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【富士山静岡交響楽団が一流オケの仲間入り】地方オケの日本オーケストラ連盟正会員認定は貴重!課題は事業規模の拡大

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「富士山静岡交響楽団が一流オケの仲間入り」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2024年6月26日放送)

(山田)今日は県内唯一の常設プロオーケストラ、富士山静岡交響楽団の話題ですね。

(橋爪)はい。通称「静響」と言いますが、「3時のドリル」では2023年6月21日にもお話ししています。その際は主に「地方オケ」の役割とは何か、といった話をしましたが、その静響に先頃大きな動きがありました。

(山田)前回は、富士山静岡交響楽団は浜松フィルハーモニー管弦楽団と静岡交響楽団が一緒になって2021年にスタートしたことを学びました。

(橋爪)その静響が、日本オーケストラ連盟が6月17日に開いた総会で正会員として認められたんです。静響は2008年に連盟加入しているんですが、ずっと「準会員」でした。元々演奏については定評がありましたが、これで名実ともに一流オケだと音楽界に認められました。

(山田)日本オーケストラ連盟の正会員になるのとならないのとではだいぶ違うわけですか。

(橋爪)そうですね。この辺がどう違うのかというのも後ほど話をします。静岡市は7月に市役所静岡庁舎にお祝いの横断幕を出すそうです。近くにお住いの方はぜひ注目してください。

(山田)先日、コンサートもあったんですよね?

(橋爪)6月22日に静岡市清水区のマリナート、23日に浜松市のアクトシティ浜松で第125回定期演奏会が行われました。私は22日に行ってきたんですが、折り込みチラシに正会員承認を伝える「号外」が挟み込まれていて、ロビーにはお祝いの花も飾られていて、祝賀ムード一色でした。

お客さんも大勢来ていて、1階席は見たところほぼ満席だったのではないでしょうか。事務局の方によると、当日券も通常以上に出ていたそうです。

(山田)それは正会員に承認され、注目度が高まったということもありますか?

(橋爪)新聞報道でご覧いただいて、「見に行こうか」と思ってくださった方もいたのではないでしょうか。

正会員認定後の定期演奏会も気負いなし!

(山田)当日の演奏はどうでしたか?

(橋爪)私は最近の定期演奏会をほとんど見てるんですが、この日も素晴らしかったです。指揮の高関健さんも含めて特に気合いが入っている、という感じではないですが、逆に「いつも通り」というところに信頼感がありました。気負うことなく、淡々とクオリティーが高い演奏を届けてくれました。

ハイドンの「交響曲第100番ト長調『軍隊』」を演奏したんですが、初夏の爽やかな風を感じるスピード感と明瞭快活さがある演奏でした。1曲目だったんですが、場内を温めたところにピアニストでこの日の客演の小林愛実さんが登場し…

(山田)小林愛実さん。

(橋爪)はい。2021年の第18回ショパン国際ピアノコンクールで第4位に入賞しています。

(山田)すごいですね。

(橋爪)世界中が注目してるピアノコンクールですよね。小林さんはラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による狂詩曲」を披露したんですけど、これが本当にすごい演奏でした。

(山田)どうすごかったんですか。

(橋爪)鍵盤の上で常に何か起きているという感じの、ただならない音の出し方をしていました。この曲は30分近くあるんですが、最後ふわっと小さい和音で終わるんです。

(山田)へぇー。ポロリンみたいな?

(橋爪)そうです。本当に小さい音で終わるんですが、空中に体がふわっと持ち上げられたような気がして、夢見心地のエンディングでした。

(山田)いい表現ですね。

(橋爪)休憩後はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」でした。これが5楽章あるんですが、それぞれの楽章ごとに展開がめまぐるしくて、次に何が起こるか予測ができない。とてもスリリングな楽曲でした。

(山田)何かちょっと物語のようなものを感じさせますね。

(橋爪)ガラッと場面転換するようなことがいくつもあって、本当にわくわくしました。それを確実に表現する演奏力の高さを改めて感じました。通り一遍のフレーズですが「心が豊かになった」2時間超でしたね。

(山田)そうやって言われると聴きに行きたくなりますね。

運営体制の拡充、楽員の待遇改善など10年にわたる取り組みが実る

(橋爪)さて、正会員承認の話に戻りますね。現在、日本オーケストラ連盟正会員は全国で27団体あります。たとえばNHK交響楽団。

(山田)N響ですね!

(橋爪)あとは読売日本交響楽団、東京都交響楽団。この3団体はいわゆる「御三家」と呼ばれています。

(山田)どこも有名ですもんね。

(橋爪)その御三家と肩を並べる存在になったということです。

(山田)同じグループですよ、正会員ですよと。

(橋爪)ブランド的にはそこに達したということですね。そこも大事なんですが、私が思うには、もっと大事なことがあります。それは、27団体の大半は首都圏、大阪、名古屋のオケで、それ以外のオケは7つしかないということです。

北から順番に札幌交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、山形交響楽団、群馬交響楽団、広島交響楽団、九州交響楽団、そして富士山静岡交響楽団です。

(山田)すごいですね。

(橋爪)いわゆる「地方オケ」の正会員は貴重なんです。正会員には「条件」が5つ規定されています。まずは「法人格を有するプロオーケストラ」であること。それから「固定給与を支給しているメンバーによる2管編成以上」というものもあります。2管編成ってわかりますか?

