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TRI4TH “踊れるジャズバンド”が提示する、音楽業界を取り巻く不要不急の偏見に負けないポジティブな挑戦

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TRI4TH 撮影=森好弘

踊れるジャズバンド・TRI4THの周辺がにわかに騒がしくなってきた。7月26日、初の無観客配信ライブを成功させ、間髪入れずに8月19日、デジタル配信で新曲「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」リリース。さらに9月16日、デジタル配信で「For the Loser feat.KEMURI HORNS」をリリースしたあと、いよいよ10月7日、SMEレコーズからの3rdアルバム『Turn On The Light』が出る。コロナ禍中の困難な制作環境にも負けず、音楽業界を取り巻く不要不急の偏見にも負けず、それは小さいかもしれないが確実に未来を照らす一つの灯りになるはずだ。久々の対面取材、メンバー全員集合、ソーシャルディスタンスを守った“新しい取材様式”のもと、新曲「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」を中心にじっくりと語ってもらった。 “ライブは今は必要じゃない”みたいに言われていることに対して、“いや、こんなにたくさんの人が関わっていることが必要じゃないなわけがないだろう”とあの時、素直に思った。

――7月の無観客配信ライブ、僕もレポートを書かせてもらいましたけど、画面越しにも熱気とメッセージがちゃんと伝わってきました。やっている側はどうでした?

織田祐亮(Tp):たくさんのスタッフさんの力をお借りして、音環境もばっちりの状態でできたライブだったので。今だからこそできる最新の楽しみ方というか、やっている僕らもそういう感じで、生のライブとは別物ではあると思うんですけど、こういうものがきっとこれからスタンダードになっていって、これはこれでいいものとして残っていくんじゃないかなと思います。とても楽しかったです。

竹内大輔(Pf):TRI4TH初の配信ライブということで、すごく準備万端にしてきたつもりだったんですけど、ライブでのカメラリハーサルというものは今までなかったことで。その映像を見て、カメラが近づくと思ったより暗く映っちゃうとか、こんなに準備してもまだわからないことがたくさんあったんで、こういうことはやっていかないと発展のしようがないと思いましたね。反省や失敗も今後出てくると思うんですけど、普通のライブもそのように反省点があって今があるので、配信ライブならではの反省点を今後にフィードバックして、続けていかなきゃなと思いました。

――可能性は感じたと。

竹内:そうですね。今回は(ライブハウスの)フロアで演奏しましたけど、普通にステージの上に立ったらどうなるか?とか、お客さんを入れてやったらどうなるか?とか、いろいろやるべきことはあるなという感じです。

関谷友貴(Ba):バンドとお客さんとが同じ時間を共有して一緒に過ごしたんだなということを、本番中はそこまで感じなかったんですけど、次の日にチャットのログをスタッフさんに送ってもらって、それをばーっと見直したら、ちょっと泣きそうになっちゃって。すごいチャットの量で、ログだけ見てて“今この曲だな”ってわかるし、こんな状況だからこそ同じ時間を共有できて良かったなというのが一番大きいですね。あともう一つは、スタッフさんとすごく連携して作っていこうということを思っていて、特にPAのDub Master Xさんは、たとえばiPhoneで見る人、ヘッドホンで聴く人とか、そういうことを踏まえて音作りをしてくださって、アーカイブを見てあらためてかっこいいと思ったし、やれてよかったなというところです。

藤田淳之介(Sax):やる前は“どう伝わるんだろう?”という不安な部分もあって、“トークコーナーがあったほうがいいのか?”とか、変化球も考えたりしていたんですけど(笑)。最終的にはド直球でライブパフォーマンスを伝えるところにフォーカスして。セットリストもこれぞザ・TRI4THという代表曲を集めてパッケージしたんですけど、やってよかったなと思いましたね。お客さんのチャットも、SNSでのつぶやきも、「パワーをもらった」「楽しかった」という声がすごく多くて。そもそも何のために音楽をしているか?というと、自分が表現したいというのももちろんありますけど、人に笑顔になってほしいとか、生きる喜びをみつけてほしいとか、それを実現する形としてすごくいいものができたと思っているし、トライして良かったなと思います。

