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フサフサアンテナが可愛いエビ<ロックシュリンプ>を飼育した話 そのデリケートさと長期飼育するコツ

サカナト

ロックシュリンプ(提供:松本ミゾレ)

「ロックシュリンプ」というエビを知っていますか。

数年前まではあちこちの熱帯魚店で見かけることができ、通販サイトでも生体がさかんに販売されていたのですが、最近は遭遇する機会も減っているエビです。

実際に飼育してみて認識したロックシュリンプの魅力と、そのデリケートさについて振り返ります。

身体が大きな淡水エビ<ロックシュリンプ>

ロックシュリンプという名前の通り、この淡水エビは身体が大きいことが特徴です。アフリカンロックシュリンプの場合は体長が10センチを超える個体も流通しています。

巨体の割に性質は穏やかで、少々臆病。特に目立つ第三胸脚は太くトゲだらけで、一見するとアメリカザリガニより強そうに見えるのですが、これにはハサミがありません。

第一、第二胸脚は密集した細かい毛の扇で覆われています。この脚は、彼らの食性に特化して進化したものと考えられています。

アフリカンロックシュリンプ(提供:PhotoAC)

筆者は10年ほど前に流通していたワイルド個体(野生で生まれ育ち自然界で採集された個体)を入手して飼育していましたが、当時は(現在もですが)ロックシュリンプの長期飼育が難しいとされていました。最大の原因はその食性です。

パラボラアンテナを広げるような仕草は面白い! けれど……

ロックシュリンプの胸脚は毛で覆われていますが、これはただの“飾り”ではありません。ここをガバッと展開し、パラボラアンテナのようにして、流れてくるプランクトンを付着させ、それを漉し取ることで食事をしているのです。

そのため自然下では、水流を感じると適切な位置に陣取り、パラボラ胸脚を開いては閉じて、ひっきりなしに食事に勤しみます。

ゴツい第三胸脚は、流れの早い場所でも流れに耐え、時間をかけて採餌するためのアンカーとして機能しているのでしょう。いかんせん、体が大きい割に口に入れる餌は少ないので、ずっと食事していないと生命を維持できないのです。

ところが飼育下ではたとえ水流を設けても、都合よく野外のように四六時中餌が流れてくるわけでもなく……。

飼育環境下ではプランクトンなどは発生しないため、結果的に彼らはパラボラを開いては閉じてを繰り返し、得る物も少なく、疲弊して早くに亡くなるケースが頻発するのです。

ペットショップではこの胸脚の習性を「ユニークな特徴」として紹介するなどしていましたが、その特徴は、実は飼い主としてはなるべくやらないでほしい、寿命をいたずらに消耗させる行動とも言えるのでした。

しかし、そうなるとどうやって彼らを長生きさせれば良いのでしょうか。

もしかすると最善な手段ではないかもしれませんが、筆者が採用していたのが、ベアタンク方式での飼育でした。

ベアタンク飼育で余計な消耗させずに採餌させてみる

ベアタンクとは、水槽の中に砂を敷かない、簡素というか殺風景な飼育方法です。

主に金魚や鯉など、水槽で飼育するとなるとすぐに水を汚してしまう魚のための飼い方で、飼育魚として有名なディスカスの飼育もほとんどベアタンクですね。

ベアタンク水槽のイメージ(提供:PhotoAC)

このベアタンク、掃除もメンテナンスも超簡単という特大メリットがありますが、ことロックシュリンプの飼育には絶大な効果をもたらしました。

まず砂も何も敷かない水槽に水を張り、水流をロックシュリンプに感知させないよう、上部フィルターから流れる水を手元の板などで遮断して散らします。濾過との兼ね合いもあり塩梅が難しいのですが、なるべく彼らが感知しないように弱くが理想です。

