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コルドバ初のミシュラン店が行う、前代未聞の驚きの「体験」とは?

料理王国

コルドバ初のミシュラン店が行う、前代未聞の驚きの「体験」とは?

ガストロノミーを越えて「心を動かす食事」を目指す

「私たちの世代にとって、フェラン・アドリアの存在は大きい」

スペイン・コルドバの一ツ星「エル・チョコ el CHOCO」のキスコ・ガルシアさんは、まずこう言った。

ガルシアさんは現在38歳。「エル・ブジ以後」を生きるモダンスパニッシュのシェフたちは、フェラン・アドリア氏から何を学び、どこへ向かおうとしているのか。スペイン白豚生産加工者協会が主催する「第1回白豚をつかった冷製タパスコンクール」の審査のために来日したガルシアさんに聞いた。

誰でも革新することができる


それが「エル・ブジ」の功績

1992年、14歳のガルシアさんはコルドバの料理学校に通っていた。その教室にあった料理本『バルセロナの知られていないシェフたち』でアドリア氏の料理と出会った。「ごく普通のコップにタマゴを入れ、生ハムでフタをしただけの料理が衝撃的で、革命でした」

この年、アドリア氏の「エル・ブジ」は、スペイン国立ガストロミー賞を受賞。その5年後に、ミシュラン三ツ星を獲得し、2002年には「世界のベストレストラン50」の1位。「エル・ブジ」は、20世紀最初の料理革命といわれた。「フェラン・アドリアが起こした革命とは何か。彼は、一人ひとりのシェフにイノベーション(革新)できる可能性があることを示しました」

スペインは、さまざまなルーツを持つ人々が住み、多様な気候風土の国。当然、地方ごとに食材や料理が異なる。そういった多彩な条件下で、アドリア氏は、自らの方法をコピーさせるのではなく、そのやり方を使って、自分たちが持っている、例えば伝統的な郷土料理で、革新が起こせることを提示したのだ。

1976年創業の「エル・チョコ」は、ガルシアさんの祖父の代から続く老舗だった。幼い頃から料理に囲まれて育った少年が、料理人を目指したのは自然な流れだった。「やるからには自分にしかできないことを表現したい。そう模索していました。そんなときに、『フェラン・アドリア』と出会ったのです」

ガルシアさんは、ジローナの「エル セジェール デ カン ロカ」(現在三ツ星)などの一流店で修業した後、26歳、2004年に「エル・チョコ」に戻ってきた。それから8年で一ツ星を獲得。コルドバで初めてで唯一の星付き店になった。

モダンスパニッシュの世界には、伝統とつながらず、独自のフュージョンスタイルで、アドリア氏のDNAを受け継ぐ料理人もいる。しかしガルシアさんは、アンダルシア料理にこだわった。

「伝統的なアンダルシア料理を現代の調理法、上質な食材で作れば、それまでとは全く新しいものになる。そういう新鮮な驚きを体験する場。それがエル・チョコである。その考え方は、昔から変わっていません」

キスコ・ガルシアにとって「エル・ブジ」とは

自分たちが、自分たちの方法を使って料理に革新を起こすことができると教えてくれた。

4月に来日した際、キスコさんが日本の太巻きにインスパイアされて作った、白豚を使った太巻き風タパス。

手順を守ることで愛情を示す茶の湯の世界

「エル・チョコ」のコースは2種類。8皿の「季節のコース」と、13皿の「キスコ・ガルシアのコース」だ。「あまり多すぎると、一つひとつの料理の情報が残らない。だから、これくらいの皿数がいいと思う」

このコースの中で、ガルシアさんは、面白い「体験」を用意している。料理を、店のサービススタッフがスプーンで食べさせるのだ。「食べさせてもらう」という幼少期以来の体験が記憶を刺激し、その頃の匂いや音がよみがえってくる。そんな新しい感動を体験してほしいからだ。

日本でそんなことをやっている店は知らないし、多分ない、と話すと、「現象は違うけれど、根幹に流れているのは同じものが、日本にもある」と、ガルシアさんは、茶道のジェスチャーをした。「お茶をたてて、茶碗を渡す。作法にのっとってお茶をいただき愛情を表現するのと、『心を動かす体験』としては同じことじゃないかな」

カキのマリネ

モダンスパニッシュのトップシェフたちは、ガストロノミーを越えた、もっと違うものを提供しようと考えている。「おいしいのはもちろんですが、『心を動かす』、『感動を呼び出す食事』が、未来の料理のキーワードではないでしょうか」。「エル・ブジ」から「ノマ」へ。世界の潮流は動いた。そして2011年に、アドリア氏は自ら「エル・ブジ」の幕を降ろした。「『エル・ブジ』の時代は終わりました。私たちは今、フェラン・アドリアの成果を読み返しています」。

自分たちは何をやってきて、これからは何をするべきなのか。「今は同じ世代で互いを見合っている時期。次のトレンドを探っている。その後に、モダンスパニッシュの波は、もう一度やってきます。その時に必要となるのは創造と革命です」とガルシアさんはきっぱり言う。

フェラン・アドリア氏のDNAを宿す新しい世代の登場が、目の前まで来ている。

ウグイのイエローソースかけ

キスコ・ガルシアが考える「未来のレストラン」

ガストロノミーを越えた、もっと違うものを提供する。
心を動かす、感動を呼び出す食事の体験。

Kisco Garcia

1978年、スペイン・コルドバ生まれ。祖父が起こした「エル・チョコ」のシェフを、幼い頃から目指す。ジローナの「エル セジェールデ カン ロカ」などの修業を経て、2004年に「エル・チョコ」に戻る。12年に、コルドバで初めてのミシュラン一ツ星を獲得。

ガルシアさんは4月、「スペイン白豚生産加工者協会(INTERPORC)」が主催するタパスコンクールの審査のために来日。「スペインと全く違う文化をもつ日本は、とても刺激的。だしの取り方やすしなど、本物を学びたい」

エル・チョコ
el CHOCO
Compositor Serrano Lucena 14 Córdoba
14010-Córdoba
☎+34 957 26 48 63
●14:00~16:00、21:00~23:00
● 季節のコース€70
キスコ・ガルシアのコース€80
www.restaurantechoco.es

江六前一郎=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国263号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は263号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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