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BRADIO『FUNK FIRE』インタビュー――ファンクモンスターがアニバーサリーイヤーに放つアルバム!

encore

──2025年はデビュー15周年イヤーということで、1月から『FUNKY SET』、『BRADIO Billboard Live 2025』、『Back To The 2010-2017』と、さまざまなライブを行なっていますが、ここまでいかがですか?

真行寺貴秋(Vo.)「15周年のお祭りということで、“BRADIO 15th Anniversary Commitment”という15個の公約実施を宣言していて。ファンの方に支えてもらいながら一緒に楽しめているという実感があります。でも気持ちとしては、いつも通りと言えばいつも通りというか…。いろんな企画が目白押しですが、常に持っている“とにかくみんなに楽しんでもらいたい”という気持ちの延長線上でお祭りができています」

──ライブでは普段はあまりやらない昔の曲をやったりも?

大山聡一(Gt.)「それこそ『Back To The 2010-2017』は、2010年から2017年の7年間にリリースした全49曲を2日間に分けて、25曲ずつやったんです。これは本当に…あの、言うのは簡単だったんですよ。企画の時点では“面白そう! アニバーサリーっぽいね”、“昔から応援してくれている人には懐かしく感じられるし、最近知ってくれた人には新鮮だし”って感じで盛り上がったんですけど…まぁ、いい経験になりました(笑)。アルバムのツアーとかはあっても、ここまでのコンセプトライブってこれまであまりやったことがなかったので面白かったです」

酒井亮輔(Ba.)「当時のツアー以来一度もライブで演奏していない曲とか、下手したら一回もライブでやっていない曲もあったんじゃないかな? “この曲ってこんなに盛り上がるんだ”とか“意外とこういう形で伝わるんだ”みたいなものも感じられて面白かったです」

──もしかしたら、今まであまりライブでやっていなかったけど、この先ライブのセットリストに入ってくるような曲もあるかも?

真行寺「あー…」

──それはなさそうですね(笑)。

大山「今はちょっとおなかいっぱいかな(笑)」

酒井「ちょっと濃厚すぎてあまり詳細を思い出せないんです(笑)。でも時間が経って“そういえば、あれよかったな”みたいな曲が出てくるかもしれないので、そしたら入るかもしれません」

──久しぶりに演奏して“いいな!”と思った曲はありますか?

真行寺「「真夏の悪魔」は良かったな〜。2014年の曲なんですが、今聴いても“いい曲だ!”と思いました」

大山「どれも好きですけど「Save Our Souls」は、当時、“作ったはいいけどなんかしっくりこない”という話になってあまりライブでやらなかったんです。だけど今回、強制的にやってみたら、音楽的な経験値が積み重なったこともあってか、“当時こういう感じでやりたかったんだろうな”というものができて…いい感じに表現できました」

真行寺「ちょっと前まで「Save Our Souls」の歌詞が“めっちゃダサい”と思っていたんですけど、今やるとなんかフィットしました。そういう発見もありました」

酒井「全部好きなんですけど「思い通りにならない世界」は、普段ハッピーな僕らが見せるちょっと闇な部分のある曲で…。当時からあまりライブでもやってなかったと思うんですが、やってみたらやっぱり良いなと思いました」

──そして、15個の公約の4つ目として、アルバム『FUNK FIRE』を完成させました。今作は、15周年の公約として制作に取り掛かったのでしょうか?

真行寺「いえ、アルバム制作に関してはそこまで15周年ということは意識していないですね」

──いつも通り、今年もアルバムを作ろうというところからなんですね。2023年リリースのアルバム『DANCEHALL MAGIC』は“ファンキー”がテーマ、昨年リリースの『PARTY BOOSTER』は“パーティー”がテーマでしたが、今回の『FUNK FIRE』は制作前から何かテーマやコンセプトは掲げていたのでしょうか?

真行寺「ディスコって、歴史的にもマイノリティなところから始まったものなんですが、今回は地下のディスコとか、そういう狭いところから抜け出して、もう少しワイドな世界観、野外フェスなどの大きなところで鳴るようなイメージのアルバムを作ろうというのが、ざっくりしたテーマでした。個人的には、『DANCEHALL MAGIC』、『PARTY BOOSTER』、そして『FUNK FIRE』で、“BRADIOとはいったいどんなバンドなんだろう?”というものを改めて確認したい気持ちもあって。僕たちが“これがBRADIOだ”っていうアルバムを作って、それをファンの皆さんと確認し合いたいという気持ちもありました」

真行寺貴秋(Vo.)

