デベロッパーから相次ぐ「新築マンション引渡し遅延」の可能性通知、いま現場で何が起きている?│福岡由美のマンションニュースピックアップ
工期の遅れや竣工時期を先送りする物件も散見されている
5月に入り、大手マンションデベロッパー各社が相次いで「新築マンションの引渡し遅延」「設備・仕様変更の可能性」を契約者へ通知し、ナフサショックによる「資材調達危機」のニュースと共に大きく報じられている。
現時点では「あくまでも可能性であって、実際に遅延が発生しているわけではない」とのことだが、実は筆者の取材現場では(数としてはまだ少ないものの)工期の後ろ倒しや竣工時期を先送りする物件が散見され、今後の動向が見逃せない状況だ。
では万一「引渡し遅延」が発生したら、契約者への補償はどうなるのだろうか──新築マンションの売買契約書には「天災地変、天候異変、経済情勢の急変、行政指導その他やむを得ない事情で遅延する場合は補償対象外となる」旨が明示されており、今回のケースは「経済情勢の急変」に該当する可能性がある。
そのため筆者が複数の物件担当者へヒアリングを行ったところ「引渡しが遅延しても、原則として補償はしない方針です」との回答が多く見られたが、同時に「他社動向を鑑みながら検討を進めていきます」といった回答もあり、現場では対応を考えあぐねている状況のようだ。
引渡しの遅延は住宅ローンの金利上昇リスクを伴う
もうひとつ注意したいのは住宅ローンの「金利上昇リスク」だ。意外にご存じない方も多いようだが、多くの住宅ローンは契約時ではなく「引渡し時の金利」が適用されるため、金利上昇局面で引渡しが遅延すれば、月々の返済額負担も増大することになる。
こうした状況を考えると「今はマンション購入を控えるべきでは?」と感じるかもしれない。しかし一方で、今後建築費高騰や資材調達リスクを背景にデベロッパー各社が慎重になり、新築マンションの供給数自体が抑制されていく可能性もある。
だからこそ、いま「惹かれるマンション」に出会ったらまずは前向きに検討することもひとつの選択肢だ。そして契約書面の補償内容や資金計画を丁寧に見直し、“本当に価値ある住まいかどうか”を冷静に見極めてみてほしい。
福岡由美のマンションニュースピックアップについて
住宅ジャーナリストの福岡由美が、マンションに関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。マンション業界関係者やマンション所有者はもちろん、マンションに関心がある人にとって、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。
福岡 由美
住宅ジャーナリスト
大手生命保険会社、ラジオ局レポーターを経て、住宅情報誌のレポーターに。
現在は東京・名古屋を拠点に全国で取材活動をおこないながら
『女性のためのマンション購入セミナー』などの講師を務めている。
株式会社ヒューズ・エンタープライズ代表取締役。