「加配不足」で入園拒否!?発達が気になる娘の園探し、苦労の末に決めた「こども園」と娘の今【小児科医コメントも】
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
加配の先生が足りず、幼稚園に入れない!?
1歳半健診をきっかけに2歳過ぎから療育に通うことになった娘ですが、1つ問題がありました。それは、娘の進路のことです。私は娘の出産とほぼ同時に夫の転勤が決まり、会社を辞めてからは働いていませんでした。そのため娘は3歳になったら近所の幼稚園に入園させようと思い、プレ保育にも通わせていました。
しかし、プレ保育先の幼稚園の先生に療育(児童発達支援)に通っている子どもでも通えるのかと確認してみたところ、加配の先生が足りないので無理だと言われてしまいました。療育に通い始めて集団生活にも少しずつ慣れ、プレ保育でもほかの子と同じように活動できる時間が増えてきて、希望が見えてきた時期なだけにショックでした。
そこでほかに通える幼稚園が無いかと、片っ端から近所の幼稚園に電話をしたのですが、療育に通っているというだけで娘の様子も見ずに断られてしまうことが続きました。
インターネットの利用者の声で「障害に理解がある」と書かれている園でも、電話すると「去年たくさん加配の子を受け入れたから今年は無理」というところもありました。中には「自閉スペクトラム症(ASD)があると喋れないでしょう。うちの園は音楽教育を重視していて歌をうたえないとついていけませんよ」と言われたりもしました。「うちの子は喋れるし、歌も大好きです」と説明しても「とにかく無理だ」と話も聞いてくれませんでした。
いっそのこと、療育に通っていることを隠して願書を出してしまえば、娘は会話も多少できるし、短時間の面接の間だけ特性がばれないようにやりすごせば入園できるのではないかと思ったりもしました。しかし同じ療育に通う人に「幼稚園で何度も問題を起こして園長先生に呼び出された」「退園を迫られた」という話も聞き、そういったことのないように、娘の特性をきちんと話し、娘に合った園を探すべきだと思いました。
療育園も視野に入れることに
娘の入園できる幼稚園がなかなか見つからず悩んでいた私は、市の発達支援センターにどこか良い幼稚園が無いか相談してみることにしました。
すると職員の方に提案されたのは「療育園」という選択肢でした。近所に療育園は2つあり、1つは母子分離で週5日、もう1つは母子通園で週2日の園でした。私は週5日、母子分離で預かってくれる園を希望しましたが、そちらは希望者が多く、障害の重い子どもが優先とのことでした。
週2回母子通園の園も基本的には障害の重い子どもが優先とのことでしたが、週5日通園の園より倍率は低く入りやすいとのことでした。療育の無い週3回は子どもと家で過ごすことになりますが、週5日で家で過ごすよりは負担は減りますし、ほかに幼稚園や保育園が決まったら願書を取り消しても良いと言われ、私は週2回の療育園に願書を出すことにしました。
特別支援保育という選択肢
次に発達支援センターの職員の方に提案されたのは「特別支援保育」の枠で保育園に入ることでした。これは保育園が加配の必要のある子どもを受け入れる枠で、現在働いておらず求職中でも申し込めるということで申し込んでみることにしました。
特別支援枠での申し込みの際に、私は特別支援保育の枠のある保育園に、娘を連れて何か所も見学に行きました。するとその中の1つのこども園から「うちは加配の必要のある子どもを1号枠(幼稚園枠)でも受け入れている」という話を聞くことができました。幼稚園探しをしていた時は、ほかのお母さんから「そのこども園の1号枠は、下の子ができて育休を取っているお母さんしか入れない」と聞き、早々に候補から外していたので、このことを知らなかったのです。
見学の際には、娘が慣れない環境に癇癪を起こしたのですが、先生が外を一周させて気分転換させるなど手慣れた様子でなだめ、「この子には集団でやっていく能力があると思う」と言ってくださいました。
結局、私は特別支援保育と療育園、そして1号で受け入れてくれるこども園の3つに願書を出しましたが、1号枠で入園できるこのこども園に子どもを入園させることに決めました。
現在の娘の様子
こども園に入園してから、初めのうちは園の行事に保護者がたくさん来るのを怖がって泣いたりしていましたが、こども園の先生方が子どものペースに合わせて適切にかかわってくださったおかげで年中の半ばころからは完全に加配も外れ、今は小学校の通常学級に特に問題なく通っています。
園選びに関してはインターネットでの利用者の声や評判を鵜呑みにするのではなく、子どもに合った園を直接電話したり見学したりして実際に自分の目で決めるのが重要だなと思いました。
執筆/えなめる
園選びに悩み、実際に電話をしたり見学に足を運んだりしながら、お子さんに合う場所を探してこられたご様子を共有してくださり、ありがとうございます。
発達に特性のあるお子さんの園選びでは、保護者の方がご自身で情報を集め、園に問い合わせ、見学し、場合によっては何度も断られながら探していかなければならないことがあります。療育については、空きがなかったり、希望する頻度や通園形態が選べなかったりすることがしばしば聞かれますし、幼稚園や保育園、認定こども園についても、職員配置や加配の体制、園の方針などによって受け入れが難しいと言われることがあります。その過程で、不安や孤立感、焦り、悔しさを感じる保護者の方は少なくありません。
児童発達支援は、主に小学校就学前のお子さんを対象に、発達や生活面での困りごとに応じて、個別または集団で支援を行う通所サービスです。親子で通うところもあれば、お子さんのみで通うところもあり、週に数回通うタイプ、幼稚園や保育園のように長い時間過ごすタイプ、言語・運動・感覚面など専門的な支援を受けられるタイプなど、施設によって特徴はさまざまです。幼稚園や保育園、認定こども園と並行して利用する場合もあります。児童発達支援に通い始めたからといって、途中から幼稚園や保育園に入れなくなるわけではありません。療育を通して、お子さんの得意なことや苦手な場面、安心しやすい関わり方などが整理されることで、園生活を始めるための大切な手がかりになることもあります。
実際に、お子さんの成長や状況に合わせて、児童発達支援を利用しながら幼稚園・保育園・認定こども園に通ったり、途中から園生活へ移行したりするお子さんもいます。現状では、まだ保護者の方の努力に頼らざるを得ない部分も多くありますが、今後は自治体、療育機関、幼稚園・保育園・認定こども園がより連携し、支援を必要とするお子さんとご家族が、安心して園を選び、必要な支援につながれる社会になっていくことを願っています。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。