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半年で東大合格を実現した「質の高い勉強法」って?カリス 東大AI博士の勉強哲学

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半年で東大合格を実現した「質の高い勉強法」って?カリス 東大AI博士の勉強哲学

韓国で生まれ育ち、16歳にしてたった半年の受験勉強で東大に合格した「天才」をご存じでしょうか? 今回はそんな非凡な経験をお持ちのカリス 東大AI博士さんにお話を伺いました。前編では、16歳で東大を目指した理由と、独自の勉強法や勉強哲学について迫ります。

韓国の16歳が半年の勉強で東大に合格できた理由

――カリスさんは16歳の時に韓国から日本に来て東京大学に進学された経歴をお持ちです。なぜ16歳にして海外である日本の大学に進学しようと思ったのでしょうか?

韓国ではいじめや虐待をずっと受けていて、みじめな思いばかりしていました。なので、韓国にいても幸せになれるイメージが全然湧かなかった。だったら、海外に行った方が自分らしく生きれるのではと思いました。こんなどん底の人生を変えるには海外のトップ大学に行くしかない、もう成り上がるしかないと思ったんですね。

15年前の当時は、技術立国というと、アメリカか日本の大学が思い浮かびました。アメリカへの進学を検討した時に、大学に受かるためには成績だけでなく、AO入試のように課外活動なども必要になると知りました。

たとえば、アメリカだと「クラス委員長やってました」とか「コンテストの賞をもらいました」といった活動も加味された上で合否が決まります。だから、自分が成績トップ、あるいはトップに近い点数を取れたとしても、ハーバード大学とかプリンストン大学に合格するかというと、そういうわけではないです。

高校すら行ってない自分は課外活動がゼロなので、アメリカのトップ大学に進学するのは無理でしょう。それなら、日本にした方がいいのかなって。日本に行くにしても結局トップを目指すしかないので、東大を目指そうと思いました。

アメリカと違って成績だけで決まるのであれば、ぶっちゃけ100回受けたとして1回も落ちることはないだろうと思っていました。

――100回受けたとしても、100回受かる自信があったと。

そうですね。というのも、気持ちで負けてしまったら、勝負する前に結果はすでについてしまいますから、「自分になら余裕」だと思い込んでいました。 なのに、受験生というか、日本人の若者は全然覇気がないなと思う。僕はハッタリばかりかまして生きてきたけど、若者がハッタリをかまさないような国って、ぶっちゃけもう終わってるんじゃないかなと。僕はハッタリは嘘じゃなくて「覚悟の表れ」だと思っています。

――日本トップの大学だから東京大学を選ばれたとおっしゃいましたが、受験するまでにはどのくらいの期間勉強されましたか?

半年ぐらい勉強して、東大に受かりました。

――16歳が半年の勉強で東大に受かったことがちょっと想像ができないのですが、勉強法を教えていただけますか?

まずは何も勉強してない状態で、過去問を全て確認しました。「入試ってこういうものだ」と把握するためです。

あとは、問題集を100冊ぐらい買って、科目ごとに2~3冊だけ残して、ほかは全部捨てて。 過去問を解くのに適してて、自分がうまくやれそうなものだけ残したという感じです。

その参考書の中でも「これは出る」「これは出ない」と徹底的に取捨選択をやって、出るものについては、「1億回受けても、1億回すぐ解けますよ」という状態まで完璧に仕上げて、ほかは全部捨てるというやり方をしました。

要は、 東大合格というゴールはすでにあるじゃないですか。だったら、そのためにやるべきことだけをやって、やるべきでないことは一切やらない。 こういった「逆算的勉強法」があったからこそ、自分は最短経路を辿ることができたのかなと思います。

――まず中学生が高校生の勉強する内容を把握するのは、すごく時間がかかるんじゃないかなと思ったのですが、簡単なんでしょうか?

たしかに、最初に問題を解く時は何もわからないので、全然解けないんですね。だから正解率0%なわけですけど、 そういう状態に耐えるメンタリティがまず大事です。

今は何ひとつわからないけれど、いずれ自分はできるようになる。今は0点だけど、それが10点、20点、30点、50点になり、80点、90点、100点も取れるようになると。やっぱりそういう確信を持って取り組むのが大事なんじゃないかなと思ってます。

「勉強してる感」に浸るための長時間学習は無駄

――ズバリお聞きしますが、質の高い勉強法とはどういうものだと思いますか?

