急逝した故・村下孝蔵へのレクイエム。

 瞳を閉じれば 微笑む顔が見える
 大好きなあの歌 天空(そら)唄ってますか?
 私には聴こえる 優しい声とメロディー
 あなたのぶんまで今日も私は唄う

サビの部分を、どの歌よりも力強く歌う沢田の姿からは、村下への溢れんばかりの敬意と、彼の意志を継ぎたいという強い決意を感じさせる。今回収録されている2015年版の本作では、それがより顕著になっている。

12曲目:「恋心」作詩作曲:沢田聖子(オリジナル2003年)
“ルール違反の恋” を歌ったミディアム調のラブソング。島津ゆたか「ホテル」やテレサ・テン「愛人」といった昭和歌謡のような袋小路な雰囲気でもなく、EXILE「Ti Amo」やサザンオールスターズ「LOVE AFFAIR~秘密のデート」といったJ-POPのような背徳感もなく、“いくつになっても ときめいていたい”、“夜毎つのる気持ちは止められない” といった大人の本音を、軽快なアレンジに乗せて歌う。特別な気持ちだけど、特別に歌い過ぎない、このさりげなさに彼女の表現者としての凄さをあらためて感じた。個人的には、16曲中で最も意表を突かれた。

16曲目:「Life is Winding Road 」作詩作曲:沢田聖子(オリジナル2019年)

これまでの人生を総括しつつ、これからも何度も挑み続けようと自分を励ますミディアム調のポップス。アンコールの終盤を想起させる賑やかなアレンジで、まさに本作のラストに相応しく、聴いていると明日からまた繰り返される日常を元気に乗り切れそうな気分になる。これも、長年歌ってきたからこその説得力あるパフォーマンスだろう。

1985年当時の沢田聖子の魅力をふんだんに取り入れたDVD


DVDは全10曲、ライブハウスの弾き語りと海辺での水着シーンを織り交ぜたミュージックビデオの合間に、リスナーからのお便りを紹介するという番組形式。まさにシンガー、ソングライター、アイドル、ラジオDJという、1985年当時の彼女の魅力をふんだんに取り入れた内容になっている。

彼女は曲も書けるし、自作でない歌も歌えるし、ルックスもキュートで、その上、トークも面白い… と、何でもこなしてしまうオールラウンダー。それゆえ、ベテランになった彼女を強く意識してこなかった人は意外と多いかもしれない。

ただ、こうして聞いていると、近年の歌唱の中に “それでも自分はやってきた” という誇りがみなぎっているのが分かる。これこそが、沢田聖子ならではの大きな魅力ではないだろうか。だからこそ、日々何かを継続しながら生きている私たち聞き手に勇気や元気をくれるのだと思う。

そんな本作は、目立たぬ花から始まり、様々な人生の酸いも甘いも経験し、それでも前を向いて歩み続けるという、楽曲群の流れがそのまま、1人の人生をリアルに反映したような傑作だ。幅広い中高年世代にあらためてオススメしたい。

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