《市民病院医療事故多発》脳外科医と科長の主張 真っ向対立
赤穂市民病院に在任中、上司からパワハラや暴力を受けたほか専門医試験の受験を妨害されたなどとして、脳神経外科の男性医師が科長と当時の院長、赤穂市に損害賠償を求めている裁判の証人尋問が4日、神戸地裁姫路支部であり、原告と被告双方が証言して結審した。判決は9月17日に言い渡される予定。
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両者の言い分真っ向対立
この日の尋問で、男性医師は「(科長から)パワハラや暴力を再三にわたって受けていた」「胸の正面を平手で思いっきり押されて階段から転げ落ちた」「(専門医試験の)受験要件を満たしていたのに(出願に必要な)サインをしてくれなかった」などと主張。一方、上司の科長は「あまりにひどい暴言を言われたので、一度だけ胸ぐらをつかんでしまったことがあるが、それ以外にはない」「カンファレンスルームの鍵を返す、返さないになって手が当たったが押してはいない。自ら誤って階段から落ちた」「手術実績の症例数に虚偽があったのでサインできなかった」などと反論し、両者の言い分は真っ向から対立した。
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当時の院長証言「技量未熟で手術が安全に行われる状況なかった」
また、当時の院長も証言に立ち、「事務局長(当時)に調査させたが、パワハラはなかった。むしろ、科長に対する男性医師の言動が高圧的だった」「階段転落は両者の言い分が異なっており、処分を見送った」などと陳述。「(男性医師は)手術の技量が未熟で、科長の指導に従わないなど、手術が安全に行われる状況ではなかった」とも証言した。
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男性医師「休職中のバイト まったくない」
尋問では、男性医師の勤務状況についても応酬。「遅刻が多かった。カンファレンスルームにこもり、病棟からの呼び出しに対応しないことも非常に多かった。休職中に他の病院にアルバイトに行っていた」などとの科長の証言に対し、男性医師は「遅刻はゼロではないが、業務に差し支えることはなかった。病棟に行くことが無理な場合もある。カンファレンスルームで事務作業などをすることはあったが、こもりっきりはない。(休職中のアルバイトは)まったくない」と否定した。
男性医師は2019年7月から21年8月まで赤穂市民病院に在籍。着任から半年間で8件の手術で医療事故を起こしたとして、院長から手術禁止を言い渡された。このうち、病院が医療過誤を認めた症例をめぐっては、病院と連帯して約8900万円を患者と家族に支払うよう命じた同地裁支部判決が先月31日付けで確定。神戸地検姫路支部により業務上過失傷害罪で起訴されている。