──ここからは収録曲について聞かせてください。まずは先行配信「On Fire」。この曲はラテンのリズムに乗せたダンスチューンですが、この曲ができた背景を教えてください。

大山「“ちょっとグルーヴィなフレーズを出して”って亮輔に言って、テーマとなるフレーズを出してもらいました。あとはもう、とにかく蒸し暑く踊る曲にしていった感じです。去年、南米に行かせてもらったんですけど、そこで感じた熱量や南米の音楽が持っているグルーヴやリズム、内からくる熱さみたいなものを出していきたいと思って作りました」

真行寺「アルバムのテーマとして“広い”と言いましたけど、その他に、“いろんなリズムの曲をやりたいよね”っていう話も出たんです。そういう中で、去年チリに行った経験が色濃く出たのがこの曲だと思います」

──チリで感じたラテンのリズムや南米の音楽はどのようなものでしたか?

真行寺「リズムとか音楽もそうなんですけど、そもそも、人間が熱い。僕たちが経験したのは本当に一部だと思うんですけど、僕たちがライブをやらせていただいたときも、ステージに出る前から“オーレオレオレ〜♪”ってコールが起こっていたりして。本当に音楽と生きている人たちなんだなって思いました。そういうものを持って帰ってきたからこそ、この曲ができたと思います。こういう曲って、途中で“氷”とか“アイス”という単語を入れて一度熱を冷ましたくなるんですけど、この曲は“冷まさなくていいんじゃないか?“と思って、入れなかったんです。”南米はもっと暑かったもんな“と思って」

酒井亮輔(Ba.)

──そもそも酒井さんのベースフレーズから始まった曲ということですが、酒井さんとしてはどのような想いでこのフレーズを出したのでしょうか?

酒井「その場でバッと出したやつなんで、正直あまり覚えていなくて…。ただ、ラテンっぽい感じと、サビのディスコっぽい感じがうまい具合に組み合わさって、いい曲ができたと思っています。夏にぴったりな曲だと共います」

大山「面白いのが、この曲ってサビというサビがないんですよ。聴く人によってサビだと思うところが変わってくる曲で…。だからレコーディングのときに“サビのここ、ちょっとこうしたいんですけど”って話をすると“サビってどこのこと言ってんの?”って会話があったりして(笑)。歌詞にも物語があるわけじゃないですし、とにかくこの一体感に酔いしれてほしいです」

──先行配信として「On Fire」がリリースされた時点で、ファンの方は“ということは、今回のアルバムは…?”と期待しているでしょうね。

大山「はい。“踊れるアルバムになることは間違いないだろう”ということには気づいていただけたと思います」

──3曲目「Ten」は周りと比較して焦る姿などが綴られた、ちょっと他の楽曲とはテイストの異なる楽曲です。

真行寺「この曲は聡一が作ってきた曲です。デモの時点でかなり完成されていて、“インスト曲として出していいんじゃない?”というくらいの曲だったんです。だけど聴いているうちに、なんとなくバレエを習っている女の子と、“1、2、3、4”ってカウントしている先生が思い浮かんで…。そこから、ダンスのオーディションを受けている曲にしようと思いつきました」

──そうだったんですね。私はてっきり、バンドの15周年の節目だし、若い頃の焦燥感を描いたのかと思いました。

真行寺「そうやって違う意味で捉えていただけるということは、普遍的な歌詞が書けたということなので、非常にうれしいことです」

大山聡一(Gt.)

──大山さんは、トラックはどのようなイメージで作ったのでしょうか?

大山「それこそさっき話した“広さ”や“大きさ”を、「未来サイダー」や「生存フラグのサタデーナイト」では王道に表現したので、違う形で表現したかったんです。内から来る開放というか…。もう少しグッとしたものから開放されるようなイメージです。それをちょっと攻撃的なサウンドで作ってみたくて作ったのがこの曲です。この曲は一番エゴイスティックに作った感じもあって。受け手の方がどう感じてくれるかな?ということよりも、ドラマー、ベーシスト、ボーカリスト、それぞれのプレイヤーに期待するものを詰め込んで詰め込んで作りました。メロディを乗せるにしても、普段はもう少し選択肢がある状態で渡すんですが、今回は絞って絞って。僕が“お前、メロディーつけろよ”って言われたら無理なんじゃないかと思うくらいの状態で、“どう歌を乗せてくるのかな?”って思ったんですけど…さすがでしたね。貴秋がつけたサビが<飛び立っていけスカイへ>で、もう“いってらっしゃい!”って感じでした」

──先ほど真行寺さんが説明してくださったイメージの歌詞を読んだときはどう思いましたか?

