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マイキー・マディソンの源流は梶芽衣子「女囚さそり」シリーズは今も世界を射抜いている!

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1972年12月30日 映画「女囚さそり 第41雑居房」公開日

連載【ディスカバー日本映画・昭和の隠れた名作を再発見】vol.16 -「女囚さそり 第41雑居房」

いかがわしい魅力、想像力が鍛えられた映画のポスター


小学生時代は約2キロの道のりを徒歩で通学していたのだが、楽しみは映画の看板を見ることだった。電柱や八百屋の入り口、農道沿いの小屋など、至るところに、ポスターの貼られた看板が立てかけられていた。上映中のものと次回上映作のポスターが貼られ、上映が終わると次の映画のポスターに張り替えられる。2〜3週間おきにどこかが入れ替わるので、新しいポスターに変わる度に、これはどんな映画なのだろう? と妄想を膨らませる。とくにホラー映画のポスターは、足を止めて凝視したりもした。

今となっては信じられないことだが、成人映画のポスターも普通に貼られていた昭和という大らかな時代。さすがにこちらは恥ずかしくて凝視できなかったが、横目でチラ見はした。ともかくホラーもそうだが、映画館で上映される映画には、どこかいかがわしい魅力があった。大人の世界―― それも不健全な部類のもの―― を垣間見たような、そんな吸引力。まあ、小学生の小遣いでは映画鑑賞料金には足りないので実際には観られないことが多かったが、おかげで想像力はかなり鍛えられたと思う。

女性刑務所を舞台にした「女囚さそり」シリーズ


そんなある日、これは!? と思うものが目に留まった。“さそり” というひらがながタイトルにはある。漢字は難しくて読めない。ポルノっぽいが、そうではなさそうだ。当時は、いかがわしいという言葉を知らなかったが、筆者の "いかがわしいセンサー" には確実に引っかかった。この頃は美川憲一の「さそり座の女」がヒットした後だったと思う。子どもにはよくわからないが怖い歌詞だったし、この映画の “さそり” にも何か含みがあるのだろう。というのも、主演女優の射るような目つきが怖かったからだ。

この映画こそ、1972年に始まった東映のバイオレンス『女囚さそり』シリーズ。篠原とおるの人気漫画に基づき、女性刑務所を舞台に、そこで起こる暴力と復讐、ひいては主人公の凄まじい情念を描いている。1972年は筆者はまだ幼稚園児だったが、なにぶん雪深い田舎住まいだったので、東京公開から半年以上遅れて地元の映画館にやってくることはザラ。このシリーズは1977年まで続いたので、筆者が見たポスターは後のシリーズだったのかもしれないが、今となってはどれか思い出せない。

それでも主演の梶芽衣子の目力は深く刻まれた。彼女は第1作『女囚701号 さそり』から第4作『女囚さそり 701号恨み節』まで主演を務めてシリーズを牽引。ちなみに第5作は多岐川裕美、第6作は夏樹陽子が主演を務めている。筆者は大学生になって初めてこのシリーズを観たが、やはり面白い。とりわけ、伊藤俊也が監督した最初の3作はどれも傑作だ。

セリフはたったの2つ、目力で強烈な怒りを表現する梶芽衣子


どれかひとつをあえて選ぶなら、第2作『女囚さそり 第41雑居房』だろう。梶芽衣子扮する、さそりこと、松島ナミは前作で残忍な刑務所署長の怒りを買ったことから独房で非人間的な扱いを受けている。暴力は当たり前。他の女囚たちの反逆のアイコンにならぬよう、女囚の目の前で看守たちに輪姦されることも。それでもナミは顔色を変えずに脱獄と復讐の機会をうかがい、強制労働の帰り道で、他の女囚6人と脱走に成功する。しかしその中のリーダー格、大場という女囚はナミを目の仇にしており、ともに逃げる中で彼女たちの間の緊張は増していく。

とにかく、この映画のナミは冷徹なまでの観察者だ。所長を、看守を、そして他の女囚たちをよく見ており、スキさえあれば反撃にも出る。そこで生きてくるのが梶の目力だ。時に上目遣いで強烈な怒りを表現。時に見開いた目で、看守への反感や女囚への同情や哀れみを伝えてくる。ちなみに、この映画における彼女はほぼ出ずっぱりだが、セリフはたったの2つしかない。どれほど多くのことを彼女の目が語っているか、このことだけでも想像できるだろう。

尋常ではないナミの反骨心は、シリーズ1作目が実質的な監督デビュー作となった伊藤俊也の胸の内でもあった。上の世代の監督たちが撮らなかったような映画を撮りたいという強い思い。それは、ナミの目を強調したアングルはもちろん、ときおり挿入されるシュールなイメージにもよく表われている。ヒロイン像もそうだが、作る側もまた、姿勢はパンクだったのだ。

国境を越えて生き続け、今も世界を射抜いている『女囚さそり』


そして、『女囚さそり』シリーズは昭和で終わった…… ワケではなかった。平成になり、Vシネマというジャンルでシリーズは復活。さすがに梶芽衣子は主演しなかったが、岡本夏生、斉藤陽子、小松千春が “さそり” の座を受け継いだ。

また、ハリウッドではクエンティン・タランティーノが梶芽衣子にオマージュを捧げた『キル・ビルVOL.1』を監督。ここでは『女囚さそり』シリーズの主題歌「怨み節」も、しっかりフィーチャーされていた。さらに2024年の米アカデミー賞受賞作『ANORA アノーラ』でショーン・ベイカー監督は、主演のマイキー・マディソンに、役作りのために梶版『さそり』シリーズを見せたという。その甲斐あって、マディソンは女性の凄みを遺憾なく体現し、同賞で見事に主演女優賞の栄冠を射止めた。『女囚さそり』のあの強烈なまなざしは時を超え、国境を越えて生き続け、今も世界を射抜いているのだ!

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