(山田)わからないです。教えてください。

(橋爪)2管編成とは、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットといった木管楽器の演奏者が2人ずついるという意味です。音量が小さい楽器の音色がきちんと固まると、全体のオーケストラの音量が決まってくるので、2人以上の奏者を確保してくださいよということだと思います。

(山田)へぇー。

(橋爪)あとは「定期会員制を採用し、年間10回以上の自主演奏会」を開催していることなどです。それらを勘案して、理事会、総会で議決されて、正会員となるわけです。静響はそこに到達したということになります。

(山田)いろいろとハードルがありますね。

(橋爪)だから、準会員という形で2008年に加盟し、正会員の資格を得るまで16年ほどかかりました。一方で、事務局側は運営組織体制の拡充や、楽員の待遇改善などを果たしてきたので、10年以上にわたる取り組みの成果が正式に認められたというのが本当のところだと思います。

(山田)なんかJリーグに参入したチームみたいですね。

正会員認定で周りの見る目が変わる⁉

(橋爪)そうですね。先ほど質問のあった準会員から正会員になると何が変わるのかという点ですが、これと言えることは実はそれほどありません。

(山田)そうですか。

(橋爪)ただ、クラシック界というのは良くも悪くも「格式」を重視する世界なんです。宮澤敏夫専務理事は「県内外で静響を見る目が変わる」と話しています。

これを私なりに解釈すると、準会員時代は「正会員にあらずんばオケにあらず」というような雰囲気の中で過ごしてきたんだと思います。出演のオファーなどを行う際に、相手から「正会員じゃないのかぁ…」といった雰囲気を感じることがあったのではないかと想像します。

もう一つ「正会員効果」として挙げられるのは、楽員のモチベーション向上です。現在47人で活動していますが、岩崎清悟理事長は「彼らは一人一人がアーティスト。一流オケの証しが得られたというのは彼らのプライドにも大きく影響するだろう」と言っています。

(山田)なるほど。

(橋爪)この言葉は、まさにその通りだと思います。表現者は意外とこういうことが演奏に影響してくるんです。

(山田)そりゃそうですよ。例えばミュージシャンでもメジャーデビューしているかどうかで見られ方が違ったりすることがありますよね。

(橋爪)周りの見る目が変わることによって、自己研鑽してレベルアップしなければならないという気持ちが高まるというのもあるのではないかと思います。

今後の課題も挙げておきますね。正会員になったのは良かったですが、それで終わりではありません。やはり事業拡大はもっと進めなければいけないと思います。

日本のプロフェッショナル・オーケストラ名鑑2023によると、静響の2022年度収支は2億2000万円規模です。

(山田)これはどうなんですか?

(橋爪)オケの収入ということで言うと、同じ資料でNHK交響楽団が一番多くて31億7000万円。続いて読売日本交響楽団の21億5000万円。だから規模が違うと言えば違うんです。

(山田)同じ正会員とはいえ。

(橋爪)ただ、昨年のこのコーナーでも言いましたが、こうした東京の大規模楽団に対抗する必要はないと思います。私が勝手に「モデル」や「目標」と考えているのは山形交響楽団です。非常に評価が高いオーケストラで、規模でいうと5億5000万円ほどです。

(山田)倍以上ですね。

(橋爪)まずはここを目指せばいいのではないかと思っています。そうすれば、楽員の待遇もより一層良くなりますし、もっと言えば移籍の必要もなくなってきます。事務局の方も望んでいることなんですが、楽員の皆さんが静岡に住んで名実ともに静岡の楽団として活動できるようになっていくのではないでしょうか。

課題解消に向けた第一歩とは?

(橋爪)そのために目標として掲げる数字の一つとしては定期会員数というものがあります。山形は個人と法人の両方を合わせてだと思いますが1200件あります。これに対して、静響はまだ336件なので、そこの差をどんどん埋めていくようなことを考えていってほしいと思います。

(山田)会員を増やしてということですか。

(橋爪)事務局が頑張れということだけでなく、県民も県内にこういうオーケストラがあり、正会員にまで上り詰め、地方オケとして認められているということを知って、一般会員になるのも良し、企業からの協賛という形で支援するも良し、もう少し県の中からバックアップするような動きが出てきてほしいですね。

(山田)まずはコンサートに足を運ぶところからでもいいですね。

(橋爪)そうですね。

(山田)今日の橋爪さんの表現ぶりを聞いて鑑賞してみたいと思いました。

(橋爪)次は7月20日と21日に第126回の定期演奏会があります。三島市民文化会館と静岡市清水文化会館マリナートの2会場です。

(山田)ぜひ皆さんチェックしてみましょうね。今日の勉強はこれでおしまい!

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