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11月開始「フリーランス新法」の重要ポイント、下請け法との違いなど

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最近、芸能界において歌手やタレントが芸能事務所から独立するといった話題をよく聞きます。TVアナウンサーが勤務先であるTV局を退職することもあります。ただ、退職後も引き続き同局で同じ番組を担当しているということも珍しくありません。「会社に正社員や契約社員として勤務」という形態から「会社が業務を発注し、その業務を受託する」という業務委託に契約内容は大きく変わっているはずです。カメラマンやデザイナー、ライター、スポーツのインストラクターなどでもこのような働き方をしている人を一般的にフリーランスといいます。

今、フリーランスとして企業から業務を受託するという働き方を選ぶ人が増えています。今回はこのような現状を踏まえ2024年11月に施行される「フリーランス新法」について解説いたします。

フリーランス新法とは

フリーランス新法とは正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことです。フリーランス保護新法ともいわれています。

「特定受託事業者」はフリーランスのことを指します。企業に属さない一個人として仕事をするフリーランスが企業と取引する際、不利な状況や厳しい要求を受けることなく、適正な取引を行うことができるよう、フリーランスを保護することが主な目的となっています。

フリーランス新法、成立の背景や目的

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フリーランス保護新法とも呼ばれているように「保護」という表現から、フリーランスを守ることを目的にしていることが分かります。

大手出版社と1人のフリーカメラマンのケースで考えてみましょう。フリーカメラマンの方が「仕事をさせてもらっている」という立場になり、仕事の内容や報酬など大手出版社が主導権を握ることも考えられます。例えば依頼内容を踏まえ、相当な日数を要して写真や動画の撮影をしてきたものの、急に「今回は企画内容が変わり、なかったことにしてもらえないか」といった状況が起こりえます。

フリーランスにとって取引先がなくなることは大きな収入減となるため、理不尽な要求や病気や家庭の事情など大変な状況にあっても、仕事を断りたくない、断ることができないという心理が働きます。そのため、心身の状況など厳しい状況下で働いている人もいるでしょう。

会社に勤務する会社員の場合は会社との就業規則があり、雇用保険や労働保険といった社会保険もあり、有給や育休を取得することもできます。しかし、フリーランスではそういった制度が整っていないのです。そこで企業と取引するフリーランスを保護することを目的にフリーランス新法が成立しました。

またフードデリバリーなど新しいサービスが定着したことも背景にあります。アプリサービスに登録して飲食店をはじめ様々な店舗で好きな時間帯だけ働くという人も増えているようです。こういった働き方は曖昧な契約で責任の所在が不明瞭であったり、何らかのハラスメントを受けたりといったリスクも考えられます。フリーランス新法では、こういうケースも想定しています。

フリーランス新法の対象者は?

フリーランス新法ではフリーランスを「業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの」と定義づけています。先ほどのアナウンサーの例ですと、フリーアナウンサーとして独立してマネージャーなどのスタッフもおらず、基本的に1人でTV局などと契約をして仕事をするケースを指します。

筆者もファイナンシャルプランナー(FP)として独立し、フリーランスのような立場で働いていますが、FPの中には事務所や会社を作って数名の従業員と一緒にビジネスを展開し、大手企業と取引をするケースもあります。この場合は「従業員を使用しない」という条件を満たしていませんので、フリーランス新法が保護の対象として定めるフリーランスには該当しないことになります。

また業務委託が前提となっているため、企業との取引が前提となります。自ら商品やサービスを消費者に提供する場合は含まれません。個人で雑貨屋を開きお客様に商品を販売しているケースなどは対象外ということです。

先に紹介したカメラマンやライター、フードデリバリーやWEBデザイナーなどIT系の仕事、自身の経験やスキルを活かして講師業やインストラクターとして個人で働いている人などが、条件を満たせばフリーランス新法の対象となります。

下請法との大きな違い

ビジネス上の契約や取引によって弱い立場になりがちな下請け業者を保護するために「下請法」という法律があります。この下請法は資本金1000万円以上の業者が規制対象となり、資本金1000万円以下の下請け業者が保護の対象となっていました。

フリーランス新法では資本金に限らず、フリーランスの条件に該当する人と取引する事業者は全て規制対象の業者となる点が大きな違いです。

フリーランス新法7つのポイント

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公正取引委員会がフリーランス新法を以下のように7つのポイントで紹介しています。

①    書面などによる取引の明示
②    報酬支払期日の設定・期日内の支払い
③    7つの禁止行為
④    募集情報の的確表示
⑤    育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥    ハラスメント対策に関する体制整備
⑦    中途解雇等の事前予告・理由開示

参照:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」

しっかりと書面を明示し、報酬の支払期日も定められ、育休や介護への配慮、中途解雇等の事前予告や理由の開示など、どれも企業の従業員に準ずる内容となっています。また、以下が③の7つの禁止行為です。

① 受領拒否(特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること)
② 報酬の減額(特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること)
③ 返品(特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと)
④ 買いたたき(通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること)
⑤ 購入・利用強制(正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること)
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請(自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること)
⑦不当な給付内容の変更・やり直し(特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること)

参照:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」の概要資料

フリーランス側に責任がないにも関わらず、仕事の成果物を受け取らないとか、満足できないから報酬を減額するといったことを企業側ができないようになっています。

また、そもそも一般的な水準より明らかに低い報酬額を定めてはいけないことも明記されています。

発注企業が違反した場合の罰則は?

フリーランスに仕事を発注した事業者が違反した場合は、公正取引委員会や中小企業庁長官、厚生労働大臣といった行政の調査を受けることになります。指導・助言や必要な措置をとることを勧告され、勧告に従わない場合には命令・企業名の公表が行われます。さらに命令に従わない場合は罰金が科されます。

フリーランスでトラブルにあったらどうすればいい?

トラブルにあった際は厚生労働省から運営を受託している第二東京弁護士会が相談窓口を用意しています。例えば、当初聞いていた契約内容と異なり報酬が少なかったり、指示通りの仕事をしたにも関わらずやり直しを命じられたりなど、少しでも納得できない場合は以下「フリーランス・トラブル110番」から相談をしてみてください。匿名でも相談することができます。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめます。

・フリーランスとして働く人が増えている現状がある
・企業との取引の際、フリーランスの立場が弱くならないよう保護
・仕事を委託する企業側も従業員と同様にハラスメントなどに注意

今後も私たちの働き方は大きく変わっていくでしょう。企業側から見た場合、正社員として優秀な従業員を雇用する良さとフリーランスに外注する良さ、それぞれを融合することでさらなる発展も期待できます。今の時代を象徴するような新しい法律です。しっかりとその内容を把握しておいてください。

フリーランス新法に関するQ&A

Q:フリーランス新法における発注する会社側はどのように定義づけされているのでしょうか?

A:業務を発注する側を「特定業務委託事業者」といいます。従業員を使用して組織で事業を行う法人または個人事業主が含まれます。よって必ずしも会社(法人)のみが該当するのではなく、個人事業主でも「特定業務委託事業者」に該当し、フリーランスを保護する立場になりえます。

Q:会社に勤務している立場でありながら副業をしています。そして、この副業は別の会社から業務を受託しています。この場合、フリーランス新法の対象になりますか?

A:会社員の副業であっても1人で他の会社と取引をし、仕事を受託している場合はフリーランス新法の対象となります。

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