つながらない権利を「制度化」 全社員を業務連絡から遮断する9連休が組織を強くする
ルビー・グループ(東京都渋谷区)は10月1日、全役職員に9日間の連続休暇を義務付ける制度を導入した。休暇は年に1回、任意の時期に取得できる。
休暇期間中は、電話やメールでのコンタクトが一切禁止される。新制度を先行導入した親会社では、個人の心身リフレッシュに加え、休暇に伴う業務引き継ぎのプロセスを通じて、組織力強化にも成果が出ているという。
業務の属人化を排除し、組織全体での共有化を推進
休暇取得に必須となる担当業務の引き継ぎを活用して、業務内容を可視化し整理する。休暇中の社員との連絡が完全に絶たれる同制度では、徹底した事前引き継ぎが必要となるため、結果として業務の属人性が解消され、組織力の強化につながるとする。
同社は、組織全体での業務内容の共有が進むことで、急な欠員にも対応できる柔軟な体制が構築され、将来的な配置転換もスムーズに行えるようになると説明する。引き継ぎを受けた側の視点から、業務改善のきっかけになることも期待されている。
新たな視点や活力を得る機会を確保して社員のウェルビーイング向上へ
「山ごもり休暇制度」という名称は、デジタルデバイスから完全に解放され、心身のリフレッシュに集中してもらいたいという考えから命名された。同社は「社員一人ひとりのウェルビーイングを向上させることが、結果として組織全体の生産性や創造性の向上につながる」としており、土曜から翌週の日曜までの9日間を、日常業務から完全に離れる期間として設定している。社員が新たな視点や活力を得る機会を創出する。
同制度は、すでに親会社である株式会社イルグルム(大阪府大阪市)で運用されており、社員のリフレッシュと組織力強化に大きな成果を上げているという。
政府目標まで遠い有給休暇取得率、休暇制度にひと工夫する企業も
政府は2024年8月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定し、2028年までに年次有給休暇の取得率を70%に引き上げる目標を掲げている。2023年の取得率は過去最高とはいえ、65.3%にとどまっており、目標達成には至っていない。
厚生労働省は、10月を「年次有給休暇取得促進期間」と定め、リーフレットを作成したり、特設サイトで事例を紹介したりするなど、広報活動を強化している。
休暇制度に独自の工夫を凝らす企業も増えている。丸井グループ(東京都中野区)は、失効した有給休暇も使える「ステップアップ休職」制度を導入。従来の自己啓発休職制度を見直し、就学や資格取得、副業や『好き』の探求など、個々の価値観を起点とした挑戦をあと押ししている。また、法令が定める2倍以上となる、年10日以上の有給休暇取得を推奨する三谷産業(石川県金沢市)は、キャリア採用者に対し、前職での就業年数を考慮し、年次有給休暇を付与する制度を新設した。
ルビー・グループはECサイトの構築や運営を手掛ける企業。発表の詳細は同社公式リリースで確認できる。