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霞ヶ浦水路群でフリップ一本勝負 オカッパリからヘビーカバーを攻略する3つのアプローチとは?

つり人オンライン

すべてのアングラーにフリップ&ピッチの喜びを知ってほしい。この連載はそのために生まれた。バスがモノに身を寄せる魚である限り、カバーフィッシングは不滅である。林圭一から魂のバトンを引き継いだ馬路久史が7ft6inのフリッピンスティックだけで日本のカバーと向き合っていく。今回はオカッパリに挑戦。霞ヶ浦に接続する水路群へ赴いた。

馬路久史(まじ・ひさし)◎1973年生まれ。愛知県出身・山梨県在住。学生の頃読んだ『Basser』に影響され、フルタイムプロを志して大学を中退。河口湖を拠点にトーナメント漬けの20代を過ごす。2004年、ケイテックに入社。故・林圭一さんとともにスイングインパクトシリーズを開発。2016年に2代目社長に就任。自身がデザインしたクレイジーフラッパーは、バスはもちろんチヌなどさまざまな魚種を魅了し続けている。現在は霞ヶ浦のW.B.S.プロトーナメントに参戦しながら、愛するカバーフィッシング道を突き進む。

写真と文◎Basser編集部

霞ヶ浦周辺水路でフリップゲーム

2023年から2年間にわたってカバーゲームの魅力を伝えてきた「ONLY Flippin’」。今回は、連載初のオカッパリへの挑戦となる。舞台は霞ヶ浦に接続する水路群だ。

馬路自身、本格的なオカッパリはバスフィッシング熱が再燃した学生時代の千代田湖(山梨県)以来30年ぶりとのこと。国内オカッパリシーンの最前線である霞ヶ浦において、オカッパリスタイルのメインストリームは、6ft10in・M〜MHパワーのベイトタックル1本。あるいはそこに食わせ用としてスピニングタックルを追加し、より幅広い状況やルアーに対応できるバーサタイルなスタイルだろう。これが安定した釣果を求めるアングラーの中ではスタンダードになっている。

しかし、中庸なバーサタイルスタイルは釣りの幅が広がる一方、結果として手が出せない領域が必ず出てくるのも事実。その一例がヘビーカバー攻略である。かつての本誌連載『川は生きているか』では、吉田幸二さんがたびたびフリッピンスティックにヘビーライン、テキサスリグの組み合わせでバスをキャッチしていた。しかし、記者はオカッパリで対ヘビーカバーに特化した釣りをしているアングラーを見たことはあまりない。馬路のねらいはまさにそこ、誰もが攻め切れていない不落城だ。果たしてオカッパリ最激戦区の霞ヶ浦水路群に、手つかずのバスは残されているのか。

絶対にねじ込み、絶対に獲るためのヘビータックル

朝5時。ファーストエリアに到着した馬路が手にしたロッドは、7ft6inのみで構成されたケイテックのナナロクシリーズ中最もヘビーな「768」(XHパワー)。ラインはPE4号で、極めつけは3/4ozのバレットシンカーに3.5inソルティ・コアチューブの組み合わせ。「絶対にねじ込み、絶対に獲る」という意思がビンビンに伝わってくるセッティングだ。

馬路「スカートというパーツが付いているチューブには、この時期バスが食っているであろうエビを模す意図もあります。ピュッと落ちて着底でスカートがふわっと開く。そんなアクションの緩急で誘いたいですね」

目の前には馬路のタックルセレクトに納得せざるを得ない光景が広がっていた。水路と馬路の間には、人の背丈より高いアシ(とたまにガマ)の分厚い壁。生半可なカバー撃ちタックルではリズムが作れないどころか、場所によっては水中にルアーを落とすこともままならないだろう。

そんな分厚い壁を、馬路のヘビーテキサスは面白いように突破し、そして生還してくる。リグ自体の貫通力はもちろん、7ft6inロッドだからこそより高い位置からルアーを操作でき、回収の際にもアシ壁を乗り越えやすくなるのだ。

