「生物を使って有害生物を駆除する?」生物農薬として利用された魚介類3選
有害動物を、その天敵を利用して駆除しようとする「生物農薬」。魚介類がそれに利用されたこともありますが、概ねうまく行っていません。
カダヤシ
夏になるとどこからともなく飛んできて、我々にストレスを与える吸血生物・カ。幼虫のときはボウフラと呼ばれて水中に生息しており、小魚の餌となっています。
そのため、魚を用いてカの駆除を行うことを狙い、ボウフラを好んで食べるとされた「カダヤシ」という魚がかつて日本に移入されました。カダヤシはメダカによく似た魚で、同様の理由で世界中に移植された歴史があります。
しかし実際には、たしかにボウフラも食べますがそれ以外の水生昆虫も広く食し、生態系のバランスを崩してしまうことが懸念されます。攻撃的で繁殖力も強く、在来のメダカが駆逐されてしまった水域もあるなど、全く想定外の事態をもたらしてしまいました。
ハクレン
高度成長期、日本全国で河川の水質汚濁が問題となりました。生活排水がほぼ垂れ流しとなった結果、水中が富栄養化しすぎて大量の植物プランクトンが発生し問題となりました。それがアオコです。
アオコはゲオスミンという物質を生成し、それによって水にかび臭さや泥臭さが発生します。そのためアオコが発生しないよう、植物プランクトンを捕食する魚を導入しようという動きもあります。その魚とはハクレン。
ハクレンは中国原産の魚で、植物プランクトンを好んで食べます。そのためアオコが発生した水域にこれを放流することで、原因プランクトンを駆除することができるのでは、と考えられています。
ただし、実際に放流が行われ、大きな成果を上げた水域はあまりないようです。というのもハクレンはアオコ原因プランクトン以外のプランクトンも食べてしまうため、水域の環境によっては動物プランクトンが大きく減少し、結果的に植物プランクトンが増加してしまうこともあったようなのです。
ジャンボタニシ
結局、ある生き物を使って別の生き物を駆除しようとする「生物農薬」は、人の力でコントロールするのがとても難しく、期待したような成果が出ないのはおろか、より悪い結果をもたらしてしまうことのほうが多いと言われています。その最たる例がジャンボタニシでしょう。
ジャンボタニシは標準和名をスクミリンゴガイといい、もともとは食用にすることを目的に移入されましたが定着せず、逸出し野生化。水田に侵入しイネを食害、大きな被害をもたらしたことから問題となりました。
最近ではその旺盛な食欲を活かし、水田の雑草を捕食させ生物農薬に使用する動きも出てきたのですが、イネを食べさせずに雑草だけ食べさせようとするのは非常に難易度が高いとされてます。無農薬の文字に惹かれてこの貝を水田に導入した結果、イネを台無しにされてしまう……という危険性も懸念されており、農水省ではこの貝をむやみに農薬代わりに利用しないよう呼びかけています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>