さっき話したように、合格から逆算して、勉強すべき量を「数分の一」に減らすことがまず必要です。 あとは作業ではなくて、ちゃんと勉強することが大事ですね。質の高い勉強、本当に学びのある勉強だけをやるのが大事です。僕は「勉強」と「作業」は全然違うものだと思っています。

負荷をかけることで新たな学びを得るものだけを、僕は「勉強」と呼んでいます。 具体的な知識の習得や理解度の向上に繋がるものだけが勉強でしょう。一方で、ルーチンワークをこなすだけの単なる復習、ノートの作成、単語帳作りといったものは「作業」にすぎません。

これは脳科学的にも正しくて、認知心理学によると、人間にはふたつの思考システムがあります。

ひとつ目は、作業に使う「直感的で怠惰なシステム」。深く考えずパッと判断するときに使うシステムです。ふたつ目は勉強に使う「逆算的で勤勉なシステム」。後者のシステムだけを極力使うようにしたのが、僕は良かったんじゃないかなと思っています。

ほとんどの受験生は「俺すげえ!」「私すごい頑張ってる!」みたいな「勉強してる感」に浸るためだけに、とりあえず長く机に向かっていますが、そういうのは正直時間の無駄なんじゃないかなって。

ノートや板書は無意味?

――ノートは基本的に取らないですか?

そうですね。結局ノートって、「参考書の劣化版」を作るだけじゃないですか。だったら時間の無駄なんじゃないかと。自分の理解度を確認するために自分専用のノートを作るのはわかりますけれど、「先生がなんか言ってるから、ノート取ります」あるいは「黒板に書かれたから、それをそのまま写します」って、意味がないです。そういうことは自分の身にならないので、勉強ではないと僕は思います。

時間を使って概念を自分の頭で考えてみて理解するとか、そもそも意味ない授業だったら内職したりとか、の方がいいでしょう。

――勉強する環境としておすすめの場所はありますか?

インプットとするときと、アウトプットするときで違います。インプットをするときはノイズがあると集中しづらいし変なものまで覚えてしまうので、インプットをするとき、新しい概念を覚えたりとかするときはなるべく静かなところがいいかなと思います。自宅だったり、図書館だったり、そういうところが向いてるんじゃないかなと。

一方で、問題を解いたり模擬試験を受けたり、アウトプットするところは、本番で何か起きたとしてもうまく結果が出せるように、静かじゃなくてノイズがあるような、カフェだったり、ラウンジだったり、そういうところがいいんじゃないかなと思います。

――なるほど、ありがとうございます。実際にカリスさんが勉強していた時の1日のスケジュールをお聞きしたいです。

こんな感じで勉強してました。

寝るかご飯を食べるか以外、ずっと勉強してるようなスケジュールでしたね。もちろん受験生の時だけで、いつもこうだったわけじゃないです。

僕はいっぱい寝るのは大事だと思っているので、毎日7時間半~8時間は寝てました。脳は寝る時に「想起学習」することもわかっているので暗記の効率もよくなりますし、身体が回復した方が新しい知識も取り入れられるようになります。睡眠を削って勉強、たとえば3~4時間だけ寝てあとはずっと勉強、というのはすごく効率が悪いと僕は思っています。

食事も、朝食をちゃんと摂った方が効率がいいという研究がいっぱいあるので、ちゃんとご飯も食べてましたね。あと面白いところとしては、寝る前に30分だけ必ず漫画を読むようにしていました。

やっぱり人間って、ずっと頑張ることはできない。東大に入るとか、日本の首相になるとか、そういう大きな目標に向かって頑張るにしても、半年とか、1年とか、何年とか、ずっと頑張り続けることは人間にはできないので、ある程度人参をぶら下げるのは大事かなと思います。

今日も一日ずっと頑張らないといけないけど、頑張りきったら、寝る前に少なくとも漫画ぐらいは読めるからと、僕は自分に鞭打って頑張ってましたね。

――ちなみに、何の漫画を読んでいましたか?

『魔法先生ネギま!』しか読んでなかったです。同じ漫画を数十回も読んでました。イチローさんが毎日カレーばかり食べていたことに近いかなと思います。新しい漫画を読むと、脳のリソースを使っちゃうんで、本当にただリラックスするために読んでました。

――カリスさんは若い頃からそうやって自分で考えたことを実行していたのでしょうか?