――藤田さんめちゃ楽しそうで。カメラに突っ込んでいったり。

藤田:そうですね(笑)。映像作品を作ってそれを放送するということもできるけど、それだとああはならないじゃないですか。演奏のボルテージで言うと、収録するというと正直ちょっと熱量を下げるんですよ。ミスしたものを残したくないので。でも今回は“これはライブだ”と思って演奏してるんで、美しく整ったものを超えた表現をしていこうと思ったので、あとで映像を見ても面白いところに行けたなと思っています。

伊藤隆郎(Dr):配信ライブというものと、今までやってきたライブとでは、そこへ向かっていく準備や熱量はまったく変わらないんですけど、体感の仕方が絶対的に違うので。同じ空間にみんないないし、体で感じる音圧もないし、代替えにはならないなと思っているところはあるんですよ。今はあくまでも代替えとしてやっているじゃないですか、いろんなアーティストが。

――そうですね。今の段階では。

伊藤:“それがライブ”ということになっている中で、一番大事だなと思ったのは、リアルタイムでやっていることに意味があるなと思えたんですね。その場所にいなくても同じ時間に全世界でそれを共有することができるのは、すごく意味があることだったなと思うのと、もう一つ良かったなと思うのは、僕たちの年齢になるとお子さんがいらっしゃる家庭だったり、連れていきたいんだけどなかなかライブに行けないという人が、リアルタイムでライブを楽しめるし、家で好きにしていても迷惑にはならないじゃないですか。そういう映像を友達がいっぱい送ってくれて、「うちの子供はこういうふうにおまえのライブを見てたよ」とか、それはすごく励みになりましたし、いろんな可能性があると思ったんですね。あと、病院にいる人とか、車椅子でライブハウスに来られないとか、自分たちの親の世代のようにライブハウスにはなかなか行けない人にとっては、すごくポジティブなコンテンツができたなと思うし、僕たちが行きたくても行けなかった地方の人にも音楽を届けることができると考えると、可能性はいっぱい広がっていくかなと思っていて。そこはすごくポジティブにとらえて、この事態が収束したあとも、僕たちの音楽を幅広く伝える手段として、うまくものにすることができたらいいなと思いましたね。

――それと、伊藤さん、MCで言ってましたよね。「俺らのやっていることが不要不急なわけねぇだろ」っていう、あのセリフにぐっときた人は多かったと思うんですよね。そういう時代背景というか、社会背景もあの日のライブのモチベーションの一つだったんじゃないですか。

伊藤:そうですね。あれは久しぶりに現場のライブハウスでやったわけですけど、たとえばここ(SMEレコーズの会議室)でやっても成立するわけじゃないですか。だけど僕たちはライブハウスでずっとやってきたし、ライブバンドだし、“まず最初にやるのはここだ”という気持ちがあって。「おはようございます」と言って会場に入っていくわけですけど、その空気感がすごく懐かしかったし、みんなが「おはよう」と言って、会話もあって、これが現実なのに“ライブは今は必要じゃない”みたいに言われていることに対して、“いや、こんなにたくさんの人が関わっていることが必要じゃないなわけがないだろう”とあの時、素直に思ったので。しかもミュージシャンのほうはいろいろ知恵を出してやりようがあるんですけど、僕たちが動かないからには裏方スタッフの人たちの仕事の場は生まれないし、僕たちがビビらずにどんどん、もちろんリスクは考えますけど、僕たちがこの人たちを現場に引き戻せるような活動を活発にやっていかなきゃいけないなって、あの時強く思いましたね。

――あのセリフはリアルでした。とっさに出た本音だったと思うので。

伊藤:そういうしゃべりにしても、“ちゃんとライブだな”というものができたと思いますね。用意した言葉を言うんじゃなく。そういう点では嘘がないし、収録だったらああいうふうにはならなかったと思います。

――何らかの形でまたやってほしいです。そしてあの配信ライブの中で新曲を1曲やって、ニューアルバム『Turn On The Light』のリリースを発表して。その先行配信になるのが「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」という曲ですけど、これはアルバムのタイトルチューン的な位置になりますか。

伊藤:そうですね。今のレーベルに移籍して3枚目(のアルバム)になるので、三部作の完成形じゃないですけど、何でもトライしてみたい気持ちは全員にありましたし、今までやっていないことはやりきろうという思いがあって。その中でフィーチャリングというのは、インディーズ時代にカバー曲でやったことはあるんですけど、オリジナルの楽曲としてボーカリストを招くことは今回初だったので、大事な1曲になるなという思いは制作前からありました。

――そこで白羽の矢が立ったのが、SANABAGUN.のラッパー岩間俊樹さん。その理由は?

