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「岡山県古代吉備文化財センター」が開所40周年!

岡山観光WEB

岡山県においての、国・県の公共事業に関する埋蔵文化財の調査、発掘などを一手に引き受けているのが今年で開所40周年を迎える「岡山県古代吉備文化財センター」。 今回は、古墳マニアの石工穴太衆さん、まぁさん夫妻と、和文化子供大使の桃太郎(吉備津彦)君と一緒に訪問。半日で満喫できる古代吉備ミニツアーも楽しんできました。

「岡山県古代吉備文化財センター」ってどんなところ?

岡山市北区、国宝の拝殿・本殿のある「吉備津神社」裏の山中にある「岡山県古代吉備文化財センター」。ここは、岡山県内における国、県の公共事業に関する埋蔵文化財を担当(市町村、民間事業に関する埋蔵文化財はそれぞれの各自治体が担当)し、調査、研究、保存、収蔵、普及、啓発などの業務を行う県の施設です。昭和59年(1984)に開所され、今年で40周年!いったいどんなところで、どんな仕事をしているのでしょうか。順番にみていきましょう。

①埋蔵文化財の調査・研究

県内各地には埋蔵文化財が数多く残されています。埋蔵文化財とは、土の中や水中などに埋もれている文化財のことで、昔の人の住居や集落などの生活の跡、古墳、貝塚、城跡など多種多様なものがあります。時代的にも原始から古代・中世・近世近代に至る幅広いもので、貴重な歴史資産です。これらは国民共有の貴重な財産であり、後世に伝えていかなければなりません 。そのため、「岡山県古代吉備文化財センター」では、国や県の事業が行われる前(具体的には鉄道や高速道路・国道・県道などの新設や改修工事、その他の様々な公共工事により埋蔵文化財が失われる可能性がある場合)に、関連した遺跡の調査を行っています。

現在発掘中!備中国分尼寺跡

総社市にある「備中国分尼寺跡」の発掘調査(2024年6月3日~10月31日)がちょうど行われているということで行ってみました。調査担当の松尾さんにお話をお聞きすることができました。
ここは国指定の史跡なので、開発に伴う発掘調査と違い遺跡を今後保存して活用し残すための発掘調査のため、特に気を遣う必要があるそうです。「備中国分尼寺跡」の寺域内は今まで発掘されたことがなく、2023年度が初めての発掘。2024年度はお寺の中心部の金堂跡等を発掘しているということです。調査が始まったばっかりだったのですが、多数の瓦や基壇と思われる部分などが出ていました。邪魔にならないよう作業エリアの外から見学することが可能です。9月中旬~下旬頃には現地説明会を予定しているということですので、どんな発掘成果が出るのかとても楽しみですね。

②出土品の調査

発掘すると当然のように様々な遺物が出土します。その出土品の土などを水洗いしてきれいに掃除し、大きさや形などを1点1点詳しく調べていきます。土器などの破片はパズルのように組み合わせ復元していきます。膨大な量が出土するので気の遠くなるような作業です。

③遺跡を記録に残す

そしてこれが一番大事。遺跡を詳しい記録に残すことです。 遺跡で見つかった遺構を平面や断面など図面に起こして記録します。出土品も一つ一つ写真に残し、図面も作成します。そしてこれらをまとめて「発掘調査報告書」を刊行し、発掘調査の成果が保存されるのです。「岡山県古代吉備文化財センター」では、今まで269冊の発掘調査報告書を刊行しています。これらは図書館などで見ることができます。

④出土品の保存・収蔵

出土品の中には金属製や木製の、遺跡から取り上げると劣化が進んでいく遺物もあります。これらの遺物は、薬品に浸けて劣化の進行を抑えたり、樹脂などを染み込ませて強化する保存処理を行っています。そして出土した遺物は収蔵庫に保管されます。現在なんと5万箱もの収蔵物があるそうです。

⑤調査結果の公表と活用

「岡山県古代吉備文化財センター」での発掘成果は発掘調査報告書などで公表されていますが、そのほかにも発掘期間中に現地で発掘担当の職員さんが現場を見ながら調査成果を詳しく説明してくれる現地説明会も開催されています。説明会は毎回熱心な歴史ファンの方々が来場する大好評のイベントです。他に年2回、所報を刊行したり、調査成果を紹介するパンフレットなども作成して配布されています。(写真は2019年に行われた倉敷市の南山城跡発掘調査現地説明会の様子)

