畠中祐、初のセルフプロデュースにチャレンジした9th SINGLE「It’s time to fly!」インタビュー
声優・アーティストの畠中祐が9th SINGLE「It’s time to fly!」を7月17日(水)にリリースする。今回は初のセルフプロデュースにチャレンジ。テーマは“旅”。どのような想いでテーマ、そして表題曲「It’s time to fly!」の歌詞を手掛けたのか。さらに8月の『TASUKU HATANAKA 30th Birthday & 9th Single Release Party-It's time to fly!-』、10月の仲村宗悟、古川慎との3マンライブ『Lantis MENS GIG "A・C・E" 2024』についても訊いた。
――今回の9th SINGLE「It’s time to fly!」は30歳になったことを記念しセルフプロデュースをされていますが、どういった経緯からセルフプロデュースをすることになったのでしょうか?
セルフプロデュースについては最初、プロデューサーさんから「ちょっとやってみない?」と言われたんです。
――結構ライトな感じだったんですね。
はい。今まで表題曲の歌詞を担当したことはなかったんですが、今回は自分で表題曲の歌詞を書いて、かつテーマとかも出してみてはどうだろう?と。これまでやったことがなかったので、最初は大丈夫かなぁ、と思っていたんですけど、意外とやってみるとツルツルとテーマも歌詞も出てきて。30歳に迎えるにあたって、30歳になることをどう思うか?どういうものがテーマだといいと思うか?って考えた時に、確かに区切りではあるかもしれないけど、これから先も続いていくことの延長線上の“点”だなって。そこに“旅”っていうテーマが降りてきました。テーマ出しから歌詞まで、結構するっといけたなという感じがありました。
――では30歳だから、こうしようというのは特になかった?
最初はなかったですね。まだ20代で居たい!って思っていて。20代だったら許される、みたいな感じってあるじゃないですか(笑)。
――確かに(笑)。30歳って年齢の二桁目が上がるだけなのに、これまで許されていたことが急に許されなくなる、っていうことがありますよね。
そうなんです。どんどん許されなくなっていく。なので最初はマイナスな感覚に陥るかな、と思っていたんですけど、考えていくとプラスのことが多くなってきて、これだったら面白いかも、となったんです。
――コンセプトの“旅”についてもう少しお聞きしたいのですが、どういったことからでてきたのでしょうか?
「旅に関する歌」っていうのが結構好きで、例を挙げるとスキマスイッチさんの「トラベラーズ・ハイ」とか、聴くとワクワクするし。あと、少し前まではいただいた仕事を全力でこなすことで精一杯だったんですけど、「こういうのをやってみたい」「こういうことにチャレンジしてみたい」というのが出てきて、舞台などにもチャレンジさせてもらう機会があったんですね。そこでワクワクする仕事をすることで、声優の仕事もより好きになれたんです。
――声優としてのキャリアを重ねていく中で根源的な衝動を改めて確認したくなったと?
プロとして色々なことを気にしなきゃいけないのは当たり前なんですけど、それ以前にワクワクする気持ち、何かを作る時の根源的な気持ちに立ち返りたい、ということを実はここ3年間くらい考えていて。そういったところに立ち返るっていう意味でも“旅”がいいって思ったんです。その先に何が待っているのか分からないし、行き先も決まってないけど、パスポートだけ持っていれば、旅はできるんだからっていう。
――ある意味振り返りの時期があってこそのコンセプトだったと。
はい、そのワクワクを探す旅に出るパスポートみたいなものは、今までやってきたことも含めて持ってるよなと。
――これまで声優としてのキャリアもひっくるめて常にワクワクがあって、それは今も持ち続けていることを確認できたと。そして先ほど言われていましたが、歌詞もするすると出てこられた。
そうですね。実は歌詞は2種類作ってみたんです。実際に使われたのはものすごく前向きな方ですね。
――もう一つは逆のネガティブな歌詞なんですか?
無茶苦茶後ろ向きな歌詞もあったのですが、それはわざとネガティブな方向で書いてみたんです。でもそのネガティブなほうは、こういうことはいつでも言える、これから先でも多分書けるよな、と没にしました。
――なるほど。「It’s time to fly!」のタイトルからやはり旅の乗り物は飛行機で。
乗り物も最初は電車で考えてたんですけど、ポジティブに行くなら、飛行機にしちゃおう! みたいな(笑)。
――最初のアイディアは電車!
そう、最初は鉄道の歌で、歌詞にも乗り換えミスっちゃったりとか、全然知らない無人駅に着いちゃったりとかのイメージが入っていて。昔、青春18きっぷで旅をしたことがあって、そこでの経験を入れて書こうと思ったんですけど、ちょっと30歳を迎える華々しさはないな…と思って、じゃあ飛行機にしちゃえ!と思って飛行機での旅を書いた歌詞になりました。
――ちょっと軽い感じの前向きな歌詞ですよね。
背伸びもしていないし、そんなにすごく前向きです、みたいな感じにはならなかったので、ちょうどいい塩梅にできたと思っています。
――今回インタビュー前に「It’s time to fly!」を聞かせていただいたのですが、晴れている日とかにドライブしながら聴いたら気持ちがいいだろうなと思いました。そういう気楽さがあるというか。
そうですね。前向きの押し売り、っていう感じじゃなくて、気楽に聞いて欲しいっていう。
――では少し戻ってしまうのですが、「It’s time to fly!」の最初に聴いた印象はどのようなものだったのでしょうか?
