袖ヶ浦市郷土博物館 企画展「村のくらしと一大事 -江戸時代の事件記録を読む-」7月21日まで開催中
江戸後期の古文書から、当時の西上総地域の村の実態を読み解く企画展が、袖ケ浦市郷土博物館(下新田1133)で開催中です。7月12日には展示解説会、同19日には関連講演会が参加費無料で開かれます。
相次ぐ飢饉(ききん)で空き巣や強盗が頻発
「当時は全国的に相次ぐ飢饉や災害で村は疲弊し、村を離れる無宿人の増加などにより治安が悪化、空き巣、強盗などが頻発していました。
村で事件が起こると、村役人などが間に入って調整し、解決しない場合は役所に訴訟を起こします。
役所の勧告による内済(和解)が成立しなければ裁判となりますが、裁判となると江戸に滞在しなければならず、村を挙げての一大事となるため、多くは内済で決着しています。
史料からは、当時の人々が村の平和と家の存続を守ることを何よりも優先していた様子が伝わります」と、学芸員の桐村久美子さんは話します。
古文書で読み解く村の一大事とは
展示場で「土蔵類焼にて年貢米消失」(1785年)を見つけました。
内容は谷中村の年貢米36俵が、上納のために送った木更津の船宿の蔵で焼失し、弁償もされず、領主からは何が何でも納付するように命じられたという悲劇の記録です。
他にも、若い女性の行き倒れ遺体発見、稲の無断刈り取り、タケノコやニワトリ泥棒、飼い犬殺しなどの本当にあった事件の紹介や顛末など、展示された古文書には判読できる文字もあり、添えられた解説文で理解が進みます。
すべては酒のせい?
村役人が変死体で発見された件では、顔に傷があったため、当初は相手がいるなどと事件の疑いで検分も行われました。しかし「普段から大酒飲みで酒に酔うと木に登る癖があったので、落ちて凍え死んだのだと思う」と訴えを取り下げ、この村役人の跡式養子相続をしたいとの願い(1840年)を他の村役人が提出しています。跡継ぎがいないと家がつぶされてしまうので、これを何よりも心配したことが分かりますが、普段の行いのせいで真実はいざ知らず、木から落ちて亡くなったことにされた本人はお気の毒。
他家の下女に無理非道をした男は、被害女性の主人からの問い詰めに対し罪は認めたものの「酒酔いまぎれ」だったと酒を言い訳にしたが、内済にしてもらえたらしく、今後はこのようなことがないようにするといった本人親類連名で女性の主人に宛てた文書(1756年)が残っています。
被害者には気の毒としか言いようがないが、酒のせいということで、ある程度仕方ないと思われる風潮があったようです。
会期は7月21日(月・祝)まで。
(取材・執筆/マット)
問い合わせ
電話番号/0438-63-0811
袖ケ浦市郷土博物館
ホームページ/https://www.city.sodegaura.lg.jp/soshiki/hakubutsukan/h7kikakuten-ichidaiji.html