ソルティ・コアチューブ3.5in(ケイテック)
フック:キロフック#2/0(デコイ)
シンカー:センキンバレット3/4oz(カンジインターナショナル)
ヘビーカバーへの貫通力、回収のスムーズさを最大限に高めたセッティング。ソルティ・コアチューブはケイテックの2層構造技術「コアショット製法」でハリ持ちのよい外部マテリアルの内部を、塩ぎっしりな高比重のマテリアルで満たしたチューブ。ソリッドな構造で自重があるため軽量シンカーを合わせても扱いやすく、また同じ理由からセットしたフックがズレにくい。テキサスロック(デコイ)をシンカーの前後に噛ませ(フックとシンカーの間は結び目の保護として機能)、前方にエサ釣り用の糸タイプのウキ止めをセットしてシンカーを完全固定。ワームから30cm部分のラインは黒のマーカーで塗って目立たないようにする

オカッパリからヘビーカバーを攻略する3つのアプローチ

沖からではなく岸(アシの裏側)からカバーを撃つため、そのアプローチもボートとは大きく異なる。馬路は主に以下の3パターンを実践していた。

(1)アシにわずかな隙間があれば、そこを正確に射抜いてカバー際にルアーを落とす。

(2)アシが突破できないほど分厚い壁となっていれば、天ぷら気味のキャストでそれを乗り越え、カバーよりやや沖にルアーを「ポチャ」と着水させる。俗に「ウエッピング」と呼ばれるアプローチ。

(3)ウエッピングは、なるべくカバー際に静かにルアーを落としたい場合、天ぷら気味に投げたルアーを空中でサミングして手前に寄せ、アシ壁の内側に沿ってスルスルとゆっくり落とす。

また、アシの先端付近は茎も柔らかく隙間も多いので、アシの上部を突き抜けさせる要領でキャストしてもOK。

理想は(1)のアプローチ。低弾道のキャストで着水音も抑えられるうえ、アングラーとルアー間のラインが一直線になるためフッキングやランディングでもミスが少ない。なにより、アシをラインが揺らさないのでバスにプレッシャーを与えづらい。

(2)はバスがアシの少し沖を回遊している朝イチや、カバーにいる活性の高いバスを少し沖に誘導して食わせるのがねらいのとき。

(3)は、ウエッピングをするしかないが、どうしてもカバー際に静かにルアーを落としたいとき。ただし、ラインがカバーを上から跨いでいるため、ルアーをアクションさせる際はアシを揺らしすぎないよう注意。

ルアーを着底させたら、周囲1mほどからバスを寄せるイメージで2〜3回リフト&フォールで誘う。ボートでは細かく刻んでキャストするのもよいが、ウエッピングはラインでカバーを揺らしやすいので、キャスト数は抑えてバスを誘いたい。

また、同じくプレッシャー対策の観点から、馬路は同じ立ち位置から正面だけではなく進行方向に向かって3〜4キャストすることも多かった。足音とディスタンスを気にしてのことだが、ルアーとの距離が離れるのでフッキングはラインスラックを巻き取ってフルパワーで行ないたい。

アシが薄かったり多少の隙間があれば、上を跨がずに積極的にテキサスを突っ込んでいく。余計なパーツがないチューブのテキサスは、貫通力や回収の際のスムーズさが極めて高いセッティング

キロクラスを含む4匹をキャッチ

この日、馬路はカバーへのピッチン&フリップのみで10バイト以上を引き出し、2匹のキロクラスを含む4匹をキャッチ。近年はとくに厳しいとされる霞ヶ浦水系。しかも日中の最高気温は35度という灼熱のなか、すばらしい釣果だと思う。

1匹目は6時過ぎ。水路の角、最もカレントが当たるアシ際で食ってきた。しかしその後はショートバイトやフッキングミスに苦しむ。おそらく30度は優に超えている高水温でバスのバイトが弱くなり、3/4ozシンカーを背負ったリグをしっかり吸い込めないのだろう。カバー越しにアプローチするウエッピングの特性上、フッキングパワーが伝わりづらいこともミスにつながっただろうが、これはある程度はやむをえない。

ファーストフィッシュは午前6時過ぎ。水路がカクっと曲がった角、最も流れが当たるアシでソルティ・コアチューブを食ってきた。一度も釣られた形跡のない美しいバスだ

昼食と休憩をはさんで夕方、馬路は大幅な調整をする。リグをチューブのヘビーテキサスから、クロー系(クレイジーフラッパー3.6in)を合わせたオーソドックスな1/4ozテキサスへとチェンジ。軽めのシンカーと抵抗のあるワームを合わせることでよりフォールスピードを抑え、そこにラトル入りのビーズを噛ませてさらにアピール力をアップさせた。つまり、重く抵抗のないテキサスが「ズドン」と落ちるところから、水押しの強いテキサスが「ふわ〜」と落ちるようにアピールの質を変えたのだ。

