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「中国空母が太平洋で同時展開 」台湾有事を見据えた米軍牽制の戦略か?

草の実堂

画像 : 中国軍の空母「遼寧」(りょうねい)wiki c Baycrest

2025年6月、中国海軍の空母「遼寧」と「山東」が、日本の太平洋側で初めて同時に活動したことが防衛省によって公表された。

この異例の動きは、台湾有事を想定した中国の戦略の一環であり、特に米軍の介入を最大限阻止する意図があると分析されている。

両空母の展開は、中国が「第2列島線」と呼ばれる小笠原諸島からグアムに至るラインを越え、太平洋での作戦能力を誇示する狙いを持っている。

この動きは、地域の安全保障環境に大きな影響を与え、日米同盟の対応力が問われる事態となっている。

空母2隻の同時展開の背景

画像 : 中国軍の空母「遼寧」(りょうねい)wiki c Baycrest

防衛省によると、6月7日から9日にかけて、沖縄や小笠原諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、「遼寧」と「山東」が戦闘機やヘリコプターの発着訓練を実施した。

これは、中国海軍の空母が太平洋で同時に活動した初の事例であり、防衛省は警戒監視を強化している。

特に「遼寧」が「第2列島線」を越えたのは初めてで、「山東」も同ライン周辺まで進出したことが注目される。

これらの海域は、中国が有事の際に米軍の接近を阻止する戦略的な防衛ラインと位置づけており、台湾有事を想定した訓練である可能性が高い。

中国海軍は、過去30年以上にわたり国防費を急速に増大させ、海軍戦力の近代化を進めてきた。
現在運用中の空母2隻に加え、3隻目の空母「福建」の就役が2025年前半にも予定されており、将来的には5隻体制を目指すとされている。

この軍事力の増強は、台湾海峡や南シナ海での影響力を拡大し、米軍を中心とする西側諸国の介入を牽制する戦略の一環だ。

特に、台湾有事の際には、米軍の空母打撃群が極東に展開する可能性が高く、中国はこれを阻止するために空母機動部隊の運用能力を強化している。

台湾有事と米軍介入阻止の戦略

画像 : 左が第一列島線、右が第二列島線 public domain

中国の軍事ドクトリンでは、台湾有事の際に「第1列島線」(南西諸島から台湾、フィリピン)と「第2列島線」を防衛ラインとし、米軍の接近を阻止することが重視されている。

今回の空母2隻の展開は、この戦略に基づく実戦的な訓練と見られる。

具体的には、台湾を海峡と太平洋側から挟み撃ちにする形で空母を配置し、米軍の空母や支援艦艇の進出を妨げるシナリオを想定している可能性がある。

また、沖ノ鳥島のEEZ内での戦闘機発着訓練は、日本近海での作戦遂行能力の向上を目的としたものと推測される。

さらに、6月7日と8日には、中国軍のJ-15戦闘機が海上自衛隊のP3C哨戒機に異常接近する事案が発生。
高度差のない状態で約45メートルまで接近し、ミサイルを搭載していたとされるこの行為は、意図的な牽制と見られている。

防衛省は「偶発的な衝突を誘発する危険な行為」として中国側に再発防止を申し入れたが、中国外務省は「国際法に沿った活動」と主張し、日本側に「危険な偵察」を停止するよう反論した。

このような軍事的挑発は、米軍や自衛隊の監視活動をけん制し、太平洋での中国の影響力を拡大する意図を反映している。

日米同盟への影響と今後の課題

画像 : 中国人民解放軍 CC BY 4.0

中国の空母展開は、日米同盟にとって重大な挑戦だ。

米国は過去の台湾海峡危機(1996年)や北朝鮮のミサイル発射時(2017年)に空母を複数展開した実績があり、台湾有事でも同様の対応が予想される。

しかし、中国が空母3隻体制を確立した場合、米軍の1隻の空母打撃群では対抗が難しくなり、撤退の可能性も指摘されている。

このため、日米は共同で中国海軍の動きを牽制する必要がある。
日本の海上自衛隊は、いずも型護衛艦の空母化を進めるなど対抗策を講じているが、中国の急速な軍事力増強に対処するにはさらなる連携強化が不可欠だ。

また、与那国島など沖縄の離島では、台湾有事を想定した医師派遣の困難さが問題となっている。
地域医療の維持は、軍事衝突時の後方支援にも影響を与えるため、日米は戦略的な視点からこれらの課題にも取り組む必要がある。

中国海軍の空母2隻の同時展開は、台湾有事を念頭に置いた米軍介入阻止の戦略的訓練である。
日本のEEZ内での活動や自衛隊機への異常接近は、中国の軍事の自信と挑発的な姿勢を示している。日米同盟は、情報共有や共同演習を通じてこの脅威に対応し、抑止力を強化する必要がある。

中国の空母戦力の増強が続く中、地域の安定を維持するためには、国際法に基づくルール遵守を中国に求める外交努力も欠かせない。

今後の中国の動向に注目し、日米は一層の連携を深めるべきである。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

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