伊藤:僕がSANABAGUN.を最初にチェックしだしたのは、『東京JAZZ』関連の企画で、僕らの仲間のfox capture planがブッキングしたイベントの中にSANABAGUN.がいて。あれ?っと思っていろいろ音源を聴いてみたら、根底にジャズの音楽性を持ったメンバーが集まっていて、それを遊びに変えながらヒップホップをやっているチームという印象を受けて、かっこいいなと思ったのと、あと単純に見た目が怖そうじゃないですか(笑)。一言で言うと不良っぽいというか。僕たちも不良性やルードな音楽に憧れてきたし、そういう思いをTRI4THの音楽に落とし込んでパッケージしている思いはあるので、“そういうところは共通点あるんじゃないの?”と。そこでSANABAGUN.と何かやってみようという話が出て、メンバーと会って打ち合わせみたいなものがあったんですけど、SANABAGUN.の2MCのうち主にラップを担当している岩間くんに来てもらおうということになりました。もう一人のMCの高岩遼くんは、ラップもやるけどどちらかというとジャズボーカルで、すごい歌がうまいし、二人が俺たちとやったらどうなるだろう?というアイディアもあったんですけど、結果的に今回は岩間くん一人で、ガツガツとしたリリックを書いてもらって、自分たちを代表してもらえるような1曲にしようというところに落ち着きました。

――すごく新鮮でしたね。TRI4THがヒップホップトラックに寄せた感じのこういうループ感覚の演奏は、今まで聴いたことなかったので。そのへんのコラボの面白さを全員に聞いてみたいですけど。まず藤田さんから。

藤田:最終的に、我々がヒップホップ寄りに飛び込んだ形になりましたけど、曲が完成するまではいっぱいいろんな曲調にチャレンジしていて、我々らしいロックな感じのトラックにラップを乗せたらどうなるんだろう?とか、もっとジャジィなスウィングしている感じはどうだろう?とか、いろいろ作ってはみたんですけど。SANABAGUN.で岩間さんがパフォーマンスされているのとはまた違うTRI4THらしさというところと、我々もまた一歩踏み出したところで作りたいという思いがあったので、ここに落ち着いて良かったなと思いますね。いわゆるヒップホップ的なトラックで、ホーンはそんなに前に出ないで、メロディを取るところに落とし込めたのが面白いチャレンジだったと思います。

関谷:ベースは2小節のループを弾いているだけなんですけど、誰もやっていないサウンドを作らないとTRI4THでやる意味がないし、音色には相当こだわりました。普段から、たとえばロックをやっている時も、ベースは基本的に歪ませているんですよ。なぜかというと、サステインを伸ばすためで、こういうリフもののヒップホップって、先入観かもしれないですけどエレキベースやシンセベースでやることが多くて。TRI4THはウッドベースのサウンドにこだわってやっているんですけど、はっきり言ってウッドベースだとサステインが伸びなくて、こういう曲調には適していないんですよ。だから今回はヒップホップのトラックでベースの立ち位置をどこに持っていこうか?ということを、レコーディング当日まで悩んで、最終的にはエンジニアの渡辺省二郎さんとやりとりして、「全部歪ませるんじゃなくて下の音域だけを歪ませたら音は伸びるよ」と省二郎さんに言っていただいて。そのサウンドは自分の引き出しにはなかったんですけど、やってみたら上のほうはウッドベースの生鳴り感があって、下のほうはサステインがちゃんと伸びてて、これは一体どうやっているんだ?と。

――エンジニアリングの魔術ですね。

関谷:ちなみに去年、120年前のウッドベースを買いまして、今回それを使って2小節に命をかけて弾いてます(笑)。ヒップホップってデータ切り貼りするeditで作られる曲も多いと思うんですが、TRI4THは絶対に切り貼りしないぞと思って、全員が最初から最後まで一発で録りました。岩間さんもそういうところを感じてくれたので、すごくやりがいがあったなと思います。

