工業都市・尼崎の原点!市内最古の洋風建築物『旧尼崎紡績本社事務所』見学会に参加してきた 尼崎市
“工業都市”として発展してきた尼崎市ですが、その原点となった『旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)』という建物が東本町にあります。普段は中に入れませんが、2~3か月に1度のペースで「見学会」が行われており、以前から興味があったので参加してきました。
建物は、阪神タイガースの2軍球場『ゼロカーボンベースボールパーク』で有名な阪神大物駅から徒歩約10分の所にあり、10時から16時30分の間は敷地内に自由に入ることができます(建物の中には入れません)。
建物の中に入れる「見学会」は事前申し込み制。現地に到着した記者は、入口正面にまわって入館手続きをとることに。
見学会は、はじめに「展示室」で説明を聞き、その後、建物内を自由に見学して終了。所要時間はトータル1時間ほどで、小さいお子さんから年配の方まで幅広い年代の方が参加されていました。
尼崎は江戸時代に城下町として栄えましたが、幕末・維新期には町が疲弊し、経済が停滞。このような状況を打破するために商人や旧尼崎藩士たちは、綿糸紡績の大工場を尼崎に作ることを考え、1889年に『尼崎紡績会社』を設立しました。当時の見学会には、なんと3万人もの人が参加されたそうです。
その後第2、3工場を次々と作り、1900年に本社事務所として同建物が建設されました。
当時の資料などを用いて説明を聞くと、工場の周りには社宅や寄宿舎のほか病院や小学校まであり、一つのコミュニティが形成されていたそう。1918年には『大日本紡績』となり、日本最大の紡績企業にまで発展したそうです。
1945年の空襲で工場は壊滅的な被害を受けましたが、同建物は奇跡的に戦災を免れ、1959年から『日紡記念館(後にユニチカ記念館)』として一般公開。その後、「尼崎市内最古の洋風建築物であり、工業都市尼崎の歩みを象徴するシンボルともいうべき建築物」として尼崎市が2023年に同建物を取得し、市民共有の歴史遺産として保存・活用していくことになりました。
ここまで話を聞いて、本当に貴重なものが奇跡的に残ったことに驚くとともに、「ここでたくさんの方が働いていたのだ」とロマンを感じました。
展示室で説明を聞き終え、いよいよ自由見学がスタート。さっそく建物の2階へ上がってみることにしました。
こちらが2階へ上がる階段。親柱の形状や円弧を描く1段目は、今ではあまりみないデザインでおしゃれです。
2階の広々とした部屋は元々「展示室」であり、たくさんの紙の資料が展示されていましたが、状態の良くないものも多数あり、今は近くの歴史博物館で保管&ひどいものは修復作業を行っているそうです。
壁には当時の様子を表している資料が飾られていました。
この絵に描かれているように、多くの人々が尼崎の発展のため力を尽くしたことで今の尼崎があるのだと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
階段を上がってすぐ右手にある部屋は「貴賓室」のような使われ方をしていたと思われ、ほかの部屋とは違い暖炉の装飾も豪華でした。
ホーロー鉄板でできた天井は美しく、とてもグレードの高いものとなっています。
同建物は「イギリス積」によるレンガ造で、入口部分には赤レンガだけでなく、赤レンガを高温で焼き強度を増して作られた「黒レンガ」も使用されています。基礎部分に使われているのはもちろん、外観上のデザインにも活用されているのが素敵でした。
耐震の関係で今は30人ほどに限定して見学会を開催されていますが、ゆくゆくは耐震補強をし元の状態を再現し、誰でも自由に見てもらえるようにしていきたいそうです。
担当者は「歴史的に見ても貴重な建物が今も残っているのは本当に奇跡なので、なんとしてでもこの建物を残していきたい」と熱く語っており、筆者もわざわざ訪れて見る価値があるものだと感じました。
場所
旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)
(尼崎市東本町1-50)
敷地公開
10:00~16:30
※年末年始(12月29日から1月3日)を除く、悪天候時は閉鎖
見学会
10月4(土)13:00~14:00 14:30~15:30に実施済み