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ザ・タイマーズ「デイ・ドリーム・ビリーバー」バブル時代に生まれた究極のオルタナティブ

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1989年10月11日 ザ・タイマーズのシングル「デイ・ドリーム・ビリーバー」発売日

バンドブームに一石を投じた昭和の終わりの出来事


2025年は “昭和100年” だという。昭和元年から数えて100年。そして元号が平成に変わってから36年という月日が流れた。思えば昭和の終わり、1988年は日本の音楽シーンを俯瞰した上でも潮目だったように思える。同年4月にBOØWYが解散するも、ザ・ブルーハーツのサードシングル「TRAIN-TRAIN」は、オリコンシングルチャート5位を記録。アマチュアバンドのためのハウツー雑誌『バンドやろうぜ!』が創刊され、空前のバンドブームがピークに向かう。

しかし、このバンドブームの最中に別のベクトルで独自のアティテュードを貫いたアーティストたちがいた。前出のブルーハーツは1988年7月、「チェルノブイリ」を片面のみ収録のEP盤として再リリース。佐野元春は「警告どおり 計画どおり」を8月にリリース。そしてRCサクセションも発売中止の措置が取られていたアルバム『COVERS』を別レーベルからリリース。

原発をテーマにしたプロテストソングを複数の人気アーティストが軒並みリリースするというのは、ひたすら全員が一方向に向かって盛り上がってゆく傾向にあったバンドブームに一石を投じた大きな事件だった。しかし、ブルーハーツにしても佐野元春にしてもRCサクセションにしても、正論を振りかざしアジテートしていたわけではなかった。彼らは、“今こんなことが起こっているんだ” ということを自分の言葉で、自分のメロディで表現し、リスナーに考えるきっかけを与えたに過ぎない。

ただ、メジャーアーティストが、こぞってこのようなアクションを示したのは異例のことだった。折しも日本経済は上昇気流に乗り、日経平均株価は翌1989年にこれまでの史上最高値を記録した。物質的な豊かさを享受している人々にとって、彼らは究極のオルタナティブであった。同時代を生きた人ならわかると思うが、こういうアクションが “日本のロック” を築き上げてきたのだ。

元号が平成に変わった1989年にリリースされた普遍的なラブソング


こういった一連の流れの中で、最もアクティブに動いたのが忌野清志郎だった。RCサクセションとして『COVERS』をリリースした直後に反原発、反権力、反体制を全面に打ち出した覆面バンド、ザ・タイマーズを結成。同年8月には広島ピースコンサートにゲリラ出演して、日本最大級の反核ソングともいえる「LONG TIME AGO」を熱演。

しかし、何より興味深いのが、元号が昭和から平成に変わった1989年にリリースされた彼らのリードシングルが、普遍的なラブソングである「デイ・ドリーム・ビリーバー」だったことだ。同曲はリリースと時期を同じくして「スーパーカップ」(エースコックのカップラーメン)のCMとして全国のお茶の間に流れ、もはやモンキーズのカバーであるという説明も不要なタイマーズの代表曲になっていく。

「♪ずっと夢を見て 安心してた」と繰り返されるこの曲は、清志郎の育ての母について歌った歌だとされている。でもこの歌詞は、様々な場面や人に置き換えることのできる汎用性を兼ね備えている。それがこの曲に潜む普遍性だ。つまり、「♪ずっと夢を見て 安心してた」のが “時代” だったり “平和” だったりに置き換えることもできる。とすれば、ラディカルなタイマーズのアティテュードと何ら変わらないその本質を突いた歌だったと言えるだろう。

多くの人の心に花を咲かせている「デイ・ドリーム・ビリーバー」


「デイ・ドリーム・ビリーバー」はその後幾度もCMソングに使用され、今も誰もが口ずさめる国民的な1曲となっている。当時タイマーズがどんなアクションを起こしたバンドか知らない人も多い。それでも曲は独り歩きをして、聴き手はそれぞれの心象風景を描いているだろう。それが “名曲” たる所以だ。

リリースから35年という年月が流れた「デイ・ドリーム・ビリーバー」。 “まだ35年” なのか、”もう35年” なのか、時の長さを定義することはできない。だけど、昭和の終わり、あの頃の日本のロックシーンで起こった出来事は、見えない衝動に突き動かされた僕の人生の中でも大きな出来事だった。そして、この時生まれた「デイ・ドリーム・ビリーバー」は今も風化されることなく、多くの人の心に花を咲かせている。

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