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シャトー・ブラーヌ・カントナックの2021ヴィンテージは ~UGCB「ヴィンテージ2021 トレード・テイスティング」レポート③

ワインバザールニュース

ボルドーの格付けシャトーを中心とした優良シャトーが参加している、生産者協会のユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー(Union des Grands Crus Bordeaux:UGCB)。2024年11月18日には、東京都港区の八芳園でUGCBによる試飲会が開催され、来日した69シャトーの2021ヴィンテージがお披露目された。

今回は、試飲会に出展していたワインの中から、メドック格付け第2級のシャトー・ブラーヌ・カントナック(Château Brane Cantenac)を取り上げる。来日していたワインブランドアンバサダーのベンジャミン・フレッセ(Benjanim FRAYSSE)氏に伺った、シャトーや2021ヴィンテージについて紹介する。

ベンジャミン・フレッセ氏

シャトー・ブラーヌ・カントナックとは

—―シャトー・ブラーヌ・カントナックについて教えてください。

シャトー・ブラーヌ・カントナックの最も重要な特徴は、テロワールそのものです。アンリ・リュルトン氏は、シャトー・ブラーヌ・カントナックがリュルトン家に渡ってから3代目の当主となります。生物学者としての背景を持つ彼は、テロワールを表現する最適な方法を果敢に追求しています。

例えば、土壌調査や新しい発酵タンク、木製タンクの復活、オプティカルソーティング(光学式選別)による徹底した選果、優しい抽出システムなど、テロワールを観察・実験して行動を起こしているのです。精密さこそが、シャトー・ブラーヌ・カントナックが常に最高の品質を提供する鍵です。

ヴィンテージごとに、その品質は着実に向上しています。常に追求しているのは、ワインのフレッシュネスとエレガンスです。マルゴーのつくり手として、私たちはこの地に生じている気候変動にも対応しています。新しい気候に耐性のあるぶどう品種、休耕地、生け垣、樹木の植栽などの試みが、ブラーヌ・カントナックの特徴を形づくっています。

もちろん、ブラーヌ・カントナックの最大の強みは、シャトー前に広がる30haの粘土・砂利質の土地です。テロワール4に分類されるこの区画は、マルゴーでも特に優れた土地であり、ぶどうの根は深く長く伸びていきます。

テロワール4は、第四紀に川によって堆積されたテロワールで、砂質の表層が特徴です。大きな砂利の石に覆われており、深い地下層も砂利から成り、粘土(10〜20%)の割合が高いという特性があります。この特別な地層が、ぶどうの栽培に最適な条件となるのです。雨が多い期間には土壌内で水分を保持し、干ばつ時には粘土が徐々に水分を放出することで、ワイン用ぶどうの安定した成長を支えます。この土壌の水分保持機能により、ヴィンテージに関係なく年間を通じてぶどうが安定して成長できるのです。

テロワール4で育てられたぶどうは、シルキーでありながらテクスチャーがあり、エレガントでありながら力強いワインとなります。

—―2021ヴィンテージの出来はいかがですか?

2021年は、極端な年でした。霜、春の雨、曇った夏、その後に遅れて訪れた厳しい夏の干ばつ。この厳しい気候条件に対応するため、区画ごとに作業を調整し、すべてのエネルギーを注ぎました。

その結果、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローは、色鮮やかで果実味豊かなワインを生み出しました。優雅で精密なタンニン、甘さと酸味の間で素晴らしいバランスを保っています。セラーでは優しい抽出を行い、非常に繊細なストラクチャーを生み出しました。

—―日本のワインファンはどんな存在ですか?

ワインを単なる飲み物として楽しむだけではなく、ワインの文化を受け入れていますね。多くのアジア諸国では、ワインは歴史的に外国の伝統と見なされており、受け入れ方は地域ごとに違います。日本は、特にフランスの伝統とボルドーのワイン文化の影響を受け入れて、最も早く西洋のワイン文化を取り入れたアジアの国の1つです。日本はアジアで最も成熟したワイン市場と見なされています。

日本のワイン愛好家は、洗練された情熱的なコミュニティーを形成しており、その規模と知識は広がり続けています。好奇心、品質への評価、伝統への敬意を併せ持っており、世界のワイン文化にとって欠かせない存在です。

シャトー・ブラーヌ・カントナックのワイン

ここからは、会場でサービスされていたワインについて、フレッセ氏のコメントを紹介する。

シャトー・ブラーヌ・カントナック 2021

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン74%、メルロー22%、カベルネ・フラン2%、カルメネール1%、プティ・ヴェルド1%
原産地呼称:AOCマルゴー
アルコール度数:13.0%

シャトー・ブラーヌ・カントナックは、テロワール4が生んだぶどうを100%使用しています。美しくて深いガーネット色をしており、透明感があります。香りは非常にフレッシュで、ブラックベリーなどの黒い果実のノートと、繊細な白い花のヒントが感じられ、クローブやユーカリの香りが加わり複雑です。アタックは、力強くて豊か。タンニンは、しなやかかつシルキーで、とても高品質です。味わいは、濃密で複雑であり、黒い果実、スパイス、ミントのヒントがあり、バランスが優れています。フィニッシュは長く、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴的なノートが素晴らしいフレッシュさを加えています。このヴィンテージでの成功作です。

ペアリングには、牛ヒレ肉のステーキに、サイドは松の実とマカレポテト(カリカリに焼いたジャガイモ)、ニンジンの葉、そして濃厚な肉汁を使ったソースがお薦めです。

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