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スマホで「子どもの交友関係」が見えない! 「親の不安」と「子どもが困っていること」はこんなに違った〔精神科医〕が解説

コクリコ

精神科医・さわ先生に「親子のちょうどいい距離感」について取材。スマホで見えない子どもの交友関係などについて。(全3回の2回目)

【画像で見る】子どもにも増加 命をおびやかす「神経性やせ症」(拒食症)の現実

精神科医さわ先生に聞く、思春期を迎えた「親子のちょうどいい距離感」。連載2回目は、子どもがスマホを持ち始めた途端に見えにくくなる子どもの交友関係についてです。

スマホ時代の子どもへの向き合い方について、さわ先生に教えてもらいました。

スマホを持つと子どもの悩みが増える!

スマホを持つようになると、子どもが抱える悩みはこれまでとは違う形で増えていきます。

例えば、「グループLINEに入れてもらえない」「朝起きたら未読が200件もあった」などをきっかけに、「自分だけ仲間外れにされたのでは?」と強い不安を抱いてしまうケースも少なくありません。

子どもが小さいころは、友人関係がある程度、親の目に届いていました。保護者同士のつながりや遊びの約束の調整、先生やママ友との会話から「今、○○ちゃんと何かあったのかな」と察することもできていたはずです。

しかし、スマホを持ち始めると、やり取りの多くが親の目に触れない場所で行われます。近年はSNSやメッセージアプリをきっかけとした事件やトラブルも多く、「うちの子は大丈夫だろうか」「何か悩んでいないだろうか」と心配になるのも自然なことです。

とはいえ、その不安から子どものスマホを無断で見たり、細かくチェックしたりするのはおすすめできません。思春期の子どもの交友関係に、親が直接介入しすぎることも同様に逆効果になりがちです。

そうした行為は、子どもに「信じてもらえていない」と感じさせ、親子の信頼関係を揺るがすきっかけにもなります。

大前提として、思春期に入ると、親に知られたくない人間関係や出来事が増えていくのは、精神的な発達においてごく自然なプロセスです。

やがて子どもは、それまで「親が絶対に正しい」と信じていた存在が、「親も不完全な人間なんだな」「間違えることもあるんだな」と気づき始める。それは、子どもが自立に向かって成長している証拠なのです。

写真:mapo/イメージマート

トラブルは起こることを想定してルールをつくる

理想は、子どもがスマホを使い始める前に、家庭内でルールをあらかじめ決めておくことです。

例えば、以下の3つのルールなど。

・人を傷つけるような言葉は使わない
・22時以降は部屋に持ち込まない
・就寝中の充電はリビングでおこなう

こうしたルールは、親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合って作るのがポイントです。自分で決めた納得感があるからこそ、子どもは「ルールを守ろう」という気持ちになれるからです。最初にきちんと話し合っておかないと、あとからルールを後付けするのは難しくなります。

ちなみに、スマホの使い方に親が自然にかかわれるのは、こうした最初のルールづくりのタイミングぐらいでしょう。だからこそ、スマホを持たせるときは「このルールが守れるなら、あなたにスマホを持たせたい」と、子どもとの信頼に基づいた約束としてスタートすることが望ましいです。

もちろん、そうはいっても「もうスマホを持たせてしまっているから今さらルールなんて……」と思う方もいるかもしれません。でも、だからといって手遅れということはありません。

今の使い方や家庭内での暗黙の決まりを一度文章にしてみるだけでも、「これは守れているな」「ここは改善したほうがいい」など、親子で気づけることもあります。

そしてもう一つ大事なのは、「ルールを決めたからといって、すべてのトラブルは防げない」と心構えしておくこと。もし、予期せぬことが起きたとき、親ができる一番の支えは「困ったら一緒に考えよう」という姿勢です。

「あなたが悪くなくても、思いがけずトラブルに巻き込まれることはある。だから、もし怖いな、不安だなと思ったときは、怒らないから絶対に相談してね」と。

この一言があるだけで、子どもは「いざというときに頼れる場所がある」と感じ、安心して日常を過ごすことができます。

「親の心配」と「子どもの悩み」を切り分ける

それでも子どもの交友関係が見えないと、親が不安に感じるときはあると思います。

そんなときは、「どこまでが親自身の不安で、どこからが本当に子どもが困っていることなのか」という境界線を意識してみてください。

実際、クリニックに来られる保護者の中には、お話を聞くと、子ども自身はまったく困っていなかったというケースも少なくありません。

例えば、「仲間外れにされているかも」「このまま学校に行けなくなったらどうしよう」と、親が先回りして不安をふくらませてしまっていることもあれば、逆に親が「大丈夫」と思っていたことが、子どもにとって深刻な悩みだったというケースも。

写真:Trickster/イメージマート

特に、スマホやSNSの世界は、親世代が思春期に経験してこなかった日常です。スマホ時代だからこそ、「見えない不安」とどう向き合うかは、現代の親にとって大きな課題のひとつ。

だからこそ、「自分がこういうことで傷ついたから、子どもも同じに違いない」「自分が悩んだから、きっと子どもも悩んでいるはず」と決めつけず、親の不安と子どもの気持ちを切り分けて考えることが大切です。

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今回の取材を通じて、知らないうちに「自分と子どもを同じように見ていたのでは」と気づかされました。

見えない不安は確かにあります。でも、だからこそ、もっと安心して子育てをするにはどうすればいいのか。さわ先生は、「子どもの自立を信じること」にあると話します。

次回3回目では、自立できる子を育てるために、親ができることについて教えてもらいます。

取材・文/山田優子

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』著:精神科医さわ(日本実業出版社)

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』著:精神科医さわ(日本実業出版社)

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