【独裁者の素質】14の指標チェック 「あなたはいくつ当てはまる?」
独裁者の素質
世界の歴史を振り返ると、多くの「独裁者」と呼ばれる人物が存在する。
アドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、毛沢東、金正恩などを思い浮かべる人たちも多いだろう。
彼らの育った環境、性格、行動パターンなどは、独裁者としての資質を形成する重要な一因であり、これらの独裁者の共通項を研究する者も多い。
長年精神科医を務め、イギリス外相も歴任したデイヴィッド・オーウェンは、『権力と病』という著書の中で、「狂妄症候群」という概念を提示している。
これは、権力者が持つ特定の心理的特徴を評価するためのもので、彼はこの症候群を評価するための「14の指標」を列挙している。
この「14の指標」にいくつ該当するかをチェックすることで、独裁者の特徴を見極めることができるだろう。
もしかすると、あなたの中にもその資質が潜んでいるかもしれない。
独裁者の条件
1. ナルシシズム
自分を特別視し、世界が自分を中心に回っていると信じている。
独裁者は自己愛が極端で、世界そのものが自分の栄光を演出する舞台であると捉えている。
つまり自分が世界の主役であり、それ以外は自分を引き立てるための脇役といったところだろう。
2. 積極的な行動力
独裁者は行動力に優れ、理想を現実に変える力を持つ。
この実行力こそが、彼らの評価を高め、リーダーとしての地位を確立する重要な要素となっている。
3. 外見への執着(どう見られているか)
自分の外見や、他者からどう見られているかに強い関心を持つ。
独裁者にとって、他人の目にどう映るかは極めて重要であり、常にイメージを意識して行動する。
4. 魅惑的な話術
独裁者は、人を引きつける話し方や説得力を持っている。
話の内容よりも、その言葉が持つ力で多くの人々を魅了する。
5. 国家と自己の同一視
独裁者は自分自身と国家を一体と見なし、自身の利益と国家の利益が一致していると信じている。
このため、自分の意思を国家に押しつけることに疑問を持たない。
6. 王のような言葉遣い
独裁者はしばしば、自分を三人称で呼んだり、過去の王のような口調で話す傾向がある。
まるで王や皇帝のように、自分を演出するのだ。
7. 過剰な自信
独裁者は、自分の判断に過剰な自信を持ち、他人の意見や批判を軽んじる。
彼らは他者の助言を無視し、自己の決定を絶対視する。
8. 万能感
自分の成し遂げたことに絶対的な自信を持っている。
彼らは、「自分には、どんなことでも成し遂げる能力がある」と信じて疑わない。
9. 歴史的使命感
独裁者は自分が向き合っている問題を「歴史」や「神」と結びつけ、自分が選ばれた存在であると信じている。
自分の行動は単なる人間の営みではなく、歴史的な使命だと捉えている。
10. 勝利への信念
独裁者は、「自分が必ず勝利を収める」と強く信じている。
どんな逆境になったとしても、なぜか自分が最後に勝つと確信しているのだ。
11. 休息をとらない
独裁者は無理な働き方をすることが多く、衝動的で過激な行動に出ることもある。
無理なスケジュールや過激な目標を自分に課し、結果的に過労や判断ミスに繋がることがある。
12. 現実との断絶
独裁者は次第に現実との接点を失い、非現実的な判断や行動を取ることが増える。
孤立状態が進み、周囲の現実的な助言に耳を貸さなくなる傾向が強まる。
13. 道徳的絶対主義
独裁者は自分の道徳的な判断が絶対に正しいと信じ、他者の価値観や倫理を無視することがある。
自らの信念を優先し、既存の道徳観を覆そうとする。
14. 政策の実行力不足
独裁者は権力を握りながらも、実際に効果的な政策を実行する能力に欠けることがある。
このため、傲慢でありながら無能だと批判されることが多い。
いくつ当てはまる?
これらの14の指標は、デヴィッド・オーウェンが「狂妄症候群」として定義したものである。
3つ以上の項目に当てはまる場合、独裁者の資質が潜んでいる可能性があるという。
アドルフ・ヒトラーは、これらの項目のうち10項目以上に該当するとされており、「狂妄症候群」の典型的な例とされている。
ヒトラーの場合、この症候群に加えて、うつ病や他の精神疾患を抱えていた可能性も指摘されている。
晩年、アンフェタミンを常用しており、その影響で精神状態はますます悪化していた。
彼の最期の2年間は、ほぼ狂気の中で過ごしたとも言われている。
最後に
この「狂妄症候群」または「傲慢症候群」とも呼ばれる症状は、先天的なものではなく、その人物が育った環境や家庭背景、経験によって形成されるという。
独裁者に共通するのは、長期にわたる権力の保持である。
ある研究者は、独裁者が権力を握り、その資質を開花させるまでには、1年から9年の時間が必要であると指摘している。
つまり、これらの特徴を持っていても、すぐに独裁者になるわけではない。しかし、時代や環境が整ったとき、その資質が開花し、権力を握る可能性があるのだ。
こうした人物が現れたときに周りがどう対応するかは、国や時代を問わず普遍的な課題なのかもしれない。
参考 : 『権力と病』他
文 / 草の実堂編集部
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