【レビュー】アンドリュー・ガーフィールドとフローレンス・ピューが贈る恋愛映画 『We Live in Time』─ 「限りある時間」の中で進む、感涙必至のラブストーリー
(カナダ・トロントから現地レポート)『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールドと、『ミッドサマー』などのフローレンス・ピューが主演を務めたラブストーリー『We Live in Time(原題)』がトロント国際映画祭プレミア公開を経て、2024年10月18日に劇場公開を迎えた。『愛しい人からの最後の手紙』(2021)などの恋愛映画を手がけ、トニー賞にノミネートされた経験を持つニック・ペインが書いた脚本に、『ブルックリン』(2015)や『ザ・ゴールドフィンチ』(2019)のアイルランド映画監督ジョン・クローリーが命を吹き込んだ。日本で言うところの『世界の中心で愛を叫ぶ』のような“泣ける恋愛映画”であるが、喪失を嘆くのではなく、人生を楽しむことを教えてくれる映画に仕上がっている。
本作は、ミシュランの星を獲得したシェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、彼女を支える夫のトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)の10年が描かれる。冒頭は、アルムートがジョギングをして、朝食を夫のトビアスのために作る清々しいシーンからスタート。次に、アルムートがロンドンのトイレで陣痛に耐えるシーン、アルムートのステージ3の卵巣がんが再発したことを告げられるシーンなどが映し出される。2人の出会いや、新しい命の誕生、闘病などのシーンがそれぞれ切り取られ、新たに組み合わさっている。2人の「限りある時間」の中で進むラブストーリーの一瞬一瞬の出来事が大切に描かれた構成となっている。
アルムートとトビアスの出会いは、風変わりなもの。妻から送られてきた離婚の書類にサインするため、動揺しながらペンを買いに出たトビアスをアルムートが車ではねてしまうのだ。アルムートは事故のお詫びにトビアスと奥さんを自分のレストランに招待する。そこでアルムートが離婚手続き中であることを知ると、2人はすぐに意気投合し、恋に落ちていく。30代の恋愛とあって、トビアスがアルムートに「子どもを望まない相手と恋に落ちることができない」と伝えるシーンなど、かなり現実味を帯びたシーンの数々が共感を呼ぶ。
フローレンス・ピューといえば、2023年にファッションの祭典「メットガラ」にバズカットで登場し話題となったが、それは本作の役作りのためだった。米によると、クローリー監督はカツラなどのヘッドピースも選択肢の一つだとフローレンスに伝えたが、彼女は役作りに完全にコミットしたいという考えだったそうだ。「彼の話の途中で止めてこう言いました。『ジョン、こういう映画でこのキャラクターを演じるなら、必要なことをやらなきゃだめです』『もしやりたくないなら、こういう物語を作るべきじゃありません』とね」と語っている。また、トロントの映画館では本編が始まる前にフローレンスとアンドリューのインタビューが流れるのだが、フローレンスは「頭を剃るシーンは本作で一番美しいシーンのひとつ」としていた。
涙を誘うストーリー展開の中で輝く2人の出来事を集めコラージュにしたような、純粋な美しさを持つ『We Live in Time』。Rotten Tomatoesでは批評家スコアが80%、オーディエンススコアが88%と高評価を記録している(現地時間10月22日時点)。ちなみにアメリカでは数日間わずか5間で小規模公開され、18日目に全国1,000館で拡大公開された。週末興行収入ではトップ5にランクイン。今年最高の恋愛映画の一つだ。
監督は『BOY A』(2007)や『ブルックリン』(2015)のジョン・クローリー。製作総指揮にはベネディクト・カンバーバッチが自身の制作会社SunnyMarchを通じて参加した。A24北米配給の『We Live in Time(原題)』の日本公開は未定。