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地元に愛されながら進化し続ける 名古屋の地酒・金虎酒造

Life

江戸時代から続く金虎酒造の酒造り

江戸時代後期に創業した金虎酒造。蔵がある山田町は、江戸時代には田園地帯が広がり米作りが盛んでした。また、現在の国道19号線は「善光寺街道」と言われ、長野県の善光寺まで続く街道でもあったことから、尾張藩はたくさん穫れる米を安定的に活用できる日本酒づくりを奨励していました。

こうした背景があり、金虎酒造は1845年に創業し、現在まで177年の歴史を受け継いでいます。「金虎」の名前は、名古屋城名物の「金鯱」と、三代目善兵衛氏が寅年であったことから付けられたとのことです。

越後流の技術をベースに、地元の風土に合わせて進化


スッキリとした飲みやすさが特徴

金虎酒造が造る日本酒は、全体的にスッキリとしていて、日本酒に慣れていない方でも飲みやすい味わいが特徴です。口当たりがスッキリと滑らかでキリッとした味わいの「淡麗辛口」が特徴となる越後流のお酒を源流としながらも、名古屋の風土や食文化に合わせて独自の進化を遂げてきました。

また、金虎の日本酒らしさを残しながらも、ワインのように楽しめるお酒や梅酒とにごり酒をかけ合わせた和酒カクテルなど、新しいタイプのお酒造りにも、積極的に取り組んでいます。

金虎の酒造りが行われる場所を特別に公開!

かつて酒造りが行われていた建物。現在は商品の販売・出荷スペースや倉庫、イベントスペースとして活用されている。

金虎で酒造りが行われるのは、10月〜4月のおよそ半年間。取材時はちょうど酒造りが終わった後だったため、普段はお酒造りに携わる限られた人しか入れない場所を、今回は特別に案内していただきました!
金虎酒造の中核ともいえる貴重な場所を、酒造りの工程と併せてご紹介します。

酒造りを行う建物は2階建てになっていて、2階は精米や蒸米、麹造りをする仕込み場として、1階は発酵や火入れをする場として活用されています。

まずは日本酒の仕込み工程を行う2階から見ていきましょう。

手前の大きな機械は、蒸した米を冷ますためのベルトコンベア

酒造りはまず精米からはじまります。日本酒に使う米は、普段私たちが食べる食用の米とは異なり、「酒造好適米(酒米)」と呼ばれる米が使われます。食用米は表面を削るだけなので精米歩合は90%ほどですが、酒米は種類によっては50%以下になることも。

精米歩合とは、精米(玄米から表層部を削った米)して残った米の割合を表す数字で、割合が低くなるほど米が小さくなり、お酒の雑味がなく華やかな香りに仕上がります。ただし、精米歩合が高い(割合が低い)=良いお酒とは限らず、お酒の個性に合わせて調整されています。

金虎酒造で使われる酒米の種類は全部で5種類。このうち約8割は愛知県独自の酒米「若水」「夢山水」「夢吟香」が使われているとのこと。

米を蒸すための大きな窯。最大400キロほどの米が蒸せるそう。

精米された米を洗った後は、適量の水分を吸収させるために米を水に浸し、蒸し上げます。米が小さいほど水が浸かりやすくなることや、その年の米の硬さや状態に合わせて、水に浸す時間は秒単位で調整。この工程は、酒造りの要となる「麹造り」にも大きく関わるため、慎重さが必要です。

その後、蒸し上げた米はベルトコンベアで動かしながら風を当て、適切な温度で冷ましたら、酒造りの心臓部と言われる麹室(こうじむろ)へ運ばれます。

ごく一部の限られた人しか入れない麹室

麹室では冷ましたお米に麹菌(別名コウジカビ)の胞子をふりかけ、二晩かけて菌の生育を行い、少しずつ米を「米麹」へ変えていきます。米麹のできばえがお酒の品質を左右するため、酒造りの中でも肝となる重要な工程です。

麹室は、菌の育成を促すために30度台後半とかなり暑く、お米の状態を見ながらこまめに、念入りに作業を行わなければなりません。この間、杜氏(お酒を造る職人)は宿直室に泊まり込み、夜中に起きて作業をすることも。良い麹を造るには米の温度と乾燥のバランスが重要なため、杜氏は香りや温度を敏感に汲み取りをとりながら、五感をフルに使った繊細な作業が求められます。お酒の元となる米麹は、体力も神経も使い丹精込めて造られているのですね。

