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ぼっこう堂 ~ 矢掛町で変わらない味を家族で守り続けるおせんべい屋さん

倉敷とことこ

ぼっこう堂 ~ 矢掛町で変わらない味を家族で守り続けるおせんべい屋さん

岡山県小田郡矢掛町は、江戸時代に参勤交代で栄えた山陽道の宿場町です。

矢掛町にある矢掛商店街には旧矢掛本陣石井家住宅旧矢掛脇本陣髙草家住宅など、国の重要文化財に指定された歴史のある建築物がそのまま残っています。

ぼっこう堂は矢掛商店街にある創業60年の老舗おせんべい屋さんです。

砂糖、小麦粉、卵をベースに、ピーナッツ、生姜、ゆず、みそなどの味の種類があり、昔ながらのどこか懐かしいおせんべいを1枚1枚ていねいに焼いています。

創業者の堀津与志(ほり つよし)さんの味と製法を守り、変わらない味を作り続けているは、二代目 堀伸二(ほり しんじ)さん三代目 堀勝武(ほり しょうぶ)さんとそのご家族の皆さんです。

二代目 堀伸二さんは矢掛商店街でおせんべい屋の経営をするかたわら、矢掛町の観光に関するさまざまな取り組みをおこなっています。

ぼっこう堂と、二代目店主 堀伸二さんを紹介します。

ぼっこう堂の概要

ぼっこう堂は矢掛商店街の西の端にある、築100年以上経つ古民家を再生し店舗に改修したおせんべい屋さんです。

営業時間は午前8時から午後6時駐車場はお店の東側に2台あります。

お休みは不定休です。

運が良ければガラス越しにおせんべいを焼いているようすを見られ、店内には焼いたおせんべいの甘い香りがたちこめています。

にっこり微笑んだ天璋院篤姫(てんしょういん あつひめ)のロゴが出迎えてくれ、カラフルに包装されたさまざまな種類のおせんべいは、どれも美味しそうです。

天璋院篤姫は薩摩から徳川十三代将軍 家定(いえさだ)に嫁ぐための道中、旧矢掛本陣石井家住宅に宿泊した記録が残っています。

ぼっこう堂の特徴

創業者の堀津与志さんが考案した、そら豆、ゆず、生姜、みそ、ピーナッツなど十数種類の手焼きおせんべいの味と製法は変わらず今に受け継がれています。

ぼっこう堂の味を求めてきてくれるお客さんのために、味も製法も変えていません

お店の窓から見える手焼きの機械は50年以上前から使っています。

見学したときに作っていたのは「小粒ピーナツせんべい」でした。

三代目 堀勝武さんが、生地を流して機械が1周する間に焼きあがって戻ってきたおせんべいを鉄板からはがし、余分な部分を切り取り四角形に整えます。

流れるように作業をしていますが、鉄板はかなり熱くおせんべいを素手で焼く作業は大変だと思いました。

勝武さんのお母さんが、渡された四角いおせんべいを短冊の形に切りそろえ、袋に詰めていきます。

熱すぎると他の生地にくっつき、冷めすぎると切りそろえるときに割れてしまうので見極めが難しい作業です。

アーチ形の塩せんべい、折り畳んで真っ白い生姜蜜をかけた生姜せんべい、短冊に切られた小粒ピーナッツなど、同じ機械で焼かれたとは想像できない精巧さで、高い技術がうかがえます。

三代目堀勝武さん(奥)と、勝武さんのお母さん(手前)

塩味せんべい

塩と砂糖と小麦粉の素朴で優しい味のおせんべいです。

焼いたおせんべいが冷めきらないうちに、切って型に入れアーチの形にします。

生姜せんべい

折り畳まれて真っ白い生姜蜜をまとったおせんべいです。

焼きあがったら、熱いうちに手で折り曲げ生姜蜜でおおいます。

ピーナツせんべい

松の模様が美しく浮き出ています。

ピーナッツと小麦の生地が香ばしく止まらない美味しさです。

たまごせんべい

たまご、砂糖、小麦粉を使った、型にはめて焼き上げるおせんべいです。

大名行列の「奴」や、矢掛観光大使「やかっぴー」などの焼き印が押されています。

ぼっこう堂 二代目店主 堀伸二さん

二代目店主 堀伸二さん

ぼっこう堂 二代目店主 堀伸二さんはぼっこう堂の経営だけでなく、やかげDMO一般財団法人矢掛町観光交流推進機構の理事長、また備中西商工会の矢掛地区代表理事として矢掛町の観光推進活動に尽力しています。

