【独自取材・『福祉×AI』の先進事例】放課後等デイサービスの“最も重い業務“を改革 にいがたAIビジネス(NAB)が導入支援
全6回の研修兼システム導入支援を終えた株式会社C.A.R.E.の参加メンバーと、にいがたAIビジネス株式会社の朝妻拓海COO(一番左)
新潟市内9拠点で放課後等デイサービスを展開する株式会社C.A.R.E.が、業務の効率化と人手不足という慢性的な課題を解決するため、生成AIの導入に踏み切った。
支援にあたったのは、AI導入支援を専門とするにいがたAIビジネス株式会社(NAB、新潟市中央区)。同社が支援した全6回の研修が7月に完了し、現場ではすでに大きな成果が表れている。人とテクノロジーが福祉現場でどう共存し、支援の質を高めているのか———その先進事例を取材した。
“最も重い業務“をなんとかしたい
個別支援計画書の参考様式(新潟市ホームページより)
C.A.R.E.にとって最大の業務負担となっていたのが、『個別支援計画』の作成業務だ。これは、障害のある子ども一人ひとりに対して6カ月ごとに立てる支援計画書で、現場職員、とりわけ「児童発達支援管理責任者(自発管)」の業務量を大きく圧迫していた。経験やスキルにより業務の重さに差があり、慣れない職員では1人あたり5時間以上かかるケースもあるという。この業務負担が原因で職員のキャリア形成が停滞し、新規利用者の受け入れが遅れるといった問題にもつながっていた。
こうした現場の悩みに対し、にいがたAIビジネスが提供したのは生成AIを活用した「支援計画たたき台自動生成ツール」。ChatGPTを活用し、職員が入力した情報から案を出力し、最終調整だけを人が担うというハイブリッド型のシステムだ。さらにGoogle AI Studioなども併用し、関連業務の自動化・効率化も進めた。
AIシステムの導入ではなく、「自走できる仕組み」を提供
研修最終回では、受講者の1人がNABの支援により制作した効率化ツールを他のメンバーに共有する様子がみられた
にいがたAIビジネス株式会社の朝妻拓海COO
実装にあたっては、システムの納品だけでなく、「現場が自ら学び、使いこなせること」に重点を置いた。全6回・約12時間の集合研修では、C.A.R.E.の各拠点のマネージャークラスの職員7人が参加。AI操作に慣れていない職員も多かったが、研修を通じて基本操作から応用活用までを習得し、実際の支援計画作成にすぐ活かせるレベルにまでスキルを高めた。
「以前は3時間かけていた支援計画が、今ではAIのたたき台をもとに10分ほどで出力され、1時間以内に完成できることもあります」と話すのは、新潟市南区にある施設「STEP BY STEP」のマネージャー・石山さん。表現や言い回しに悩む時間が減ったことで、利用者と向き合う時間や職員同士の相談時間が増え、チーム全体の支援力が向上したと手応えを語る。
福祉の仕事を「最先端でかっこいいものにしたい」
株式会社C.A.R.E.のボストン朋子専務取締役
こうした変化は、職員一人ひとりの働き方やキャリアにも影響を与えている。「自発管になるのが怖い、という職員が多かったのですが、AIが下支えしてくれることで不安が軽減され、キャリアに挑戦する人を増やすことができる」と語るのは、C.A.R.E.のボストン朋子専務取締役。
業務効率化により生まれた時間を、新しい取り組みにも活用しており、来春にはインクルーシブ保育を取り入れたインターナショナル保育園の開園も予定している。「福祉の仕事を“古くさい”ではなく、“最先端でかっこいい”ものにして、若い人が集まる業界にしたい」と意欲を見せる。
にいがたAIビジネスの大竹崇仁代表取締役CEOは、「福祉分野はITが遅れがちな業界だが、今回の事例はマネージャー層が“AI人材”として育ち、自ら業務改善に取り組む流れが生まれた。これは全国的に見ても先進的」と語る。
同社の朝妻拓海COOも「福祉業界特有の“膨大な書類作業×人手不足×変化するガイドライン”という構造に対し、AIは即効性のある解決手段になる」と手応えを語った。
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今回の取り組みは、単なる作業効率化ではなく、現場のマインドチェンジと人材育成にも波及している。福祉から教育、行政まで――生成AIは今、社会課題の最前線に届こうとしている。
(文・撮影 中林憲司)
【関連サイト】
にいがたAIビジネス株式会社
児童発達支援・放課後等デイサービス エコグループ(株式会社C.A.R.E.)
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