1階には仕込みタンクが並ぶ

2階の麹室で造られた米麹は1階へと運ばれ、1階のタンクには米・米麹・水・酵母菌が入れられます。このとき、1度に入れずに3回に分けて仕込む「三段仕込み」を行いますが、これは発酵を安全に進めるためです。そして、これらの4つが入ったものが「醪(もろみ)」です。タンクの中の醪は、短くて2〜3週間、長ければ1カ月以上の時間をかけて、タンクで発酵していきます。

この間、醪は麹の酵素によりデンプンがブドウ糖に変化する「糖化」と、ブドウ糖が酵母の働きによってアルコールに変化する「発酵」が同時に行われますが、この2つがバランス良く進まないと、いいお酒にはなりません。そのために重要となるのが温度調整です。

愛知県の冬は日本酒を造るには気温が高く、発酵中に醪自体が熱を発するため、タンクを冷やす必要があります。タンクは水が循環できるようになっていて、冷水を通してタンク一つひとつを冷やし、適切な温度を保つのだそう。

火入れを行う機械

発酵した日本酒は、別の建物にある圧搾機で搾り、お酒と酒粕に分けられます。

搾られてできたお酒は、まだ完成ではありません。生酒と呼ばれるお酒以外は「火入れ」を行います。火入れは、お酒の発酵を止めて日本酒の味わいを一定に保ったり、殺菌したりするために必要な工程です。

火入れされたお酒は半年から1年貯蔵し、お酒に味をのせて出荷されますが、常温で貯蔵するお酒もあれば10度ほどで冷蔵貯蔵しているお酒もあり、お酒の質や種類に応じて適切な温度で保存しているそうです。

金虎酒造の日本酒は、数々の工程を経て丁寧に造られていることがわかりますね。

金虎酒造おすすめの日本酒を厳選!

金虎酒造では、定番の銘柄だけでなくさまざまなタイプのお酒を造っています。今回は、日本酒に慣れていない方や飲みやすい日本酒を探している方におすすめの銘柄をご紹介します。

虎変(こへん)

内容量/1.8L、720ml(大吟醸 虎変は720mlのみ)

2012年、名古屋の誇れる銘酒を新たに造りたいという地元愛プロジェクトから製造がスタートしたお酒です。虎の毛が美しく生え変わるように、変革を続けるという思いが込められています。

定番商品は大吟醸、純米吟醸、特別純米の3タイプがありますが、どれも透明感がありスッキリとしたキレの良さがありながら、旨みも感じられるバランスの良い味わいです。

KOTORA citric(コトラシトリック)

内容量/1.8L、720ml

アルコール度数が13度と日本酒の中では低めなため、お酒に強くない方にもおすすめのお酒です。

通常の日本酒の3倍ほどにもなる強い酸味が特徴ですが、焼酎に使われる白麹由来の酸味で柑橘系を思わせる爽やかさがあり、夏にピッタリ。白ワインのような味わいで、フライやカルパッチョ、スパイス料理、チーズケーキなど、普段は日本酒に合わせないおつまみとも相性が良いとのこと。

炭酸で割ってスパークリングのように飲んでもおいしく、遊び心のあるお酒です。

Pinky Tiggy(ピンキー・ティギー)

内容量/720ml

偶然から生まれたという、梅酒×にごり酒(日本酒)の和酒カクテル。かわいらしいピンク色は、梅酒に使われるハイビスカスローゼルと白色のにごり酒による自然な色合いです。

梅酒の甘みと酸味が主体ですが、梅酒の酸味をにごり酒が和らげて後味もさっぱりとしています。炭酸ガスが含まれているため爽やかで、梅酒単体よりも飲みやすいとか。ただし、アルコール度数は14度あるため、早いペースで飲まないよう注意が必要です。

KCT(金虎チャレンジタンク)にも注目

金虎酒造では、2017年からKCT(金虎チャレンジタンク)という取り組みを行っています。毎年チャレンジテーマを設定して従来の金虎酒造のラインナップとは異なるコンセプト、または製造手法の商品を限定で製造するシリーズです。

これまでに新しい技術を使ったお酒を造ったり、名古屋市緑区の山盛酒造と「麹」を交換したお酒を造ったり、ナカモ株式会社とコラボして「つけてみそかけてみそ」にマッチするお酒を造ったりと、さまざまな挑戦をしています。KOTORA citricもこの取り組みから生まれたお酒です。

今後はどんな新しいお酒が生み出されるのか、楽しみですね。

名古屋・愛知の方に愛され、


進化する地酒でありたい

最後に、水野さんの今後の方針や日本酒の魅力について伺いました。

-金虎酒造が目指すものは何ですか?