望み通りというか、表題曲なんだけど、ちょっと軽い感じで肩の力抜けた感じで歌えるような曲がいいなって言ったら、思ったより肩の力抜けた楽曲が届いて(笑)。これまでの表題曲のように、派手さはないのかもしれないのですが、でも軽やかで肩の力抜けて歌える曲だなって思いました。コンセプトと歌詞も上手くハマりましたね。
■小さい頃のワクワクと大人の苦味が入った「5 A.M.」
――ではカップリング曲「5 A.M.」(よみ:ファイブ)についてもお聞きしたいです。
僕から歌詞案を出したんですけど、最初はうまくお伝えすることができてなくて、ちょっと背伸びしているものになってしまって。何度かやりとりして今の等身大の歌詞になりました。「It’s time to fly!」が今まさに空港から飛び出すぐらいの勢いの曲なので、「5 A.M.」は空港に行く前に電車に乗っている様子をイメージしています。僕が小さい頃に家族で海外旅行に行った時、朝早くに家を出たのですが、その朝が忘れられないぐらい楽しかったんですね。朝が早くてまだ街も真っ暗で、ゆっくりと空が紫色になっていくところを、キャリーケースのガタガタの音しか聞こえなくて。でも今改めて考えると、ワクワクした気持ちだけじゃなくて、その風景には色々な思いがあるよな、と思い出しつつ、その情景をお伝えしたら、今回の歌詞が出てきて「まさにこういう感じです!」っていう。
――「5 A.M.」は旅に向かう序盤の物語で、「まだ肌寒い」や「朝の風この匂いこの時間が大好きなんだ」などの歌詞は、提案したキーワードがちりばめられていると。
もう完全にその時の朝の風景ですね。
――そしてその小さい時の気持ちだけではなく、今の気持ちも入ってると。
だからちょっと苦味が入ってるんです。小さい頃の時の道を歩いていて、もちろんワクワク感はある。これから飛行機に乗って、どんな景色が待ってるんだろう、とかいろいろな気持ちを抱えながら見た紫色の空が印象に残っていて。今は夜から朝になるその時間に帰ってくることもあって。子供の頃はいい思い出だけだったのが、その紫色の空を見た時に、今はふと思い出すのは、先輩に怒られた飲み会の帰り道だったり、少し苦味を伴っている。
――夜から朝に変わる紫色の空に対する想いが、ひとつではない。
もちろん苦味を感じる思い出にも、自分の中では整理ができていて、先輩があの時かけてくれた言葉は確かにそうだったよな、あれは愛だったよなって思えるようになっている。
――お話聞いてると「5 A.M.」もまさに30歳の節目な曲になっていますね。
そうですね。若手の頃は怒られたりしたこともあったけどそれでよかった、あれがあるから今があるかもね、と今はそこまで思えたので。ワクワクを残したまま苦みも思い出せるって、今の状況はとんでもなくいいよねって思えるという。
■10月の『Lantis MENS GIG "A・C・E" 2024』はフラットな3人を観て欲しい
――そして8月18日(日)に『TASUKU HATANAKA 30th Birthday & 9th Single Release Party-It's time to fly!-』が開催されます。昼公演に内田雄馬さん、夜公演に小林親弘さんがゲストとして出演されますが、どんな内容になるのでしょう?
歌もあるし、イベントもあるパーティーです!肩肘張らずに来ていただきたいです。
――ゲストとのトークもあると。
はい、トークも昔を振り返って真剣に語るというよりも、くだらないなー(笑)、くらいで楽しんでもらいたいです。何よりもファンの人たちが楽しんでもらうことが最優先、大前提だと思っているので。これまでの30年を笑い飛ばせるほうがいい。真剣に振り返るのは50歳からでよくない?と考えているので。
――では、こんなことするよ、と言えることがあれば。
アーティストとしてのオリジナル曲だけではなく、声を担当したキャラクターのキャラソンも歌えたらなと思って計画中です!
――話せる範囲ギリギリでのコメントありがとうございます!(笑)そして10月には『Lantis MENS GIG "A・C・E" 2024』が開催されます。仲村宗悟さん、古川慎さんとの、いわゆるバンド形式でいえば3マンライブです。仲村さん、古川さんとの関係をお聞きしたいです。
レーベルメイトで、ほぼ同時期のデビューした3人ですね。でも声優としては意外と共演作が少ないのかな…いや、古川さんはどこの現場でもいるからな(笑)。
――どこにでもいるからは、凄い褒め言葉ですよね(笑)。ほぼ同期ということはアーティストデビューの先輩・後輩とかはない?
誰が今、引っ張ってるみたいな感じはないですね。フラットな関係というか。みんなそれぞれキャリアを積んできているので、先輩・後輩みたいなものはなくなってしまって、本当に気を使わないメンバーですね。
――では『Lantis MENS GIG "A・C・E" 2024』ではどんなことをしよう、というのは決まっているのでしょうか?
まだいろいろ考えている最中なのですが、サプライズな楽曲も披露できると思うので楽しみにしていただけると嬉しいです。
――3人でのMCはどのようになるのでしょう?
全然気兼ねのないMCになると思います!古川さんはたくさん喋ってくれて、サービス精神がある方ですし。(仲村)宗悟は男っぽい。俺が引っ張っていくぜ!ってしてれる。宗悟がいてくれるとありがたいですよね。
――ではフラットな3人のトークも楽しみにしています。そして最後にファンに向けて一言お願いいたします。
「It’s time to fly!」は、30歳を迎える今をテーマにした楽曲で、この先何があるかまだ分からないけど、長く続いていく旅の途中なので、肩肘張らずに楽しもうという気持ちを表現することができたかなと思います。そしてこの楽曲を聴いて旅に出たいなとか、なんかワクワクしたいなと思ったら、思い切って行動に移してもらって、その旅の最中に聴いてくれる曲が「It’s time to fly!」だったら、なんて幸せなことなんだと心から思います。是非聴いてください。
取材・文:林信行