大山「それこそ内から外に広がっていくイメージだったので、“リンクしたな”と思いました。それに、メンバーですけど、真行寺貴秋という人物を15年間傍から見ているので、自分の中にいろんな“真行寺貴秋像”があるんです。ふざけているとか、ちょっとスケベとか、いいやつとか、ちょっと頭悪そうとか(笑)。「Ten」には、そのなかで個人的に好きなタイプの真行寺貴秋が出てきている感じがしました」

──各プレイヤーへの期待を込めて作られた楽曲ということですが、酒井さんは受け取っていかがでしたか?

酒井「この曲、すごく難しいんですよ。スラップという奏法を使っているんですけど、ひさしぶりに指の皮がバッコリいきました。なんていうか、点が多いんですよ、この曲。スラップ自体はできないわけじゃないんですけど、ここまである曲はなかなかないので、ダメージが蓄積されました」

真行寺「「Ten」と“点”、掛けたのかと思った(笑)」

酒井「いやいや(笑)」

──個人的には4曲目の「Say Cheese!」がとても印象的でした。サウンドも歌詞も爽やかな楽曲で。

大山「これは…“風を感じたい”っていうそれだけで(笑)。仕事上、閉め切った部屋にいることが多いので、窓を開けて風が入ってくるとすごく気持ちいいじゃないですか。BRADIOってかなり強引で、割とフルエネルギーで持っていくタイプなので。それはそれですごく必要なものだと思うんですけど、たまには優しい風を感じて穏やかな気持ちになれるような瞬間も欲しいと思って、優しいトーンと、変則的なものを入れない安心感のあるサウンドメイクをしました」

真行寺「この曲はもともとコンペに出すために作った曲だったんです。そのテーマが“友情”だったので、“いい歌詞が乗せられそうだな”と、最初聴いたときは思いました。ただ、コンペは通らなくて…。だけど、せっかくなら友情ものを書きたいと思いまして。というのも、これまであまり友情モノを書いたことがなかったんです。そんなに友達も多くないですし…。実際に書き出してみると、“書けないかも”って思いました。“そもそも友情ってなんだろう?“と思って”友情“で検索したりして。そんなとき、フジテレビ『オールスター合唱バトル』で合唱をやることになりまして。最初は人見知りしながらも、声をあわせていると一つになれる感じがあって。しかも毎週練習があって。そうやってみんなで一つのものを作ることとか、みんなで手をつないで歌うとか、”こういう雰囲気が友情なのか“と感じたので、それを噛みくだいて、サウンドにあわせてこの歌詞を書きました。合唱の経験にはかなり助けられました。いまだに”友情“というものはわかっていなくて、探している途中ではありますけど」

──実際、友情をテーマに歌詞を書いてみていかがでしたか?

真行寺「いつもは手癖で書いているところがあるので、新しい扉が開いた感じはめちゃくちゃあります。挑戦してみてよかったです。コンペがなかったら友情ものを書くことはなかったでしょうし。いい経験ができてよかったです」

──そして触れたいのは10曲目「バッカナーレ」。この曲、最高ですよね。

真行寺「最高ですよね!」

──この曲はどのようにできた曲なのでしょうか?

大山「貴秋が“こういうテイストの曲をやりたい”って、映画『ブルース・ブラザース』の教会で歌うシーンの映像と一緒にワンコーラスのデモを持ってきたんです。その時点でもう仮タイトルが「バッカナーレ」でした。やりたいことがはっきりしていた分、作りやすかったです。サウンドとしては一番ごちゃごちゃしていますけど(笑)、考え方は一番シンプルでした。“みんなで大騒ぎするんでしょ”ってそれだけなので。アレンジも、最初の時点では、ピアノとベースと打ち込みと仮歌が入っているだけだったんですが、そこにひたすら具を足していくみたいな…。僕のおばあちゃんは、友達が来ると“これも食え、あれも食え”って次々とおかずを出すタイプだったんですけど、そういう感じで“これもあるぞ、あれもあるぞ”みたいなものを全部入れました(笑)。普通はそこから引き算していくんですけど、もう入れ切って。だからアレンジはすごく楽しかったです」

真行寺「この曲はやりたいことがまっすぐすぎて、制作の印象がすごく薄いんですよ…。曲は濃いんですけど(笑)。ただ、ずっとバカをやっていて“これはマズイ”と気づいて。真面目なところを入れようと思って、セリフのところはしっかりこだわって書きました」