出土品が見られる入場無料の展示室

本館の1階には展示室があります。誰でも入場無料で入れ、「岡山県古代吉備文化財センター」が行った発掘調査の出土品を時代、テーマごとに展示しているので、岡山県の歴史を概観することができます。企画展なども行われており、今は開所40周年記念の「企画展1」が開催されています。
(2・5・6・7枚目の写真は「岡山県古代吉備文化財センター」提供)

【岡山県古代吉備文化財センター】
所在地:岡山県岡山市北区西花尻1325-3
TEL:086-293-3211
開館時間:9:00~17:00
※土・日曜日・祝日も開館(臨時休館あり)
駐車場:あり

近年話題になった事業①「南山城」全面発掘

近年話題になった事業を紹介します。
まずは、全国の山城マニアが沸いた南山城全面発掘!倉敷市の高梁川と小田川の合流地点にある「南山城跡」は、国土交通省の小田川合流点付替え事業に伴い計画地の中心部にあり、山ごと消滅することになったため発掘調査(2017年4月~2019年10月)が行われました。山城の全面発掘というのは極めて珍しい事例で、戦国時代当時の山城のありのままの姿、景観が現代に蘇るということもあり、全国のお城ファンに注目され多くの歴史ファン・お城マニアが訪れました。

消えた山城!

まだ記憶に新しい西日本豪雨災害。小田川の洪水を防ぐための付替え工事でしたが、奇しくも工事途中に倉敷市真備町や矢掛町に甚大な被害をもたらしました。この工事は今年(2024年)完成し、真備町の復興も徐々に進んできています。工事の為消滅してしまった南山城跡ですが、埋蔵文化財としてしっかり発掘され記録として残されています。

近年話題になった事業②岡山のお城バイブル編纂

もう一つは、岡山のお城のバイブル「岡山県中世城館跡総合調査報告書」の編纂です。
これは文化庁の補助事業として進められた中世城館跡の分布調査の一環で、岡山県内の城館跡の保存研究に資することを目的に、調査に6年、報告書作成に1年、計7年の歳月をかけて実施された総合調査の報告書です。全国的に見ても岡山県内の城館の数はとても多く、分かっているだけでも1100ヵ所以上。担当した職員は延べ28名。これらの全ての城館を文献から現地踏査までを含め調査したもので、1423城が調査され、1126城が掲載されています。発刊されてさほど時間も経っていませんが、岡山の山城を知る上でのバイブル的な存在になっています。報告書の配布は終了していますが、「岡山県古代吉備文化財センター」公式サイトのデジタル図書室で誰でも閲覧することができます。
岡山には素敵な山城がいっぱいあります!この報告書を頼りにぜひ、気になる山城を訪ねに来てください。

近場で古代吉備ミニツアーをやってみた

「岡山県古代吉備文化財センター」に行ったついでに、近くで吉備路の古代吉備ミニツアーをやってみました。現在発掘中の「備中国分尼寺跡」、つい先日国指定史跡エリアが広がったばかりの「こうもり塚古墳」、そして全国第4位の規模を誇る「造山古墳」とビジターセンター、そして吉備の国のストーンサークル「楯築遺跡」を回ってきました。約半日のコースです。

「備中国分尼寺跡」では2024年10月31日まで発掘調査中の様子を見ることができるでしょう。「こうもり塚古墳」では石室の内部まで入れる貴重な体験。「造山古墳」では規模の大きさにびっくり。吉備のパワースポット「楯築遺跡」では国の重要文化財に指定されている旋帯文石の実物をガラス越しに見ることができます。半日でお腹いっぱいになった古代吉備ミニツアーでした。

その他のイベントも開催!

「岡山県古代吉備文化財センター」では、その他にも埋蔵文化財に対する理解や保護意識の向上のためのイベントも行っています。毎年10月には「岡山県総合グラウンド」内にある津島やよい広場で古代体験イベント「津島遺跡やよいまつり」や、「大地からの便り」という県下で話題となった発掘調査成果の報告会も開催しています。開催間近のものでは、2024年7月30日(火)~8月2日(金)に「夏休み企画☆ワクワク古代体験!」が行われる予定です。勾玉づくりや鏡づくりの体験のほか(体験の予約は終了)、遺跡の紹介・土器の展示などがあり、さらに今回は開所40周年記念特別企画として、古代の勾玉に使われた石の標本も限定展示されるということです。夏休みの宿題にはぴったりなイベントですね。

おしまいに

今回は岡山県の埋蔵文化財行政を担う「岡山県古代吉備文化財センター」を訪ね、岡山県の歴史と文化を良く知ることができました。吉備の国岡山は古代史ファンにとっては重要な遺跡もたくさんあり、とても楽しめるエリアでした。吉備の古代歴史の旅を楽しみに、ぜひ岡山に来てください。

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