そうですね。僕はそんなにいい人生を歩んでないので、ひねくれ者なんです。だから「他の人がこうやってるから、こうやる」と思わず、自分の目で視て、自分の心で感じて、自分の思考で考えて、自分でレールを敷くのがとても大事かなと思ってます。勉強に限らず、自分がやってることには何の目的があるのかとずっと考えてます。

記憶を定着させる「想起学習」って?

――勉強法についてさらにお聞きします。カリスさんは、韓国語、日本語、英語の3か国語を操られると聞きましたが、どのように記憶力を向上させたのでしょうか?

これも先ほど話した「勤勉なシステム」を使うことが鍵だと思います。 怠惰なシステムでは大脳じゃなくて小脳を使うのですが、その場合は脳内で化学信号の伝達を伴うような短期記憶しか生じないので、学びは得られない。すぐに何かわかった気になっても、それが長続きしないことがわかっています。

一方で、勤勉なシステムを使って難しいことに意識的に繰り返し挑戦するときは、脳内で化学的変化だけではなくて、ニューロンの構造や遺伝子発現レベルで脳の変化が起きて、短期記憶から長期記憶に移行するので、人は学びを得て成長します。自分ができることを延々と繰り返しても何の意味もないので、作業をやってるだけだと、いつまで経っても記憶が定着することはないのです。

――短期記憶から徐々に長期記憶に移行していくというのは、具体的にどのようにできますか?

3つの暗記法があります。

・勉強する前に模擬試験を行う

・間隔を空けて練習と模擬試験を繰り返す

・質問形式でメモする

一つずつ説明したいと思います。まず勉強する前に模擬試験を行う。模擬試験を行うと、今後何を勉強すればいいのかという優先度が、頭の中で認識できるようになるからです。後で実際に概念の勉強をする時に「模擬試験にあったあれのことだな」と認識できます。

一度間違えた記憶があると、暗記に必要な労力は大幅に減ります。間違えたものほど長く、強く記憶できるということは脳科学では「ハイパーコレクション」と呼ばれています。たとえば「オーストラリアの首都は?」という問題があって、間違えて「シドニー」と答えてしまった記憶があるのであれば、実際の答えの「キャンベラ」もずっと忘れずに覚えられます。

普通の人は、問題を解けなかったらすぐ答えや解き方を見る。そうじゃなくて、自分の頭でちゃんと考えてみて間違えるべきです。要は恥をかく経験をして、悔しかった感情が残ることでずっと覚えられるようになる。悩まないと人間は成長できないと思います。

さらに間隔をあけて練習と模擬試験を繰り返す。人間は、忘れそうな頃に積極的に思い出す想起学習をすると、短期記憶が長期記憶に移行することがわかっています。

――想起学習というのは?

人は一度覚えたことでも、どんどん忘れていくじゃないですか。覚えたその時はもちろん100%覚えてるけど、そこからどんどん忘れていって、「今は20%」「今は10%」というふうになって、最後には0%になると。その忘れていく過程でもう1回思い出すことを想起学習と言います。少し忘れてから、もう1回理解度を100%にして、それを繰り返していくと忘れるのが遅くなっていきます。

勉強の場合も、一度覚えてもすぐに忘れてしまうので、なるべく早くもう1回勉強する必要があるので2~3日後にもう1回勉強する。そうすると、ある程度の記憶が残るようになるんです。そこから1週間、 1ヶ月という風に徐々に間隔を伸ばしていけば、完全に長期記憶に定着して、思い出せるようになります。

これもどれぐらい記憶を保持したいのかによって間隔が変わりますが、思い出すべきタイミングでアラートしてくれるようなアプリを使うのもいいと思います。アメリカの大学生はよく使ってますね。

――三つ目の、質問形式でメモすることについても教えてください。

授業や自習中にわからないことが出てきた時に、それを単純に「AはBだ(例:縄文時代の人の平均身長は低く、男158センチ、女149センチだ)」という風にメモをするんじゃなくて、質問形式で書く。例えば「縄文時代の人の平均身長は?」みたいな感じに質問を書いて、それに対して、「男158センチ、女149センチ」と書く。こういう風に質問形式で覚えると、間違えるたびに記憶に残りやすくなりますね。

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