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テスト100点でも喜びの報告なし!中1自閉症娘、「気持ちの共有」に無頓着なワケ

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テスト100点でも喜びの報告なし!中1自閉症娘、「気持ちの共有」に無頓着なワケ

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

中1自閉スペクトラム症娘、テストで100点を取っているのに…!?

広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。
娘が小学生の時、「テストが返されたら、設置されているお手紙ボックスに入れる」というルールにしていたのですが……

100点だとしても自分から報告してくれることはほとんどなく、私たちが気がついて「100点じゃん!」と言うと「そう、100点」と言うだけでした。

中学に入学してからは、テストはまとめて行われるようになり、頻繁にテストを確認する機会が減ったのですが……

小テストや単元テストで100点を取っても、まったく言わない娘。
連絡帳で満点を取ったことを初めて知り、「満点だったの?」と聞くと「うん」と言うだけ。

娘の小さな頃を思い返してみると……

娘が今、反抗期だからというのもあるかもしれませんが、思い返してみると娘は、小さな頃からそうでした。2歳の頃、初めて発達支援センターでカウンセリングを受けた時……

近くで遊んでいる娘が、一度も私のところに戻ってこないことを指摘されました。たしかに娘は、何か楽しいことがあった時も私に笑いかけることも、姿を確認することもありませんでした。

絵を描くのが好きでしたが、描いても見せに来ることはなく、テレビも絵本も、常に一人。思い返せば、娘の楽しさはいつも自己完結していて、人に伝えて一緒に楽しもうという、共有する気持ちはないようでした。

言葉が増えてもそれは変わらず

大きくなり、言葉が増えてもそれは変わらず、学校であったことは聞かないと教えてくれないし、それ自体にあまり関心がない場合は、忘れていて、先生から詳細を聞き、やっと思い出すということもあります。

子どもによく見られる「ママ、聞いて~見て~」ということがほとんどなかったため、私は二人目(長男)の時に初めて体験したほどでした。

うれしかったこと、楽しかったことなんで話さないの? 娘に聞いてみると……

あの時は、娘がまだ自分の気持ちを話せなかったので、カウンセリングで知りましたが、今なら娘の気持ちを確認できる。
私は娘になぜ共有しないのか、うれしかったこと、楽しかったことを話さないのか、聞いてみることにしました。

娘は「共有したい」という気持ちが薄いので、話したいという人の気持ちが分からないようでした。

私たちにとっては、喜びを人と共有したいということは当たり前でしたが、娘にとってそれは当たり前じゃない。私たちに娘の気持ちが分からないように、娘にも私たち側の気持ちは理解できないことだったようです。そのことを無理やり変える気持ちはありませんが、中には伝えて欲しい状況もあります。

人に気持ちを伝えないと、相手は分からないし、状況によっては話さないと困ることもあります。ありのままの娘を受け入れるべきなのは分かっていますが、娘の行動でトラブルが起きるのは避けたい……。

私たちにできることは、娘が相手の気持ちを想像できるように、周りの状況や気持ちを話していくことぐらい。

今回のことに限らずですが……反抗期な娘にいろいろ諭していくのは難しくなってきました。
絶対こうしなきゃダメということばかりではなく、状況に合わせたり、相手を見たり……臨機応変な対応を教えつつも、娘の個性を壊しているのではないかと、毎回悩みながらやっていることが多いです。

これで合っているかの葛藤も毎回つきまとう。悩んで葛藤しながら、これからも続けていきたいと思います。

執筆/SAKURA

(監修:室伏先生より)
SAKURAさん、気持ちの共有について、あーさんとの対話をご共有くださり、ありがとうございました。あーさんの言動に関して理解できないことについては、あーさんにお気持ちを聞いて、なるほどそうなのかと理解される、これはあーさんの個性を理解しようとされているSAKURAさん努力の賜物だと思います。

その上で、あーさんに分かりやすい言葉で、SAKURAさんがどのように感じているか、どんな風に困っているのかを伝えられているのですね。これは発達障害のあるお子さんに限らず、どんな人間関係においてもとても大切なコミュニケーションですよね。あーさんの個性を壊しているなんてとんでもないです。素晴らしいなと思いました。自分の考えていることを言葉にして表出するのはとても大事なことなのですが、家族のような安心できる関係性になればなるほど、それを意識して行うことを忘れがちになってしまいます。私もSAKURAさんを見習いたいと思います。きっとSAKURAさんとの対話が、あーさんの将来に活きてくると思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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