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合言葉はUnite、Deep Sea Diving Clubはオーディエンスと共に成長する

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Deep Sea Diving Club

Deep Sea Diving Club「Unite-Love Tour」2024.06.14(fri)下北沢adrift

音源よりも数倍、ライブがエモいバンドだった。6月14日、Deep Sea Diving Club「Unite-Love Tour」の初日、東京・下北沢adrift。メジャーデビュー2年目、福岡発、洒落たシティポップ感を身にまとうクールで清潔なポップバンド。初めてライブハウスで体感したその音は、そんな思い込みを、ホットでエモーショナルなライブバンドという印象に一気に塗り替える、チャーミングな躍動感に溢れたものだった。

「こんばんは、よろしくおねがいします。調子どうですか?」(谷颯太)

大阪からやってきたオープニングアクト・luvがしっかりと温めた空気の中へ、メンバーが笑顔でダイブする。「SUNSET CHEEKS」の、ゆったりと心地よいリズムに乗って爽やかなメロディが吹き抜けると、まぶたの内側に晴れた青空ときらめくプールサイドが浮かぶ気がする。谷颯太(Vo)、大井隆寛(G)、鳥飼悟志(B)、出原昌平(Dr)、そしてサポートの中野ひより(Key)。結成5年、それぞれにキャリアの長いメンバーだが、溌剌とした演奏ぶりがフレッシュで初々しい。大井と出原のコーラスがみずみずしい。ラテンやジャズのテイストを散りばめながら、自然に体を揺らせるグルーヴがかっこいい。

Deep Sea Diving Club

「『Unite-Love Tour』へようこそ。自由に踊って好きに楽しんでいってください」(谷)

序盤はアップ、ミドルのテンポを並べてぐいぐい飛ばす。出原が力強いスティックさばきで主役になったり、大井がジャズ/フュージョンスタイルの華麗なギターソロを決めたり、プレイヤーの個性が際立つシーンが多い。音源はより緻密に、ライブはより自由に、という意識があるのだろう。Deep Sea Diving Clubはメンバー全員に、自然に目と耳が向くバンドだ。

「2月に上京してきました。上京して初のツアー、1年振りのリリース・パーティー、お集まりいただきありがとうございます」(谷)

谷 颯太(Gt./Vo.)

大井 隆寛(Gt./Cho.)

自由に楽しく、ヘンなダンスをしている奴が勝ちですから。そう煽りながら、体がキツい人は心で踊ってくれればいいからと、丁寧にフォローする谷は優しい男だ。ヒットチューン「フラッシュバック'82」を筆頭に、中盤はメロウでファンキーな楽曲を畳みかけて波に乗る。心地よくループするリズムに徹する鳥飼と出原のリズム隊の上で、饒舌にしゃべりまくる大井のギターと谷の歌が、時折バトルめいた火花を散らす。ソウルフルな「lostpeople」で谷が渾身の独唱を響かせれば、スローファンクな「cinematiclove」では大井が気迫のこもったソロを決める。大井隆寛、久々にギターヒーローという言葉を使ってみたくなる男だ。

「『Unite-Love』とは、それぞれの足りない部分を補って助け合うこと。みんなも最後まで仲良くしていってください」(谷)

鳥飼 悟志(Ba./Cho.)/ 大井 隆寛(Gt./Cho.)

出原 昌平(Dr./Cho.)

フロア後方からはよく見えないが、ステージ上にはメンバーが持ち寄ったレコードや本など、私物グッズが飾られていたらしい(→谷のXを見よう)。彼らにとってライブとは、非日常の場と言うよりは、リラックスしてUniteしあう場なのだろう。ちなみにライブ前の会場BGMも、メンバー自身が選んだそうだ。いつも明るい中野が居住まいを正して弾く、エレクトリックピアノが印象的な「sunselco」の、メランコリックなムードが胸に沁みる。青い光の中でゆっくりと深呼吸をすれば、ライブはそろそろ終盤だ。

「『ユニラブ』はUNIQUE LOVE、替わりの効かない唯一の愛です」(鳥飼)

Deep Sea Diving Club

鳥飼の作詞作曲によるニューシングル「ユニラブ」は、昨年友人をなくした彼の心境を、悲しみを乗り越えてポジティブに昇華した愛の歌。精密でストイックなリズムが際立つ音源と比べ、出原のドラムも谷のボーカルも気持ちが前面に出て聴こえる。君はどうかここにいて、と歌う言葉がじわりと沁み入る。代わりの効かない曲、代わりの効かない愛、代わりの効かないバンド。それがDeep Sea Diving Club。

アンコールでは、とにかく明るい中野がツアーグッズ紹介をして拍手を浴びる。大井が「久しぶりのツアーで飛ばしすぎて、はぁはぁ言ってる」とつぶやく。鳥飼が若い大学生バンドのluvに「元気をもらいました」と感謝の言葉を届け、「僕らも東京は1年目で、まだ若手です」と宣言する。歌い終えた谷が「自分自身に拍手を」とフロアに呼び掛ける。優しさと力強さと、初々しさと熟練と、ダンスとポップとメッセージを重ね合わせて、オーディエンスと共に成長するバンド。それがDeep Sea Diving Club。

Deep Sea Diving Club

今日ここでこの空気を吸った人は、忘れられずにきっと次も来るだろう。ツアーファイナルの6月28日、kawara CAFE 福岡PARCO店でのライブを終えれば、次のステップが見えてくる。こんなライブをしていれば一人、また一人、友は集まるだろう。合言葉はUniteで。

取材・文=宮本英夫 撮影=AOI

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