京都『フレンドフーズ』~錦市場の老舗の暖簾も継承。「ほんまもん」の味を伝える唯一無二のスーパー~
京都の閑静な住宅地に店を構える『フレンドフーズ』には、地元のみならず近県からもお客さんが訪れる。産地や製造工程も見極めて、嘘やごまかしのない商品をセレクト。3万点にも上る商品数は圧巻で、老舗総菜店の暖簾も継承するなど、「ほんまもん」のおいしさを伝えている。
今回のゴー!ゴー!
『フレンドフーズ』(京都府京都市)
伝統を重んじる京都。その一方で、2022年の総務省の家計調査ではパンの消費額・消費量とも日本一や、おしゃれなイタリアンの名店の多さなど、「新しもん好き」の一面もまた、京都という街の魅力です。
『フレンドフーズ』もまさにそんなスーパーマーケット。「ほんまもん」を求める、3代目の藤田俊社長。京都のみならず、全国の良品がそろうと定評がある一方で、コロナ禍には観光客が減り苦戦する地元の飲食店のお弁当や老舗の味を置くことで、応援し続けました。
実はその渦中、この連載で同店を一度紹介済みです。そのとき、こんな一文で締めくくりました。
「さらにいま、廃業した京都の老舗総菜店の暖簾とスタッフの一部を預かり、失われた老舗の味を復活させる計画が進行中!」
今回はこの続きがどうなったか、お伝えしましょう。
その老舗総菜店は京の台所・錦市場で135年もの間、地元の人々に愛されてきた「井上佃煮店」。4代目店主の梅村猛さんにとっては、10代から修業を積み、40代で継いだ店。百貨店に支店を出すなど順風満帆でした。
しかし、60代になった頃から「少しゆっくりしたい」と考え、店じまいを準備。2019年12月、京都じゅうに惜しまれながら、店は歴史の幕を閉じたのです。
井上の味を惜しんだ京都人の一人が、『フレンドフーズ』の藤田社長でした。
「井上の万願寺唐辛子昆布は毎回、家族と取り合い」という社長、店の空いていたスペースで『井上佃煮店』の復活を提案します。「どこでやっても井上は井上。『フレンドフーズ』の井上でもないし、錦市場に戻ってもいいから」と、藤田社長の情熱にこたえるように2020年10月、ここで井上が復活。
現在は、梅村さんの娘・美都(みさと)さんが「伝統の味を引き継ぎたい」と一緒に『フレンドフーズ』内で働いています。新しい事業継承の形で守る伝統の味をぜひ!
ここでしか買えない。フレンドフーズの味
賞なども獲得し注目される、自家製のお弁当やお総菜。数量限定「和牛飯 極(きわみ)」は出会えればラッキー! 「フレンド」をもじった「京都下鴨風漣堂(ふうれんどう)」はオリジナルブランド名。
人気の地元グルメ。お土産最適品も
創業100年は当たり前という、歴史の厚みが違う京都の老舗。そんな伝統の味もいいけれど、千年の都で新しい息吹も次々誕生中です。もちろん京都人のお眼鏡にかなう高品質。
スイーツに注目!
卵、牛乳、生クリーム、砂糖、バニラビーンズで作る「下鴨ぷりん」350円をはじめ、焼き菓子も手間隙かけて安心素材で製造。スイーツ店のような棚は見逃せません。パティスリー部門の山口さんたちが毎日、腕を振るいます。
動画「ご当地スーパー朝・昼・バン!」はこちら!
『フレンドフーズ』の詳細
フレンドフーズ
住所:京都府京都市左京区下鴨北園町10-6
/営業時間:10:00~21:00
/定休日:無/アクセス:市営地下鉄烏丸線北山駅から徒歩10分
取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2023年11月号より
菅原佳己
スーパーマーケット研究家
執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、全国のご当地スーパーを行脚。埋もれた日常食の発掘とその魅力を伝えている。著書に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)など。