馬が「とろんとした顔に」伝説の名馬も癒された全国唯一の「温泉」が北海道・函館に
皆さんが抱えている「なぜ?」「どうして?」を調査する、HBC「もんすけ調査隊」。
知られざる名湯が北海道函館市に隠されていました。
今回の依頼人は、札幌在住のあやさん。
「函館に温泉門という門があるそうなんですが、何なのか?調べてください」
温泉門…その言葉の響きからすると、堂々たる門構えの“何か”があるのかもしれません。
そう思い、函館市民に聞いてみたのですが…
「分からない」
「大門じゃなくて?知らなーい」
「温泉に入るのに門があるの?ちょっと分からないな」
いずれも、鈍い反応しか返って来ません。
どうやら地元の有名なスポット…というわけではないようです。
そこで、大門横丁で聞いてみると…。
函館いか家の久末誠代表が「知ってますよ。マチで言うと湯川町」と教えてくれました!
やはり“温泉門”というだけあって、函館を代表する、あの温泉街にあるようです。
いったい、どんな「門」だというのでしょうか?
確かに、湯川町に〝温泉門〟の文字が!
だけど周辺を見渡しても、大きな門構えなどは見当たりません。
防犯カメラに、警備員。
柵に取り囲われ、無用な立ち入りを厳しく阻む、警備体制です。
よく見てみると、ここは函館競馬場!
日本中央競馬会、JRAが管理・運営する『函館競馬場』の一角だったんです。
では“温泉門”の正体とは、何なのでしょうか?## 日本で唯一!サラブレッド専用
JRA函館競馬場の三枝里緒さんに「温泉門」についてたずねてみました。
「競馬場内の温泉施設をつなぐ門となっています。日本で唯一のサラブレッドの温泉で、JRA全国10競馬場のうち函館競馬場のみです」
なんと、この先に温泉施設が…、しかもサラブレッド専用だというのです。
全国10か所あるJRAの競馬場のうち、函館競馬場は今から150年前に開設された、長い歴史を持ちます。
海を望む唯一の競馬場であり、サラブレッド専用の手術室や、ウッドチップコースも、全国ではここだけです。
そこにさらに温泉まで…。
湯の川では、温泉を楽しむ猿たちが知られていますが、癒しを求め、サラブレッドも湯に浸かるというのでしょうか…?
それは見てみたい!
交渉の末、JRAから取材許可が下りました。
立ち入りが厳しく制限されているエリアに、もんすけ調査隊のカメラが入りました。
そこにあったのは、確かに温泉施設!
JRAの競馬場で、ただ1か所という、サラブレッド専用の温泉施設。“馬温泉所”です。
水色の細長い浴槽が2頭分…。
深さは1メートルで馬の胸まで浸かることができ、シャワーもあります。
60℃ある湯の川の源泉を、40℃にして使っているということです。
では、どんな効能をもたらすのでしょうか?
JRA競走馬診療所の小林稔上席臨床獣医役に聞いてみました。
名馬も入った温泉!
「現役の競走馬は、毎日トレーニングをして筋肉を使っているので、筋肉痛を取る以外にも、リラックス効果もあると言われている」
サラブレッドの平均体重は、400キロ~500キロ。
全身の筋肉をフルに使い、レースでは、時速70キロ台で勝負に挑みます。
“温泉門”の先にあった、ここ“馬温泉所”には、さまざまな名馬たちも入浴しています。
生涯獲得賞金10億円を誇る三冠馬『ナリタブライアン』、2024年に宝塚記念を制した『ブローザホーン』も、温泉に浸った名馬の一頭です。
それにしても、どうやって温泉に入るのでしょうか?
牡(おす)の3歳馬『エスタア』は、馬温泉所の利用は初めてだといいます。
怖がらせないために、今回はシャワーのみの、温泉体験となりました。
坂を後ろ向きで馬が入っていき、水深1mくらいで、馬の胸くらいの深さまで浸かります。上のシャワーからでるのも温泉のお湯。
背中や腰に打たせ湯のようにかけて筋肉疲労を取るのだそうです。
「1回につき、15分ほど温泉に入るが、大体とろんとした顔になる」んですって!
ところで、わざわざ“温泉門”と掲げているのは、どうしてなのでしょうか?
温泉門の由来
競走馬専用の温泉施設は、かつて、函館競馬場から500mほど離れた、湯の川エリアの大湯温泉にありました。
馬たちが競馬場と温泉を往復するたびに門をくぐっていたことから、『温泉門』の名が付いたということです。
その後温泉施設は1978年に一度なくなったものの、1981年に競馬場の中に新たに作り直したのだそうです。
いまも“温泉門”の先には、激闘を尽くしたサラブレットたちを癒す、出で湯の空間がありました。
調査結果
函館にある温泉門は、馬たちの健康を支える、「サラブレッド専用の温泉」に続く歴史ある門でした!
文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年6月13日)の情報に基づきます。