水野さん:「私は、名古屋の風土で磨き上げられてきたお酒を、地元の人々に自慢に思ってもらえるような酒蔵・お酒でありたいと思っています。金虎酒造は170年以上、この地域に住む人々のためにお酒を造り続けています。越後流がベースにあるものの、名古屋の風土や食べ物、名古屋に住む人々の好みに合わせて少しずつアップデートしてきました。どの酒蔵も同じように、地域の人に合わせて進化した結果、それぞれ個性豊かな日本酒が生まれていると思います。日本酒は"地酒"と呼ばれるほど"地域"との関わりが重要で深いものです。新潟や伏見・灘と聞くと日本酒をイメージできるように、名古屋・愛知の地域ブランドももっと向上させたいですね。

しかし、そのためには金虎酒造を含む、名古屋・愛知の酒蔵と協力していかなければなりません。2014年から、名古屋市にある酒蔵4軒でナゴヤクラウドというユニットを組んで、イベントに出たり百貨店で試飲販売をしたりという活動を行っています。少しづつ名古屋のお酒に目を向けてもらえる機会は増えているものの、もっと広く知ってもらうために取り組みを続けていかなければと思います。」

新酒ができたことを知らせる杉玉。毎年手作りしているそうです。

-今後新たに挑戦したいことはありますか?

水野さん:「ナゴヤクラウドをはじめ、虎変ブランドの立ち上げやKCT(金虎チャレンジタンク)、2022年(寅年)限定の金虎など、ここ7〜8年はできることをとにかくやってきました。ちょうど今年が寅年ということもあり、次の12年に進むために一度腰を据えて振り返りをしてみようと思っています。いろいろな方に意見を聞いたり、見直すべきものは見直したりしながら、生まれ変わらせていきたいですね。」

-水野さんにとって、日本酒の魅力とは?

水野さん:「一言で語るのは難しいですが……。一番に思いついたのは"多様性"ですね。日本には造り手として1500以上の蔵があって、飲み手も20歳以上の人であれば誰もが飲めます。無数の造り手と飲み手がいて、それぞれの地域があり、蔵ごとにいくつもの銘柄がある。日本酒は無限の広がりを持っていますが、それがまったくの無秩序かというと、そうではありません。大枠となるルールや流れがあり、その中で正統派のものから変化球のようなものまで幅広いお酒が造られています。さらに、日本酒で表現できる味わいの幅やお酒を飲むシーン(自宅、居酒屋、お祭り、イベントなど)も多種多様な楽しみ方がありますよね。そうした広がりの中で、無限の可能性を感じられることが魅力だと思います。

その一方で、多種多様すぎて最初の一歩を踏み出しづらいと感じる人がいるのも事実です。日本酒に興味を持って売り場に行ったものの、何を選べばいいかわからず途方に暮れる方もいると思います。そういう方のために、私たちが情報発信をしたり、初めての方に参加してもらいやすいようなイベントで交流したりと、酒蔵にできる工夫も必要だと感じています。

金虎のお酒は飲みやすさに重点を置いて造っているので、日本酒が初めての人でもクセがなく飲みやすいと思います。」

-貴重なお話をありがとうございました!

地元の人に喜んでもらうために進化を続ける金虎酒造


名古屋の地酒を味わおう

名古屋市を含め、愛知県には40近くの酒蔵があります。尾張や知多の地域では昔から酒造りが盛んに行われており、今なお地酒としてその土地で愛されています。

そして、名古屋市北区山田の地で170年以上お酒を造り続けている金虎酒造。正統派の日本酒銘柄に加え、新しい日本酒にも挑戦し続け、日本酒に慣れていない方でも飲みやすいお酒も取り揃えています。

日本酒や名古屋の地酒に興味がある方は、金虎酒造のお酒を味わってみてはいかがでしょうか。

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