大山「オケはすごくトラディショナルなことをやっているんですよ。だから僕は逆に、“「バッカナーレ」とか言っているのに真面目すぎてマズイ”と思って、ふざけたことをしました。それが、そのセリフからのミュージカル調になるところで…」

──大山さんが“真面目すぎてマズイ”と思ってふざけたところに、真行寺さんが真面目なことを乗せるという(笑)。

大山「息が合ってないですね(笑)」

酒井「僕もちょっとふざけてみようと思って、違うフレーズを一旦入れてみたんです。そしたらマジで崩壊して(笑)。やっぱりトラディショナルにやろうと思いました」

──ここまでざっと収録曲について聞いてきましたが、その他にもアルバム『FUNK FIRE』にはバラエティ豊かな楽曲が並んでいます。このアルバムは、総じてどんな1枚になったと思いますか?

真行寺「自分たちの中でのトレンドや自分たちの想いも反映できましたし、ライブで遊べる曲がさらに増えました」

──8月2日には日比谷野外大音楽堂でのライブ『SUMMER SUMMER at HIBIYA YAON』があり、9月から『FUNK FIRE』を携えた『FUNK FIRE Release Tour 2025』が始まります。お話を伺っていると、15周年も特段大きな節目として見てはいらっしゃらないような気がしますが、皆さんはこの15周年をどのように捉えているのでしょうか?

大山「15周年は、飲みに行く理由みたいなものだと思っています(笑)。ただ、“せっかく周年なんだからこういうことをやろうよ”みたいなアイデアは今年だからできるものでもあるので、とにかくファンの皆さんに楽しんでもらえたらうれしいです」

真行寺「僕たちも楽しんでやっていますし。公約もまだまだ残っています。面白そうなものがこれからも出てくるので、一緒に楽しみたいですね」

──では16年目以降、バンドとしてはどのようになっていきたいと思っていますか?

真行寺「今は目の前しか見えていないというのが正直なところです。今までもあまり先の展望を考えず、行き当たりばったりでやってきましたし…。ただ、『DANCEHALL MAGIC』、『PARTY BOOSTER』、『FUNK FIRE』と、アルバムを3枚リリースして、“BRADIOってこうだよね”というものが提示できたので、これからはまた新しいBRADIOを見つけたいという気持ちもあります。“ファンキー”とか“ダンス”、“パーティー”というワードを言わないくらいのBRADIOが出てくるかも?…全然わからないですけど、この先のBRADIOが自分たちでも楽しみです」

酒井「今後に関しては、15個の公約が終わってみないとわからないと思っています。野音もあるし、ツアーもあるし、まだ発表していないこともいろいろ待っていて。それらを全力でやってみて何を感じるか? それによってどう動いてくのかが変わっていくと思います。とはいえ、ずっといい感じに活動していきたいですね」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/中村功

RELEASE INFROMATION

2025年7月16日(水)発売
CRCP-40705/7,700円(税込)

BRADIO『FUNK FIRE』

2025年7月16日(水)発売
CRCP-40706/3,300円(税込)

BRADIO『FUNK FIRE』

LIVE INFORMATION

2025年8月2日(土) 東京 日比谷公園大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00

BRADIO 15th Anniversary「SUMMER SUMMER at HIBIYA YAON」

2025年9月19日(金) 兵庫 太陽と虎
2025年9月28日(日) 岡山 IMAGE
2025年10月13日(月・祝) 長野 CLUB JUNK BOX
2025年10月17日(金) 東京 Zepp Shinjuku
2025年10月19日(日) 岩手 CLUB CHANGE WAVE
2025年10月31日(金) 福岡 DRUM LOGOS
2025年11月1日(土) 広島 広島CLUB QUATTRO
2025年11月7日(金) 北海道 PENNY LANE24
2025年11月8日(土) 北海道 CASINO DRIVE
2025年11月22日(土) 宮城 Rensa
2025年11月23日(日) 福島 HIPSHOT JAPAN
2025年11月29日(土) 大阪 GORILLA HALL
2025年11月30日(日) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2025年12月7日(日) 新潟 LOTS

BRADIO 15th Anniversary“FUNK FIRE” Release Tour

タイトル未定
2025年12月12日(金) 東京 恵比寿LIQUIDROOM

BRADIO 15th Anniversary「Back To The 2010 - 2017」
【振替公演】 2026年5月5日(火・祝) 東京 渋谷CLUB QUATTRO
【振替公演】 2026年5月6日(水・祝) 東京 渋谷CLUB QUATTRO

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