じっくり観察し、ロックシュリンプが水槽のどこにいても、パラボラ胸脚を開かなくなったら問題なし。これで余計な体力の消耗を防ぎ、早死リスクを遠ざけることに成功です。

水質の悪化が気になる場合は、ロックシュリンプ1~2匹に対し水槽を最低60センチで用立てましょう。45センチ以下でも少量ならいけますが、その際には水草を入れるなどして少しでも水質の向上を狙ってみてください。

ただ水草を伝って水流を感知できる場所に移動したエビが胸脚を展開していたら元も子もないので、位置取りは注意が必要ですね。

脱皮直後の採餌。工夫をすればパラボラ胸脚を下に向けて床に散らばるエサを食べる(提供:松本ミゾレ)

あとは、餌付けです。これは水底に沈下性の飼料(ザリガニの餌で大丈夫です)を落とします。

するとエサを感知したロックシュリンプが集まり、パラボラを水槽の底に当てて採餌するようになります。

なにせ先端がハサミではないので効率が悪いのですが、それでも何度も漉し取るうちに飼料も柔らかくなっていき、まとまった量を食べることができます。

大食漢なのでほとんど1日中エサを食べていることも多く、フンも大きいため採餌ができているかどうか確認するのも簡単です。

エビは外殻に覆われている関係上、痩せているかどうかの判断が困難ですが、この方法なら比較的現実的なラインで長期飼育することができます。そのかわり、とにかく多くの餌を必要とするため、スポイトで食べ残して水カビが発生した残飯やフンを取り除く作業が日課となります。

まとまった時間を確保できる方に向いたエビと言えるでしょう。

大柄なのに大人しいので、小さなエビとの混泳も楽しめる

ちなみに我が家では、どうしても食べ残しが多くなってしまい、残飯処理が間に合わずにヌマエビ等と混泳させていました。

ロックシュリンプは穏やかな性格ですので、ヌマエビとの共生も難しくありません。これもザリガニとは違った特徴ですね。

以前使っていた水槽では、アフリカンロックシュリンプと一緒にふた回りほど小さいアジアロックシュリンプも飼育していました。

こちらも飼い方は同じですね。パラボラを底面に向けて採餌し、アフリカンよりも若干器用に餌を食べていた印象です。

魚との混泳はやめたほうがいいかも……(提供:松本ミゾレ)

一時期メダカなどとも混泳していましたが、少々採餌が滞るようになったため、魚はすぐに隔離しました。

小さなエビは気にしなくても、魚は気になるのかもしれません。これには個体差もあるのかも……?

とにかく水流を感じない構成で疲れさせないことがコツ

こんな感じで、人によっては味気ない飼い方にも思われるかもしれませんが、ベアタンク方式であれば、割と誰でも長期飼育ができるのではないかと思います。

飼育経験は人によってさまざまで、ある飼い主さんは普通に砂利を敷いておいたら巣穴を掘り、そこにロックシュリンプが滞在して数年問題なく生きているというケースもあるようです。

ただ、どちらにしても大抵の水槽内ではプランクトンも微小な餌もろくに発生はしないので、とにかく例のパラボラ運動はさせない方が良いでしょう。

底面に常に餌があれば体力を消耗せずに採餌してくれる(提供:松本ミゾレ)

ちなみに我が家で飼育していたロックシュリンプは飼育開始から4年は生存していたのですが、2011年の東日本大震災の折に自宅が被災・停電してしまい、寒い時期で加温が間に合わず死なせてしまいました。

アクシデントで死なせてしまうのは痛恨の極みでしたが、迫力のある体つきに反して繊細な性格。他のエビとの協調性など、ロックシュリンプには魅力が満点。

みなさんも、飼育するにあたってどんな水槽レイアウトにしたいか、色々と構想を練ってみてください。そして飼育できそうだったらお迎えしてみてください。

なお、飼育を始めたロックシュリンプは、例え飼えなくなっても絶対に外に逃がしてはいけません。飼育計画を丁寧に立てることが大切です。

ただし、彼らの繁殖には「汽水」が必須。自家繁殖は同じ特徴を持つヤマトヌマエビのように難しいので、その点に注意が必要です。

(サカナトライター:松本ミゾレ)

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