やかげDMO一般財団法人矢掛町観光交流推進機構、備中西商工会の代表的な事業内容は以下のとおりです。

・イベント:クリームソーダIN矢掛、おいもがいーもん(やかげDMO一般財団法人矢掛町観光交流推進機構)
・矢掛町街並みエリア無電柱化一部区間実現(備中西商工会)
・大名行列(備中西商工会)

クリームソーダIN矢掛」は2023年夏イベントで、矢掛町内にある14店舗が名乗りをあげ、それぞれのお店らしさを表現したクリームソーダで矢掛を訪れたお客さんを魅了しました。

冬季は矢掛町内の20店舗が、さつまいもを使ったスイーツや料理を味わうイベント「おいもがいーもん」で矢掛を盛り上げています。

おいもがいーもん開催期間は、2023年11月19日(日)から2024年1月31日(水)まで。

矢掛町街並みエリア無電柱化」は、平成30年(2018年)社会資本整備総合交付金官民連携無電柱化支援事業として事業採択を受け、矢掛商店街の一部の区間で無電柱化が実現しました。

旧矢掛本陣石井家住宅から東は、電柱や電線のない町並みの風景が広がります。

大名行列」は昭和51年の11月に商工会青年部が、豪雨の浸水被害にあった矢掛商店街を元気づけようと、「お祭り」として大名行列をおこないました。

以来大名行列は復興イベントとして毎年11月第2日曜日に開催され、矢掛町の代表的なお祭りとして人々に親しまれています。

ぼっこう堂の店主、やかげDMO一般財団法人矢掛町観光交流推進機構の理事長、また備中西商工会の矢掛地区代表理事として、精力的に活動されている堀伸二さんから、ぼっこう堂や、矢掛の魅力について聞きました。

ぼっこう堂の店主 堀伸二さんにインタビュー

──ぼっこう堂の歴史を教えてください

堀(敬称略)──

矢掛商店街のおせんべい屋さんに奉公に出ていた父が、独立しておせんべい屋さんを始めました。

昭和60年(1985年)にやかげ郷土美術館前のお店が手狭になり、西町のお店に移転したんです。

移転先の築100年以上の古民家はかなり痛んでいましたが、世間では古民家を再生する動きも流行り始めたころで、うちもおせんべい屋さんに生まれ変わりました。

──ぼっこう堂の「ぼっこう」の名前の由来は何ですか?

堀──

岡山弁の「ぼっけえ」がもとで「すごい」という意味です。

──おせんべい屋さんを継ごうと思われたのはいつですか?

堀──

高校を卒業して地元企業に就職しましたが、母が体調をくずしてしまい、おせんべい屋の仕事が忙しい父に代わって、仕事を辞め病院の送り迎えなどをしていた時期がありました。

それからしばらくして、東京で大学に通っている友人から「遊びにこないか」と誘われ、友人のところでゆっくりしていたときに、おせんべい屋を継ごうと思ったんです。

せっかく東京に来たから有名な草加せんべいを習って帰ろうと思って、東武鉄道、東武線に乗り埼玉県草加市の役場をたずねました。

役場で手焼きの草加せんべい屋さんを紹介してもらい、住み込みで修業させてもらえることになったんです。

我ながら思い切った行動だったなと思います。21歳のときでした。

草加せんべいは、うるち米を粉にして餅のようについてのばし天日で干したあと、炭火で焼く固いおせんべいです。

関西のおせんべいは、砂糖、小麦粉、卵を使った甘いおせんべい、関東はもち米を使ったおせんべいが主流です。

実家は関西風の甘いおせんべい屋でしたが、草加せんべい屋さんで住み込みで働かせていただき、貴重な経験となりました。

変わらない味を守り続ける理由

──ぼっこう堂のおせんべいはたくさん種類がありますが、みなさんで考えられたのですか?

