「なーんもない!でも、飽きてない!」知床に魅せられた唯一の外国人ガイド 地域に欠かせない存在に
国立公園に指定されてから60周年を迎えた知床。
2025年には、世界遺産の登録20周年も控えています。
観光客としてではなく、知床に移住し、ツアーガイドをする台湾出身の女性がいます。
彼女が発信する知床の魅力の伝え方とは…
【連載】こう生きたっていい
いろいろな生き方・働き方をしている北海道の女性へのインタビューを通して、自分らしく生きるヒントを見つけるための連載です。
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きれいな海に、迫力のある山。
さらには、野生のヒグマにエゾシカ。
北海道の魅力をすべて集めたような、壮大な自然が広がる、道東の知床。
そんな知床に魅せられた外国人の1人。
台湾出身の藍屏芳(らん・ぴんふぁん)さんです。
藍さんは2015年の2月、ワーキングホリデー制度を利用して、台湾から3000キロ以上離れた知床にやってきました。
きっかけは、台湾のテレビで見た「流氷ウォークを紹介する番組」でした。
「『何これ!』と思って、こんな台湾に近い日本にもこんなアクティブがあるんだ、ヨーロッパまで行かなくてもいいんだと初めて知って、勉強に行ってみようと思って」
そして、いざ来てみると…
「なんもなーい、誰も歩いてませーん」「寒くて、次の日吹雪で」
「人生でそんな寒いところで住めるかってね、台湾、暑いから」
そう話す藍さん。でも、こう笑います。
「で、今まだここにいる…で、まだ飽きてません!」
台湾の2月の平均気温は20℃前後、知床との気温差は約25℃もあります。
それでも藍さんは、知床の自然はもちろん、なにより人の温かさに惚れ込み、2020年には地元の漁師と結婚しました。
「不便さはあるけど、本当に最初に来たときも、今もずっとすごく優しい。地元の人たちが、すごく優しくて」
今は永住権を取得し、知床に定住していて、知床には欠かせない存在です。
地元の人に聞いてみると…
「大活躍!知床と言えば、藍ちゃん!」
「本当にすごく貴重な存在」
そんな声が聞こえてきます。
中国語を話せる唯一のガイド
道東の知床に移住した台湾出身の藍屏芳(らん・ぴんふぁん)さん。
仕事は自然ツアーのガイド。
知床では「唯一の外国人ガイド」で、知床の観光に貢献しています。
英語も堪能な藍さん。
この日は、台湾から来た親子と香港から来た夫婦がツアーに参加。
「クマが出たときに、まずは音を出して自分の存在をクマに知らせる。万が一クマが出たときは、私の指示に従って叫んだり走ったりしないように。クマの位置を確認して後ずさりをし、距離を取りましょう」
この日は5月上旬で、知床は雪も残りながら桜も見られる贅沢な時期。
ツアー参加者も知床の自然に興味津々です。
藍さんのガイドが続きます。
「倒れた木にはこけが生えている。種が飛んできて新しい命が生まれる。この木には栄養がたくさん含まれていて、その栄養で新しい命が成長する。日本語では“倒木更新”といいます」
でも…ツアーも後半になると景色そっちのけで盛り上がることも。
台湾と香港、政治情勢や住むところは違えど言葉に壁がないので、仲良くなれるのも藍さんのツアーの魅力です。
参加者からは「知床で中国語を話せるのは、藍ちゃんだけ。他は英語のガイドさんですから。だから藍ちゃんしかいない」との声も。
英語圏以外の人にも知床の魅力を伝えてくれる、藍さんのガイドに皆さん大満足の様子。
知床と海外の橋渡しに
「今のここ、プユニ岬のところですね。結構私ここが好きで、仕事終わった後にもよく夕陽を見に来て。夏も冬も結構マチの方も見れるし、海の方も見れるし」
新型コロナウイルスなどの影響もあり、大きな打撃を受けている、知床の観光。
「自分のできることをやるしかないかなと思う。SNSの発信ももちろん、自分のツアーでお客さんに『知床で楽しかった』とか、それを持って欲しくて」
そんな中でも、藍さんは進み続けました。
「遠いですよね。知床まで。知床に、旅行するチャンスをくれるのもすごく大事だと思います」
知床と海外の重要な橋渡し役を担う、藍さん。
「ここにせっかく住んでいて、ずっと仕事をするともったいないと思って。自分の時間と仕事の時間をちゃんとバランスをとって、もっとここの生活を楽しむことが、ずっとの目標」
藍さんは、これからも言葉の壁を乗り越え、知床の自然と共に生きていきます。
【連載】こう生きたっていい
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年6月3日)の情報に基づきます。