これが大正解。夕方でバスの食い気が立ってバイトが深くなったのかもしれないが、ストップフィッシングまでのラスト1時間で3バイト3フィッシュの固め撃ち。最後に入ったスポットでナナロクを弓なりにしたのは1300gクラスのナイスフィッシュだった。

馬路「こんなにバイトがあるとは……。オカッパリのフリップ、楽しすぎる……!!」

クレイジーフラッパー3.6in(ケイテック)
フック:キロフックナロー#3/0(デコイ)
シンカー:バザーズワームシンカータイプバレット7g(ダイワ)
ビーズ:プラスチックラトルビーズ(メーカー不明)
日中のショートバイト対策と、よりスローフォールかつ強アピールを目的として、夕マヅメから投入。ラトル入りビーズを使用しより広範囲のバスにアピールできる。これが大正解で、1時間で3バイト3フィッシュという結果をもたらした

午後6時過ぎ、日中に2度のフッキングミスがあった流入河川の最上流部にアタック。3度目の正直でぶち抜いたのは1300gクラスのビッグフィッシュ! オカッパリにおけるフリップゲームに大きな可能性を感じた1日となった

バスは一級スポットにいた

この日の取材で明らかになったことは、霞ヶ浦のオカッパリというもはや掘り尽くされたかに思えた鉱脈にさえ、手つかずの金塊(≒バス)が多く眠っている、という事実だ。

もちろん、「フリップがベスト」と言うつもりは毛頭ない。偶然起こったボイルや、フラフラと泳ぐ見えバス、そしてヘビータックルを必要としないライトカバーやオープンエリアの釣りでは、テキサスリグでは食わせきれない魚も多いだろう。それでも、馬路が「ここにいるバスはまだルアー自体を見たことがないはず」と言うほどほかのアングラーがアプローチをためらうようなヘビーカバーには、口元に無理やりルアーを届けてやるだけで食ってくる魚が確かにいるのだ。

もう一点は、「バスは最もいい場所にいる」ということ。この日、ミスバイトを含め、反応があったスポットは延々と続くカバーのなかでも驚くほど決まっていた。流れの当たるカーブの一等地や、流入河川の最上流部など、絵にかいたような夏の定番だ。おそらくだが、個体数が決して多くない現在の霞ヶ浦では、場所の取り合いが起きず、バスが居心地のいい場所に陣取れるのではないだろうか。それが攻めやすい場所であればプレッシャーもかかるのだろうが、濃いカバーが絡めばタイミング次第で簡単に食ってくるというわけだ。よって、同じようなストレッチを延々と撃つよりも、条件のいい場所だけを休ませつつ時間を空けて入り直しながら釣る方が結果は伴うかもしれない。

馬路「普段はボートでしかやらない霞ヶ浦。その周辺には、オカッパリならこんなに別の世界が広がっていることがわかって、純粋に楽しかった。日中はショートバイトに苦しむ時間もあったので、同じヘビータックルでもよりフィネスに誘える高比重ノーシンカーなども使えばもっと釣果が伸びたかもしれません。夏は目線の上でフワフワ誘わないと食わない魚もいますからね」

近年はアシやガマだけでなくナガエツルノゲイトウといったマットカバーも増えつつあり、霞ヶ浦ではオカッパリであっても、ヘビータックルによるフリップの活躍の場は広がっている。ぜひ一度フリッピンスティック1本で、これまで見送るしかなかったヘビーカバーに向き合ってほしい。

TACKLE
[ソルティーコアチューブ3/4ozテキサス用]
ロッド:ケイテックカスタムロッドKTC768-SPG(ケイテック)
リール:メタニウムシャローエディション(シマノ)
ライン:UVF フロッグデュラセンサー×8+Si2 4号(ダイワ)

[クレイジーフラッパー1/4ozテキサス用]
ロッド:ケイテックカスタムロッドKTC765-SPG(ケイテック)
リール:SLX BFS XG(シマノ)
ライン:R18 BASS 14Lb(シーガー)
\あわせて読みたい/ 釣果を劇的に変えた「ルアー作りの発明」6選 重心移動、タングステン…偉大なイノベーションの物語 \あわせて読みたい/ 【一瞬の思い出を、かたちのある一生の宝物に】釣りの思い出を“紙の写真”で残す、という贅沢

※このページは『Basser 2025年9月号』を再編集したものです。

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