三代目堀勝武さんは、ぼっこう堂のすべてのおせんべいを焼く技術を持っています

堀──

レシピと焼き方は先代の父がすべて考えました

とくに古くからお付き合いのあるお客さんは、先代の味を求めて来られますのでこれからも変えるつもりはありません。

──いろいろな形のおせんべいがありますが、すべて機械で焼いているのですか?

堀──

薄焼きおせんべいは店舗奥にある新しい機械で自動で焼きますが、それ以外は1枚1枚、表にある機械で手焼きをしています。

──原料や産地にこだわりがありますか?

堀──

産地には、とくにこだわりはありませんが小麦粉、砂糖などの材料は質の良いものを使っています。

材料屋さんから「おせんべいにこんな良い砂糖を使うんですか?」と、驚かれたこともあって。

先代の父は「原料をケチったら美味しいものはできんのよ」と、よく言っていました。

観光地であり生活圏である矢掛商店街

──矢掛商店街の魅力はなんですか?

旧矢掛本陣石井家住宅

堀──

観光とかで注目度があがっているけれど、「ここで人が生活をしていること」が一番の魅力ですね。

同じような街並みが有名な観光地は、昼は観光客でにぎわっているのに、夜は誰もいないところのほうが多いと思います。

矢掛は学校があるし病院も行けるし、市役所もあるしスーパーマーケットで買いものもできる、人が普通に生活しているところなんです。

矢掛のように、観光地と生活圏が同じなのはめずらしいんです。

また矢掛は18歳(高校3年生)の年度末まで医療費が無料など、子育ての助成制度が充実しています。

ここで生まれた子たちが、「ああやっぱり矢掛が良い」と思える環境を作ることが我々の世代の役目だと思っています。

矢掛町の人口減少の歯止めは効かないでしょうが、右肩下がりを少しでもゆるやかにしたいですね。

矢掛町をお店や人が集まっていく町に

──ぼっこう堂さんのこれからの展望はありますか?

左:ぼっこう堂の新しいお店

堀──

実は駐車場の隣の家を買ったんです。

この家もかなり古いです。

きれいにして自分でやってもいいんだけど、矢掛で何かやりたい子にチャレンジショップとして使ってもらうのもいいかなと考えています。

ラーメン屋をやってみたい子に1、2週間貸してあげたり、アクセサリーを作って売ってみたい子に1か月貸してあげたりと、道具をそろえて環境を整えてあげて。

実店舗を構える前にチャレンジショップのお店をやって実際に体験して、自分のお店を持つ夢を叶えてほしい

矢掛商店街には飲食店などのお店がまだまだ不足しています。

新しいお店でぼっこう堂がクリームソーダや焼き芋をやってもいいし、居酒屋経験者の三代目がショットバーをやってもいいし。

なんでもできるお店が1軒できて人が来てくれて、そこからまたお店が増えていって、新しいお店がゆくゆくはこの町のために役に立てたらうれしいですね。

おわりに

矢掛商店街の歴史のある建物や町並みを眺めながら歩いていると、確かにここで生活をしている人々の暮らしが感じられます。

旧矢掛本陣石井家住宅や旧矢掛脇本陣髙草家住宅など、国の重要文化財のあいだあいだに昔からあるお肉屋さんやお花屋さん、美容院やおしゃれな古民家カフェなどが並んでいます。

午前中の早い時間にぼっこう堂へ行くと、お店の表にある鉄の機械でおせんべいを焼くようすが見られるかもしれません。

歴史のある観光地であり人々が普通に生活している商店街で、変わらない味を守り続けているおせんべい屋さんです。

堀さんはぼっこう堂の味を守りながら、観光で矢掛町を盛り上げようとDMO一般財団法人矢掛町観光交流推進機構での活動にも力を入れています。

天璋院篤姫のロゴが微笑んでいるように、ぼっこう堂さんのこれからがとても楽しみです。

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