「H&M」がAIによる分身モデル活用へ、ファッション業界はどうなっていくのか
昨今急速な進歩を続け、社会に影響を与えているAI。もちろんファッション業界も例外ではない。今回はそんなAIについて先日ファッションモデルやカメラマンを中心に大きな波紋を呼んだ「H&M」のAIによる「分身」モデルのトピックに触れながら、ファッション業界でのAIの活用とそれに伴う変化について考えよう。
スウェーデンのファストファッション大手、「H&M」は自社のモデルのデジタルクローンを作成し、活用する方針を打ち出した。実際のモデルを撮影したデータを元に画像を生成し、動きから肌の様子まで忠実に再現するという。この活用法には方々から反発の声が上がっている。最も危惧されているのがモデルやカメラマン、メイクアップアーティストなどの雇用減だ。
ファッション業界でのAIモデル活用は「H&M」だけではない。昨年11月にはサザビーリーグがAIモデルを提供するAI modelへの出資を発表。自社が展開する「ロンハーマン(Ron Herman)」や「コヒナ(COHINA)」といったブランドとの親和性も高いとAI活用に前向きな姿勢を見せた。また「ヒューゴ・ボス(HUGO BOSS)」ではモデルの生成AI画像を自社のeコマースに活用する方針を発表、「マンゴ(MANGO)」ではAIで生成した広告キャンペーンを展開するなどAI活用の波は勢いを増している。
ここまでAIのモデルを中心に各ブランドの戦略を見てきたが、モデルではなくデザイナーとしてAIを活用しているブランドも登場している。「モンクレール(moncler)」は2023年の秋冬コレクションとしてAIでデザインしたダウンジャケットをロンドンファッションウィークで発表した。また「リボルブ(Revolve)」は2023年にニューヨークで開催されたAIファッションウィークの入賞作を実際に商品化した。
業種を問わず参入するAI。効率化とコスト面で大きなメリットが得られる反面、雇用の問題も浮き彫りになっている。この先も進化を続けるAIとの差別化を図る人間の力が求められている。