廃プラのリサイクル情報を無償公開 オランダ発オープンソース「プレシャス・プラスチック」
誰でも始められるプラスチック再生のムーブメント
プラスチック汚染は、地球規模で深刻化している環境問題だ。とくに途上国ではリサイクルインフラが不十分で、ごみの多くが埋め立てられたり海洋に投棄されたりしている。
この状況を前に、「自分たちの手で何かできるはず」と立ち上がったのが、オランダ発のオープンソースプロジェクト「プレシャス・プラスチック(Precious Plastic)」だ。
プロジェクトの目的は明確だ。誰にでもプラスチックごみを再利用できる仕組みを世界中に広め、地域単位で実践可能にすること。
プレシャス・プラスチックの公式サイトでは、リサイクルマシンの設計図やチュートリアル、製品デザインなど、必要なリソースをすべて無償公開。誰でもリサイクルを始められる仕組みが整っている。
世界中に広がる プラ再利用の草の根ネットワーク
プレシャス・プラスチックは、現在では56ヶ国・2,000以上のプロジェクトが登録されるグローバルなコミュニティへと発展した。
実際に、プレシャス・プラスチックでは1年間で約1,400トンのプラスチックが再生されており、市民レベルの取り組みとしては注目に値する成果を上げている。
この活動は、単なるリサイクル技術の提供にとどまらない。地域のリサイクル拠点設立や製品販売、教育活動、さらにビジネス展開にまで広がっているのが特長だ。
たとえば、シンガポールの「Plastify」はペットボトル回収に加え、病院から出る医療廃棄物の再利用にも力を入れている。こうした動きが、地域経済や雇用の創出にもつながっているのだ。
再生プラスチックが広げる新しい暮らし
プレシャス・プラスチックは、大きな社会課題に対し、小さな行動で解決策を示すプロジェクトとして始まった。
しかし、現状は厳しい。リサイクルされるプラスチックは全体のわずか9%未満であるという。実際、リサイクルされなかったプラスチックの多くは埋め立てられたり、自然界に捨てられたりしており、環境に与える負荷は決して小さくない。海に流れつくプラスチックごみは、魚よりも多くなるといわれるほどだ。
プレシャス・プラスチックは、こうした現実に正面から向き合いながら、企業に頼るのではなく、一人ひとりが関われるリサイクルのかたちを提案しているのだ。
小さな一歩から、社会を動かす力に
国連環境計画(UNEP)の報告書によると、2017年には世界で年間約4億3,800万トンものプラスチックが生産された。だが、その多くがリサイクル困難な設計だ。
こうした現実のなかで、プレシャス・プラスチックは「一人でも始められる」ことにこそ希望を見出している。
必要なのは、情報へのアクセスと、ほんの少しの好奇心、そして行動力だ。プレシャス・プラスチックは英語での情報公開だが、興味のある人は一度サイトをのぞいてみてはどうだろう。
※参考
Make It Precious|Precious Plastic
DIY plastic recycling made easy: How a global community is fighting plastic pollution| euro news.
Global Plastics Outlook | OECD
Drowning In Plastics|UN Environment Programme