竹内:ピアノもベースと同じく、基本的にはリフをずっと弾いています。TRI4THは意外とリフものの楽曲はあるので、そこまで違和感なく落とし込めたと思うんですけど。ここまでずっと同じ動きをするのは今までなくて、リハーサルでいろいろ試してみたんですけど、むしろ変えたら面白くないなと。ジャズのインストバンドでやっていると、途中で変化がほしくなる気持ちがどうしてもあるんですけど、今回はある種の縛りの中での浮き沈みがうまくできたんじゃないかと思っていて。いい発見もできましたし、リスナーの方も表現の一つとして受け入れてくれるんじゃないかなと思います。

――伊藤さんのドラムも相当ストイックな音色ですよね。

伊藤:これもエンジニアの省二郎さんと相談しつつ、スネアは独特の音になっていると思います。僕のイメージ的にはクエストラブ(ザ・ルーツ)が叩くようなサウンドを作って、それをデイブ・グロール(ニルヴァーナ/フー・ファイターズ)が叩いているという感じで(笑)。

――なるほど! それ最高です。

伊藤:フレーズと音色はヒップホップだけど、僕はそっち(ロック)の人だから、という気持ちでやりましたね。オルタナ/グランジがヒップホップに乗り移ってきたビートみたいな感じで聴いてもらえると、ベースの歪みがエレキギターが鳴っているように聴こえるかもしれないし。すごいハードなトラックに意味のあるリリックが乗ってきて、俺たちの歴史を歌っているという、俺ららしいサウンドになってるし、そういう感じで聴いてもらえたら面白いかなと思います。

織田:SANABAGUN.にもトランペットとサックスがいるので、何もしないと区別がつきにくい人もけっこういると思うんですよ。そこを頑張って、パッと聴いて“これはSANABAGUN.じゃない、TRI4THだ”というものを、曲頭でバン!とわかるようにしたいなと思って、わざと間をずらしてみたりとか、いろいろと研究してやってみました。なので、SANABAGUN.のファンの方にも気に入ってもらえたら、また違う魅力が発見できると思います。

――SANABAGUN.ファンもぜひチェックしてほしいですね。そしてジャズ、ヒップホップ、ロックのハイブリッド感覚のかっこよさが、もっと多くの人に届けばいいなと思います。さらにこのあと、9月16日には次の配信曲のリリースが決まっていて、「For The Loser feat.KEMURI HORNS」という曲ですけど、これはどういう曲になっていますか。

伊藤:前作ぐらいから僕が歌ったりする曲が増えてきて、それをさらに進めて“自分たちがしっかりJ-POPを作るならどうなるか?”というものが最初にあって。どんどんアレンジをしていく中で、このフレーズならばKEMURI HORNSをフィーチャリングすることで、自分たちらしさもあるし、Aメロ→Bメロ→C(サビ)の構成を踏まえたJ-POPの歌ものみたいな良さもあるものを、より豪華に表現できるんじゃないかな?と思ったので。前作からの流れを引き継いで、さらに昇華させようと思ってできた曲ですね。

――楽しみです。そして10月7日にはいよいよニューアルバム『Turn On The Light』が出ます。その時にはまたじっくり話を聞きに来るつもりですけど、ここでちょっとだけ、アルバムについてのヒントをもらえれば。

藤田:新しい音にもチャレンジしたし、自分たちが大切にしてきたこともあらためて入れ込むことができたし、TRI4THの今を表したアルバムになったなと思います。レコーディング期間中に非常事態宣言が出されて、制作が一時中断したこともあって。その後もブースを分けて録ったりとか、けっこう苦労して作った作品なので、自分たちの記憶にも残る作品ですし、世の中においてみなさんの心に明かりを灯すようなアルバムになればいいなと思っています。

TRI4TH アーティスト写真

――最後になっちゃいますけど、新しいアーティスト写真、めっちゃ笑顔ですよね。今までとかなりテイストが変わっていて、今はこういう感じがいいのかな?と。

伊藤:まあ、そうですね。辛気臭い顔をしてもしょうがないんで。1作目、2作目はスーツで、1作目はパリッとしたスタイルで、2作目はルードボーイみたいな感じで来ましたけど。もういい年齢ですし、自然体でいられるような感じをイメージしてもらいたいですし、今までより肩の力は抜けているけど、音はパリッと締めよう!みたいな気持ちがあって、いいかなと思います。気に入っています。

取材・文=宮本英夫 撮影=森好弘

TRI4TH 撮影=森好弘

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