美容室を襲う“三重苦” 倒産件数が過去最多を大幅更新 生き残りの方法は?
■美容室も美容師も増加傾向 前年から減少は全国1道5県のみ
美容室は静岡県を含めて全国的に増加傾向にある。一方、倒産も増えており、昨年は過去最多を大幅に更新した。経営を難しくする“三重苦”が影響しているという。
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厚生労働省によると、昨年3月時点で全国にある美容室の数は27万4070件で、前年度から4181件(1.5%)増加した。美容師は7958人増えて57万9768人と過去最多を更新した。
静岡県の美容室は8925件で122件増えている。美容師の数も前年度より152人多い1万6778人だった。全国で美容室と美容師がともに減少したのは、北海道、青森県、山形県、福島県、徳島県、佐賀県の1道5県しかない。
全体としては美容室の数が増えている一方、倒産件数も増加している。民間の調査会社・帝国データバンクによると、今年度は2月までに全国で197件が倒産。過去最多だった2023年度の156件を大幅に更新するペースで推移している。
■“三重苦”で厳しい経営 家計の節約志向も逆風
美容室は全体の約3割が赤字で、厳しい経営を強いられているという。帝国データバンクが倒産件数増加の要因に挙げるのが、人手不足、コスト高、同業者の競争激化の「三重苦」だ。
特にシャンプーをはじめとする美容資材は円安も重なって値上げに歯止めがかからない。市販のヘアケア用品でも5年間で約15%も価格が上昇している。さらに、スキルや集客力の高い美容師を引き留めるために給与水準が上がり、経営者にとっては人件費の負担が大きくなっている。
また、物価高騰による家計の節約志向も逆風となっている。事業者からは「パーマなど高単価のメニューが厳しい」という声が上がっているという。都市部では顧客獲得のために割引きクーポンを発券し、実質的な値下げ競争も激化。人件費の上昇に見合うサービス料金の引き上げが難しい現状があるという。
美容室では眉毛サロンやヘッドスパメニューなど、施術メニューに新たなサービスを導入することでリピーター客の定着を図り、収益力を改善させる動きも進んできた。帝国データバンクは「プレミアムサービスの提供など価格戦略の見直しや、顧客データに基づくマーケティングといったデジタル技術の活用などが今後の美容室経営に求められる重要なテーマとなる」と分析している。
(SHIZUOKA Life編集部)