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世界の映画史に燦然と輝く巨人の本格的な回顧展「没後70年 映画監督 溝口健二」/国立映画アーカイブ展覧会 

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世界の映画史に燦然と輝く巨人の本格的な回顧展「没後70年 映画監督 溝口健二」/国立映画アーカイブ展覧会 

 1950年代末から始まったフランスの映画運動〈ヌーヴェルヴァーグ=新しい波〉の旗手であり映画監督にして映画批評家のジャン=リュック・ゴダールは、「溝口が撮るどのカットにおいても毎秒ごとに詩(ポエジー)がうかびあがる」と絶賛したという。小津安二郎や黒澤明とともに世界の映画史にその名を轟かせた溝口健二の本格的な初の回顧展が、国立映画アーカイブの展示室で8月11日(祝・火)に開幕。

 1898年(明治31)東京に生まれ、1956年(昭和31)58歳で没したが、1920年代から1950年代にわたるキャリアの中で、『祇園の姉妹』(36年)、『残菊物語』(39年)、『西鶴一代女』(52年)、『雨月物語』(53年)、『山椒大夫』(54年)など約90本の作品を遺した。ワンシーン・ワンショットや移動撮影を用いた映像表現と完全主義的な演出で、社会や男性の犠牲となる女性の姿をリアルに描いたことで知られている。

左:『浪華悲歌』(1936年) ポスター 国立映画アーカイブ所蔵、右:『西鶴一代女』(1952年) ポスター 国立映画アーカイブ所蔵

 
 展覧会の構成を辿ると、

 第1章・日活向島時代。若き日画家を目指した溝口は、日活向島撮影所に入所(20年)。田中栄三監督などの助監督を務め、1923年2月公開の『愛に甦る日』で監督デビューするも同年発生した関東大震災で撮影所は閉鎖、映画界入りしてからわずか3年余りを当時の作品資料から探っている。

 第2章・日活京都時代。京都に移転した日活の製作機能とともに溝口の新天地での活動は『紙人形 春の囁き』(26年)でキネマ旬報ベストテン第7位に入賞。さらに、『藤原義江のふるさと』(30年)や『時の氏神』(32年)では日本の映画監督としていち早くトーキー映画に挑むなどの野心的な活躍を取り上げている。

 第3章・第一の黄金期。1932年、溝口は日活を退社し、新興キネマに移籍する。当時の人気俳優、入江たか子を主演に『満蒙開拓の黎明』(32年)や『瀧の白糸』(34年)を成功させいよいよ溝口の声望高まる過程から、1936年には、全編の台詞を関西弁として撮った『浪華悲歌』、『祇園の姉妹』を相次いで発表する。まさに第一の黄金期を描いた展示は興味深い。

 第4章・松竹時代―戦中から戦後へ。文部大臣賞を受賞した名画『残菊物語』は京都の松竹に招かれての作品。本作を皮切りに、溝口は古典芸能の世界に生きる人々を題材にした『浪花女』(40年)、『藝道一代男』(41年)を手がけ、大作『元禄忠臣蔵』前後篇(41年-42年)を送り出した。江戸城〈松の廊下〉を原寸大で再現するなど空前のスケールで製作。戦中・戦後にかけて松竹で生み出された作品の数々を、実資料の展示によって読み解いている。

 第5章・第二の黄金期―大映京都時代。1949年松竹から離れ、新東宝、大映、東宝と各社で作品に取り組むものの興行的にも批評的にも恵まれず雌伏の時を経ている。が、『西鶴一代女』(52年)が第13回ヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞。一躍脚光を浴び、翌53年から大映専属となった溝口は『雨月物語』、『山椒大夫』(54年)で『西鶴一代女』以降3年続けてヴェネチア国際映画祭入賞という偉業を遂げている。しかし、1956年『赤線地帯』発表後、病に斃れる。享年58。世界映画史に残る晩年の名作の数々がよみがえる。

『赤線地帯』(1956年) 衣裳スケッチ 水谷浩画 国立映画アーカイブ所蔵

 
 第6章・国際的評価。溝口作品は日本映画の海外進出を最前線で支えながら、その高い芸術性によって日本のみならず世界の映画作家たちに広く影響を及ぼした。溝口映画はどう伝えられ、どんな影響を与えたか、海外の諸作品についても取り上げている。長回し、移動撮影の多用などの表現、妥協なき完全主義の演出は世界の映画人にインスピレーションを与えてきたことを証明する資料の数々に圧倒される。「溝口映画を彩る名スタッフたち」のコーナーもあり、脚本、美術、撮影、音楽に焦点を絞って、その功績を顕彰している。

 ほかに、溝口監督が女優・田中絹代へ宛てた、「酒を呑みながら書いた手紙」も展示されている。日本映画の黄金期を支えた「監督と主演女優」の最強タッグであるが、田中に対する溝口監督の恋心だろうか。1956年8月24日に亡くなった監督の死に顔を永遠に保存し、その偉大な業績と芸術的足跡を偲ぶため、生前「溝口組」で美術監督を務めた水谷浩によって制作されたデスマスクからは、スタッフたちの深い愛情が込められている。溝口監督の業績ばかりではなく、人間性に迫る展示もあり興味深い展覧会である。

展覧会「没後70年 映画監督 溝口健二」
主催:国立映画アーカイブ
会期:2026年8月11日(火・祝)~12月13日(日)
お問い合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
HP: https://www.nfaj.go.jp/exhibition/mizoguchi2026/

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