クリスマスがさらに楽しみに! プレゼントに喜ばれる「幼児向け絵本」3冊とは?[絵本の専門家が選出]
「幼児へのクリスマスプレゼント」に贈りたい絵本として、『クリスマスのおとしもの』『サンタクロースと小人たち』『クリスマスツリーをかざろう』を紹介。絵本コーディネーター・東條知美氏が厳選。連載「子どもの本のプロが選ぶギフト絵本」第6回。
▶画像【脳の新事実】親子は顔だけじゃなく脳も似ている!絵本は、子どもへの贈りものに最適なアイテム。とはいえ、数ある絵本の中から年齢や好み、贈るシーンに合った1冊を選ぶのは、なかなか難しいもの。連載企画【子どもの本のプロが選ぶギフト絵本】では、絵本の専門家が、子どもにも親にも喜ばれる贈り物にふさわしい絵本をセレクト。
第6回は、絵本コーディネーターの東條知美(とうじょう・ともみ)さんが、「幼児へのクリスマスプレゼント」におすすめの絵本を紹介します。
“初めてのクリスマス絵本”にぴったりの1冊とは
赤ちゃんにとって、クリスマスはまだよくわからないもの。それが、保育園や幼稚園に通う年齢になると、ご家庭や園でのイベントを通して、あるいは歌や絵本に親しむ中で、クリスマスは「楽しいもの」「待ち遠しい日」と印象づけられるようになります。
最初にご紹介する『クリスマスのおとしもの』(講談社)は、そんな年頃のお子さんが“初めて出会うクリスマスの絵本”としておすすめの1冊です。
『クリスマスのおとしもの』(作:えがしらみちこ/講談社)
表紙の真ん中には、オーナメントがきらめくクリスマスツリー。雪だるまや天使も描かれています。こんなにかわいらしい絵本をプレゼントされたら、お子さんは笑顔にならずにはいられませんよね。
物語の主人公は、小さな子ども。クマのぬいぐるみをおんぶして、子犬と一緒に外を歩いていると“おとしもの”を見つけます。最初は青いバケツです。
「おとしもの おとしもの あおい バケツは だれのかな?」
声をあげて持ち主を探していると、「はーい ぼくのだよ」。手袋をつけた木の枝が一本見えました。さて、これはいったい誰の手でしょう?
ページをめくると……そこには雪だるまさん!
子どもが“おとしもの”を拾い、持ち主を探していると、持ち主の姿が一部分だけチラリ。ページをめくると、持ち主の全体像があらわれる。こうした一連の流れが、相手を変えて繰り返されます。急いでページをめくらずに、誰が落としたのか、親子でシンキングタイム! 一緒に推理すると楽しいと思います。
そうして主人公が歩き進んでいくうち、景色は少しずつ変わり、一緒に歩くお友達も増えていきます。「よいしょ よいしょ」と、みんなでもみの木を飾りつけていると、あたりはすっかり日が暮れていました。
さて、最後に拾った“おとしもの”は、赤い帽子。このあと、どんな素敵なサプライズが待ち受けていると思いますか? 親子で一緒にワクワクしながらページをめくる、素敵な時間までプレゼントできると思います。絵本の醍醐味を味わえる夢いっぱいのクリスマス絵本です。
サンタクロースと小人の1年に密着!
次にご紹介するのは、『サンタクロースと小人たち』(偕成社)。昔も今も、子どもたちに夢を与えてくれるサンタクロース。わが家には50冊ほどサンタクロースを描いた絵本があるのですが、中でも私のお気に入りの1冊です。
『サンタクロースと小人たち』(作:マウリ゠クンナス、訳:いながきみはる/偕成社)
大いなる謎“サンタクロースの日常”をドキュメンタリータッチに描き出すこの絵本。サンタさんはフィンランドの遠い北のはずれにある村に、妻と、何百人もの小人やトナカイと一緒に暮らしています。
小人たちは、世界中の子どもたちへプレゼントを用意するのが仕事。機械の熟練工や画家、布を織る人など、あらゆる職人がいるのだとか。お願いしたものを何でもそろえられるのは、そういうわけだったのですね!
小人たちがそれぞれの工場で仕事を分担し、働くようすも細やかに描かれています。夏休みだって、もちろん取ります。休むこと、遊ぶことは、とても大事なのです。ちなみに、小人の子どもたちは学校に通っています。お勉強も、やはりとても大事です。
さあ、いよいよクリスマスイブが近づいてきました。プレゼントを用意する小人たちは、最終チェックも怠りません。
「どの子にも、サンタクロースから プレゼントが とどきます。サンタは、けっして だれのことも わすれたりしません。」
大仕事を終えたサンタさん、小人たち、トナカイのようすも紹介されています。小人たちはみんな、サウナで長旅の疲れを取るのだとか。いかにもフィンランドらしい描写ですね。
サンタクロースの1年を、私生活も含めて、ここまで詳細に楽しく描いた絵本はほかにないと思います。お子さんが読めば、クリスマスを待つ楽しみが倍増するのではないでしょうか。
漢字もあり文字の量も多めですので、小さいお子さんには、最初は一緒に読んであげるのがおすすめです。お子さんが大きくなってからも、長く楽しんでいただける1冊ですよ。
幸せに満たされるクリスマスツリーの“指南書”
最後にご紹介するのは、『クリスマスツリーをかざろう』(BL出版)。表紙から裏表紙まで赤いリボンがぐるりと描かれていて、このままプレゼントとして渡せるくらい素敵なビジュアルです。私はあたたかくてどこか懐かしさを感じるこの絵が大好きで、クリスマスが近づくと、まずはこの絵本を飾って気分を盛り上げます。
『クリスマスツリーをかざろう』(文:パトリシア・トート、絵:ジャーヴィス、訳:なかがわちひろ/BL出版)
こちらの絵本は、タイトルどおり、クリスマスツリーを完成させるための指南書です。なんて贅沢で愛らしい指南書なのでしょうか。
シーンは、家族が生の木を調達しに出かけるところから始まります。モミ、マツ、トウヒ、いろいろな木の中から“わが家の1本”を選びます。お気に入りの木を見つけたら、車の屋根にのせて帰りましょう。
家へ戻ったら、部屋を片付けなくっちゃ。木はツリースタンドに立てるため、けずり直す必要もあります。さあ、いよいよ飾りつけが始まりますよ。
友達を呼んで一緒に、豆電球のコードを巻き付けたり、オーナメントを吊るしたり、キラキラのモールをふわりとかけたり。木のてっぺんには星を飾りましょうか? それともリボンにする?
最後は、いよいよクライマックス。部屋の電気を消して真っ暗にしたら、「せーの!」で、豆電球の明かりをつけるのです。
本書に記されているのは、内容的にはそれきりなのですが、とにもかくにも絵が素晴らしい! ドラマティックな山場もちゃんと用意されています。クリスマスツリーの飾り方をわかりやすく指南する実用書でありながら、同時に、お子さんやご家族がクリスマスの幸せに満たされる絵本なのです。
「だれもが きっと クリスマスの まほうに かかることでしょう。」
ぜひ、お手にとってお確かめくださいね。
私自身、毎年クリスマスの前になると、親しい友人のお子さんやお孫さんへ贈る絵本を選ぶのが恒例となっています。絵と言葉で紡がれた美しい世界、クリスマスの優しさをそっと託して──。
絵本に内包された大切なメッセージは、けっして古びることがありません。クリスマスプレゼントに絵本、おすすめですよ。
取材・文/星野早百合